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神鋼品質データ偽装事件の責任は神鋼だけが負うべきなのか?

本日(10月17日)の日経朝刊一面に、神戸製鋼所さんの品質データ偽装が数十年も前から社内で続いていたことが報じられていました。また、一昨日のエントリーの図表でも「私の関心事」としてお示ししましたが、数十年も続いていたとすると、データ偽装に手を染めていた人、知っていて放置していた人が経営幹部になっている可能性が高いことも報じられています。ではなぜ、今回はこのような不祥事を自主的に公表する気になったのでしょうか。まだまだ今回の件については外からはうかがい知れない真実がありそうです。

ところで、神鋼さんは米国司法当局が(同社米国子会社が保有する)関係書類の提出を要求してきたことを明らかにしました。DOJからの書類提出要請や関係者の呼び出しは、他社事例でもときどき行われているので(DOJの捜査を公開しない企業が多いだけなので)現時点ではそれほど大きな問題ではないと思います。ただ「あ、うん」の呼吸が通じないDOJが動くことは、日本企業にとっての「不都合な真実」が明るみに出る可能性があるため、神鋼さんだけの問題で済ませることができるのかどうか、といったことも、新たな関心の対象になってきました。

この「不都合な真実」との関係で、一番気になりましたのが「トクサイ」なる言葉が社内で使われていたと各紙が報じている点です。トクサイとは「特別採用」の社内隠語ですが、これは今回初めて報じられたものではなく、昨年の神鋼さんのグループ会社で発生したJIS規格偽装事件でも取り上げられた言葉です。昨年7月11日の日経ビジネスの記事に基づくものですが、規格を外れてはいるものの、安全性に問題がない商品は、安い価格でブランド品が手に入るということで取引先にも納品されていました。つまり、この「トクサイ」という言葉は、品質には問題がないけれども、取引先から要求されていた規格を外れてしまった商品について、相手方も規格外であることを知って販売される場合の慣習から生まれたもの、とされています。ただ、いつしか品質が基準に達していない場合でも、神鋼グループ会社では「強度に関するトクサイ」といった言葉で納品対象になっていったそうです。

一方、本日(10月17日)の毎日新聞ニュースでは、約40年も前から「トクサイ」という用語は社内で一般的に使われており、神鋼さんは取引先の了解を得られないままにトクサイ品を出荷していたと報じられています。ただ、このように「トクサイ」商品の出荷が悪質なものであったとすると、40年もの間、社内不正が発覚しなかったとみるのはかなり不自然です。むしろトクサイ品は取引先も知っていながら販売するもの、ただ品質に関するトクサイというものが時代の流れの中で現場に浸透していった、とみるのが自然ではないでしょうか。

ところで、今回の件で疑問が湧くのは「取引先も品質データが偽装されていることを知っていながら取引をしていたのではないか」ということです。もちろんすべての取引先というわけではありませんが、神鋼さんに納期を守ってもらうことは、取引先担当者にとっても強い関心事であり、「知らなかったこと」にしておいて、取引を円滑に済ませていたところもあるのでは、という疑問が湧きます。だからこそ神鋼社内で「強度のトクサイ」といった隠語が使われるようになったのではないかと。もしそのような事実があるとすれば、取引先企業が今度は不祥事企業の仲間入りとなります。「トクサイ」という言葉が使われていたとなると、どうしても昨年の不祥事のケースと同様ではないのか、取引先(少なくとも取引先の担当者)にも「許されるトクサイ」と「許されないトクサイ」に関する認識はあったのではないか、と考えてしまいます。

上記はあくまでも私自身の邪推にすぎません(この点、モノづくりの観点から真因に迫ろうとされる楠木さんのコメントがとても有益ではないかと思います)。しかし、考えられることだとすれば、そのような可能性についても調査委員会は調査の必要性があります。しかし、もしそのような事実が判明したとしても、神鋼さんとしては「他社には絶対に迷惑はかけられない」という意識が働きますので、調査結果の開示には強く抵抗すると思います(そこで調査委員の胆力が試されるのではないでしょうか)。過去にも不祥事は一社の不正では完結しない、という事例は嫌というほど見てきました。そういった意味では、取引先は本当に被害者なのか、不正に加担していた事実はないか、世間的には批判されるような疑問かもしれませんが、(DOJが動き出した以上)私はそこまでスコープを広げて調査を実施すべきと考えます。

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