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マイナス金利で得をしているのは誰なのか

 日銀が2016年2月に導入した「マイナス金利付き量的・質的緩和政策」はすこぶる評判が悪かった。特に多額の資金運用を行っている投資家にとって、本来であれば安全資産であるはずの国債を保有することで運用成績がマイナスとなる事態は運用そのものに支障を来すことになる。

 日銀のマイナス金利政策の狙いのひとつとして、ポートフォリオ・リバランスというものがある。日銀が安全資産とされる国債を大量に買い占め、国債の利回りを徹底的に引き下げることにより、資金運用を行っている投資家に対し、貸し出しや国債以外の金融資産に資金を振り向けさせようとするものである。

 しかし、年金にしろ、預貯金にしろ資金を払い込んだ人たちには、大きなリスクを負っての運用は本来望んではいないはずである。少なくとも元金が目減りするようなことは考えていないのではなかろうか。だからこそ、これまでは年金や銀行などは国債を主体とした運用をしてきた。その国債も保有することで運用益がマイナスとなる事態となってしまった。

 日銀は金融業界からのマイナス金利政策に対する批判を受けてそれを修正したのが、2016年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和である。これは何と言うことはない、長期金利、つまり10年債利回りのマイナス化を避けて、期間の長い国債の利回りはプラスにさせる政策ともいえる。それでも長期金利は0.1%以下に押さえ込まれている。

 その結果、我々が受け取る利息もほとんどない事態が続いている。日銀の異次元緩和で物価が上がらなかったことで、その事態がさらに延長され続けている。それでも足元物価をみると消費者物価指数(除く生鮮食料品)で前年比プラス0.7%程度までは回復している。しかし、長期金利は日銀のイールドカーブコントロールによって引き続き0.1%を下回っているが、それがなければもう少し上昇してもおかしくはない。

 日銀の金融政策によって金利そのものは大きく押さえ込まれ、中期ゾーンの金利あたりまではいまだマイナスとなっている。景気は回復基調が続いていることは確かで、我々は本来もらえるはずの金利を、物価を上昇させるためとして、それが享受できない状況が続いていることになる。

 それではマイナス金利政策で得をしている人がいるのか。マイナス金利政策に恩恵を受けているのは、国債を低い利回りで発行でき、国債費が抑えられる政府となる。それは裏返すと財政規律を緩めかねないものともなっている。

 それとともに海外投資家もマイナス金利でも利益が出せる。日本の金融機関による海外の国債などへの投資の際に、円をドルに転換する必要があり、その際に付くドルのプレミアム分を相手方の海外の金融機関などは得ることができる。つまり海外投資家は多少のマイナス金利でもプレミアム分があるため、それで鞘を抜くことができる。

 10月16日の日経新聞の「マイナス金利、海外中銀にプラス」との記事では、その鞘を取る投資家にアジアや欧州の中央銀行も含まれていることを示していた。日銀は海外の中央銀行から預かる資金に今年6月からマイナス金利を適用しているが、それは日銀に預けてある資金の一部だけの適用となっている。このため、海外中銀による日銀の預金残高は10月10日時点で過去最高額となっているようである。

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