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世界シェア1%の自動車メーカー「スバル」の誇りと強み

日本自動車工業会主催の自動車メーカーの経営者による大学での〝出張講演″は、恒例の行事になっています。

10月12日、スバルは東京工業大学で大学キャンパス出張授業を開催しました。会場には、代表取締役社長の吉永泰之さんと専務執行役員の日月(たちもり)丈志さんが登壇しました。


※株式会社SUBARU代表取締役社長の吉永泰之さん

吉永さんは冒頭、檀上で次のように語りました。

「我々の会社はこの6~7年非常に成長していますが、その過程で我々の個性というのは何なんだろう?我々は何者か?ということをずいぶん議論しました」

以下は、吉永さんの講演内容の要約です――。

確かに、スバルは近年高収益体質の企業に成長し、2016年度は売上高3.3兆円、営業利益率12%以上を稼ぎ出すようになりました。しかし、スバルは元来「良いもの(部品)を使いたい」という技術者の気質が強い、「高コスト体質」の会社なんです。技術を究めながらも、個性を発揮できる会社にならなくてはいけない。いつまでも好調が続くはずはない。

また、スバルは自動車メーカーとしては、グローバル販売台数は100万台強。世界シェアで見れば1%程度と、必ずしも大きくありません。トヨタのようにスケールメリットを活かして良品廉価で戦うことはできません。

スバルは、小さな会社なりにグローバル競争で生き残っていくため、議論を重ねました。

議論をした結果たどり着いた答えは、いたってシンプルなものでした。もともと「スバルは飛行機会社である」――。

ご存じの通り、今年4月に「株式会社SUBARU」へ社名変更を行ったスバルの前身は「富士重工業」であり、原点は戦時中に活躍した零戦の一部を開発・生産し、一式戦「隼」を開発・生産した世界有数の航空機メーカー「中島飛行機」にあるんですね。

この個性を元に、スバルは3つの段階で選択と集中を図りました。1段階目は、「2つの事業」に注力事業を絞り込む、「事業の集中」です。

注力事業の1つが、航空宇宙事業です。航空機事業はスバルにとっての原点であると同時に、企業のアイデンティティーでもあります。当然、落ちる飛行機は絶対に作れません。「安心・安全」に対する技術者の意識も非常に高い。場合によっては、航空機開発に自動車以上の高度な技術が求められますね。

MRJに代表されるように、航空機産業は、国益を担う日本にとってたいへん重要な産業です。それも、単なる部品生産にとどまらず、航空機丸々一機を生産できる技術を持たなくてはならない。

スバルは、日本の航空機産業を成長させるため、自衛隊の多用途ヘリコプター「UH-X」を受注し、開発・生産(米国ベル・ヘリコプター社と共同開発)する計画に取り組んでいます。

もう1つの注力事業は、自動車事業です。もともとスバルは、風力発電や鉄道車両事業など、さまざまな事業を展開してきました。こうした事業から撤退し、今年9月末に産業機器事業を終了し、大きく分けて航空宇宙事業と自動車事業に絞りました。

2段階目の選択と集中が、「クルマの中での集中」です。スバルの自動車といえば、「スバル360」にはじまる軽自動車です。軽自動車が自動車事業のルーツであるといっても過言ではありません。

ところが、スバルは、軽自動車の生産をダイハツからのOEM供給に頼ることにして、「XV」、「BRZ」、「レヴォーグ」などの車種に、限られた経営資源を集中してきました。ボリュームゾーンでは戦わない、規模を追わない戦略です。

さらに、スバルは3段階目の選択と集中を行っています。それが「技術の集中」です。航空機技術で培ったスバルの安全に対する考え方は変わりません。〝とにかく安全なクルマ(製品)をつくりたい″ということです。じつは、爆発的なヒットを重ねる安全運転支援システム「アイサイト」の研究開発は、今から27年前から始めているのですね。

このようなスバルの思い切った戦略は、「自動車業界の常識」を疑うという、逆転の発想から生まれました。

「自動車業界の常識」とは、「自動車産業はグローバルでは成長産業」、「自動車産業が伸びるのは新興国」、「売れる車種はコンパクトカー」であるというものです。こうした当たり前のことに、「業界の常識は我々の常識か?」と疑問符を打つことによって答えを見出したのです。

つまり、いたずらに規模を追わず、新興国をターゲットにして利益率の低いコンパクトカーで勝負をしないということです。スバルの技術者がDNAとして持つ「安心・安全」を強みにし、利益率の高い付加価値のある自動車でグローバル競争を生き残っていく。

スバルが賭けに出た選択と集中ですが、これが将来吉と出るか凶と出るかはわかりません。情報化やEV化と自動運転化が進み、自動車メーカー以外からの自動車産業への参入は進んでいきます。

ただし、こうした技術が発達してもスバルの強みは残ると思います。自動運転車でぶつからない技術を開発できたとしても、長年の安全に対する技術の蓄積がなければ、「ぶつけられても死なないクルマ」はつくれませんね。

さて、皆さんは、吉永さんの話をどのように評価されるのでしょうか。スバルのこだわりは、熾烈な次世代自動車競争で勝ち残っていくカギになるのかどうか。スバルが、他社にさきがけ、「アイサイト」を開発した理由、背景がわかるような気がしますよね。

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