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女児誘拐男が語る「また必ずやる」の恐怖

小児性愛の犯罪者が「私はまた必ずやる」と顔出しで告白している――。『週刊新潮』(9月28日号)にそんな衝撃の記事が掲載された。元「週刊現代」編集長の元木昌彦氏は「週刊誌ならではのスクープだ」と評価する。「解散騒ぎ」にのみ込まれ、大きな話題にならなかったスクープの中身とは――。


『週刊新潮』(2017年9月28日号)。見出しは<「10歳女児誘拐事件」から13年 幼女愛好男が「私はまた必ずやる」>

■「強姦」が「いたずら」にとって代わる

日本では子どもへの「強姦」や「強制わいせつ」という重大犯罪が「いたずら」にとって代わる。

ノンフィクション・ライター吉田タカコは、『子どもと性被害』(集英社新書)の中で、怒りを込めてこう書いている。

1998年4月、岩手県で小学2年生女児殺害、死体遺棄事件が起きた。犯人は同じ町に住む40代の運転手。強姦致死、殺人、死体遺棄の罪に問われた被告に対して、地裁の裁判長は無期懲役をいい渡し、判決文で「自宅で女児が死亡することを認識しながら、それでもかまわないとの意思の下に首を絞めて失神させていたずらし、ビニールひもで首を締め上げて殺害」と、この非道な行為を「いたずら」と表現した。

また、親、親戚、兄弟姉妹、近隣者などによる、子どもへの「性的虐待」問題が取りざたされるようになったのは、それほど昔ではないと吉田はいう。

98年に行われたある全国調査では、女性の100人中29人、男性の100人中4人が、18歳までに何らかの身体的な性的虐待に遭っていたという驚くべき結果が報告されたという。

男女を問わず、こうした被害に遭ったことを誰かに相談することもできず、自分で抱え込むうち、精神に異常をきたすケースも少なくない。

今年4月に千葉県松戸市で起きたベトナム国籍の小学3年生、レェ・ティ・ニャット・リン(当時9歳)が、誘拐、殺害される事件が起きた。容疑者として近くに住む渋谷恭正(46)が逮捕されたが、彼は地域の見守り隊に所属し、小学校の保護者会の会長を務めていた。羊の群れにオオカミを放つようなものである。

■「私はまた必ずやる」と実名で告白

こうした痛ましい事件は異常な小児性愛者が起こすまれな犯罪なのだろうか。

『週刊新潮』(9月28日号、以下『新潮』)によると、「警視庁の最新の調査によると、12歳以下が被害者の暴力的性犯罪認知件数は16年の1年間で989。一日3件弱の計算となる」という。闇に葬られる件数はこの数倍、否、数十倍にもなるはずだ。あなたの子どもや孫の身にいつ起きても不思議ではない、今そこにある危機である。

『新潮』では、04年に近所に住んでいた10歳の女児を誘拐し、4月7日から15日まで連れまわして「未成年者誘拐および恐喝」の罪に問われた植木義和(60)のインタビューを掲載している。

私も長いこと週刊誌の仕事をしてきたが、この植木のように自分の性癖を赤裸々に語り、その欲望を抑えられず「私はまた必ずやる」と実名、しかも顔を出して告白したケースはまれであろう。

この週刊誌ならではのスクープは、安倍首相が仕掛けたモリ・カケ問題隠しのための解散騒ぎに飲み込まれ、大きな話題にはならなかった。コトの経緯を見ていこう。

この事件では、保護された女児のほうから「家に帰りたくない」「沖縄に行こう」と容疑者を誘ったことが明るみに出て、メディアで大きく報じられた。

■女児を不幸な環境から救い出した?

ノンフィクション・ライターの河合香織はこの不可解な事件に注目し、拘置所にいる植木と面会や手紙でのやりとりを重ね『誘拐逃避行』(新潮社)を上梓した。その中で、家庭内にさまざまな問題を抱えていた女児と、独り身のさえない中年男が、互いの孤独を補い合うようにしていた様子をこう描いている。

「(植木の)ひげを、めぐ(作品中での女児の仮名)は慣れない手つきでそり始めた」

37歳差の恋人とでもいえるような甘美な情景や、女児が運転手に「こっから一番近い泳げる海へ」と話しかけるシーンもある。

逮捕後、女児を不幸な環境から救い出したと訴えていた植木だが、法廷では容赦なく植木の本性が暴き出された。本の中で河合は、検察側と植木との間でこのような攻防が繰り広げられたと書いている。

「『確認しますが、あなたが今回沖縄につれていっためぐちゃんと呼ばれる女の子に対して、その女の子の陰部をなめたりなどしたことはあるんですか、ないんですか』(中略)「はい」か「いいえ」で答えてください』

『……はい』」

植木の部屋から『クミコ小学4年、ヒロコ5年生』のようなわいせつビデオが何本か押収されている。しかし、女児への人権上の配慮もあってか、植木のわいせつ行為は法律上何ら罪に問われることはなく、未成年者誘拐と恐喝だけで2年6カ月の有罪判決が下された。

■風呂には3、4年入っていない

「もう7年間になりますかね。私は自宅アパートの部屋に引き籠っています」

そう植木は話す。東京・祖師ヶ谷大蔵駅から徒歩5分、家賃4万5000円、8畳一間のアパートを「引き籠りの拠点」としている。食事はファミリーレストランのデリバリーなどで済ませ、生活保護を引き出しに出る以外ずっと家にいる。風呂には3、4年入っていないそうだ。

記者が部屋を覗くと、積もったままのゴミは成人男子の背丈ぐらいまであり、そのゴミが玄関まで押し寄せ、戸を閉めることが困難なほどだった。

黒のTシャツ、紺の短パン姿。むき出しの脛のあたりには黄色い垢がこびりつき、体全体から「曰くいい難い腐臭が漂っている」(『新潮』)。

だが、これも植木によれば、「ゴミ部屋に籠っていれば、私が小さい女の子と接する機会を『強制的』に断つことができます。それに、こうしていれば、女の子たちに懐かれることもないですし」。それほど、女児に対する執着が強いということであろう。

2007年10月に出所後、植木は老人保健センターの介護職員やゆうパックの集荷作業など職を転々とした。だが、近くに小学校があると女児に関心が向いた。

■「私は既に2回『やって』いるんです」

「すぐに辞めて、今度は保育園のバス送迎の仕事をしたんです。変な話、未就学児には興味は湧かないだろう、自分に高を括っていたんですが、園児の入浴姿を見たりして、このままいくと『ヤバイ』と。ターゲットと言ったら変ですけど、自分の対象は小学1年生から6年生のつもりだったんですが……」

そこも辞めて2008年の夏から世田谷区の小学校で学童保育の職員をサポートする仕事に就く。植木もいっているように、子どもに興味があるからそうした仕事を選ぶのだろう。

「その学童で、私は既に2回『やって』いるんです。小学2年生の女子に、下駄箱で自分の下半身を露出したのが1回。それと、その子と、小学1年生の女の子ふたりを校庭の朝礼台の下に連れていって、自分の股間を触らせたのがもう1回。両方とも私の股間は屹立していました」

植木は、トイレと風呂場が一番危険で、そこだと催しやすいのだという。

そこも辞めて車いすに乗っている人を送迎する仕事をしていたが、小学校の周りを徘徊していると、股間を露出した女の子と遭遇した。声をかけて家族が不在の家の玄関先に上がり込んだ。股間を露出していると、

「女の子が私の股間にファブリーズをかけて……」

植木は、沖縄に誘拐した女児と、「三十数回した」ことを、成功体験だと語って恥じない。

「あれは性犯罪としては裁きを受けなかったから」

■逮捕してほしいと警察に訴えた

ところが、植木の部屋のあまりの汚さと異臭に近所からクレームが出て、区役所から出ろといわれてしまう。それは彼にとって社会に放り出されることを意味する。その上、引っ越し先として紹介された施設の近くには、9歳まで混浴できる天然温泉があるのだ。

このままではだめだと思い、8月22日に警察に少女ポルノや動画を持ち込み、逮捕してほしいといった。逮捕されて、受刑者に施されるという「性犯罪者処遇プログラム」を受けさせてほしいと訴えた。

そうしないと「確実に私はやりますからね」と再犯を記者に宣言している。

このプログラムは、06年度から始まった。主に性犯罪者を対象にした歪んだ性の強制措置である。だが、その効果はあまりないと法務省矯正局成人矯正課もいっている。不可解なことに、退去期限が来ても、警察は何もしなかったのだ。

■「気を付けろ! 植木君が歩いている」

今回の取材にも立ち会った河合は、植木はますます孤独を深めているから、このまま放置して何もしないと「本当にいずれ彼はまたやってしまうであろうと感じました。それは社会にとっても不幸なことです」と危惧する。

植木はスマホに保存している10歳当時のめぐの写真を見て、自分を慰めているという。めぐは現在23歳。

「今の彼女に興味はありません」

植木のような犯罪者の再犯率は10%を超える。こうした人間は、油断すると欲望がうずき出して、それを止めることができない。この植木の衝撃の告白はもっと読まれていい。

『新潮』風にタイトルを付けると「気を付けろ! 植木君が歩いている」とでもなろうか。久しぶりに『新潮』らしい、いいノンフィクションを読ませてもらった。(文中敬称略)

(ジャーナリスト 元木 昌彦)

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