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ひきこもりはやさしい~新しいフェーズ

■消えた16万人

ひきこもりが54万人に「減った」と報じられたのが1年前で、その前の調査の70万人から16万人も減ったと一部では話題になった(引きこもり54万人 15~39歳、長期・高年齢に 内閣府調査)。

いやこれは「減った」のではなく、正確には「(ひきこもり定義から外れる)40代になった」だけであって、16万人が潜在化しただけの話だ。

そんなことを保護者対象の講演などで僕が話すと、少しどよめきめいたものが起き、その少しあとに深いうなづきがやってくる。

単に、大きな人口ボリュームである団塊ジュニアが続々と40代になっているだけの話であり、これこそが「高齢ひきこもり」問題の最前線なのだ。

ひきこもりは増えているかもしれないが減ってもいない。それはどんどん「おじさんおばさん」になっている。

そして、その多くはおそらく「正規雇用」できず、よくて契約社員、よくあるのが普通のアルバイト、まだまだニート、そして時にはどっぷりひきこもり、という状態にある。

そう、彼女ら彼らが30代で「ひきこもり」の範疇にいた頃とたぶんあまり代わり映えのしない人生を歩んでいると僕は推測する。

ニート時々フリーター、時にどっぷりひきこもり、こんな生活を40代になっても過ごしている。

■「ひきこもり女子会」

ただ、何かが違う。

40代になり、どことなくユーモアが出てきている。自分のことを自虐的ではあるが「笑い」の対象として語れるようになっている。また、親に対しても相変わらず恨みの対象でありながらも、どこか「仕方ない人たち」的に語るようになっている。

また、「愛」を欲しながらもどこかで諦めている。「友情」は少ないながらも持てている。「仕事」に関しては、いっぱいいっぱいで毎日過ごしながらも、30代の頃よりはどこかで余裕がある。

そして、30代の頃よりも、「仕事」そのものができるようになっている。

なによりも、やさしい。

人にやさしく、場の雰囲気にやさしく、人々の関係性のなかでもやさしく、出来事の流れのなかでやさしくふるまえる。余裕は決してないのだが、なぜかいつも一歩引いた姿勢と態度で、やさしい。

これは「現場」仕事でもそうだろうが、ひきこもりの当事者会のような場でもそのようにふるまっていると僕は読んでいる。

先日、ある場所で講演をしたとき、その参加者の女性が「自分は月に1回ある『ひきこもり女子会』に助けられている」としみじみ話してくれた。その女子会の、40代前半の元ひきこもりファシリテーター女性に救われていると。

なるほど、そうした当事者会においても、ファシリテーターという立場で40代前半の元ひきこもり当事者は活躍しているのかと僕は思い至った。

■「やさしい人たち」の出現

ひきこもりの高齢化は、生活保護費急増や労働者不足といった社会的側面、あるいは孤独な人々の急増等の心理的側面から、危機的な状況として語られている。

それは、ひきこもり支援者もこの分野を取材してきたメディアサイドもよく似た意見だと思う。

だが今、ひきこもり第一世代である団塊ジュニアが続々40代になっていくことで、何か別の局面/フェーズが現れてきたように僕には思える。

それは、社会に、大量に「やさしい人たち」が出現しているということだ。ずっとひきこもって苦労してきたけれど、それでもそれぞれのペースで社会参加でき始めた彼女ら彼らが、それぞれ「やさしい言葉とやさしい仕草」で、この社会に入り込んできている。

いまは40代前半だが、すぐに40代中頃となり50才になるだろう。そうした「やさしい人々」の存在が、この社会を変えると僕は想像している。

階層社会となりギスギスしているこの社会を、長年苦労してきた元ひきこもりのおじさんおばさんたちが、そのやさしさで、特に社会の4割を占めるアンダークラスの若者たちをなごませるように感じている。

たとえば、高校内居場所カフェ事業(朝の高校に「サードプレイス」はある~西成高校「モーニングとなりカフェ」スタート!)内における元ひきこもりスタッフの動きなどを見ていると、そのやさしさに、哲学オジサンの僕も恥ずかしながら涙が出てきそうになる。(TT)★

※Yahoo!ニュースからの転載

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