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ギャンブル等依存対策比較:排除プログラム

(本エントリはシリーズ投稿の続きです。前回投稿を読んでいない方はコチラをまずどうぞ。)

さて、今年8月に政府は各ギャンブル等産業における依存対策案について発表を行ったわけですが、今回は「排除プログラム」に関する比較です。排除プログラムとは、顧客等による申告によってギャンブル施設の利用を制限する制度をいい、実効性の高い依存対策の手法として、現在世界の多くの国や地域において広がりを見せている制度のことをいいます。

この排除プログラムの我が国への導入に関しては、カジノ合法化検討の当初から制度的採用が論議されてきたものであります。現在、昨年成立したIR推進法に基づいて、急ピッチで我が国でのカジノ制度案が検討されているわけですが、政府が昨年8月に開示した「とりまとめ」文書では以下のような項目の記載が行われています。


○本人・家族申告による利用制限措置:
止めたくても止められないという依存症の実態を踏まえ、本人・家族申告により利用を制限する措置(申告対象者への勧誘等の制限を含む。)の実施。


上記記載に基づけば、我が国のカジノ産業においては「本人および家族」の申告により施設の利用制限をする措置の実施が行われることは間違いなさそうです。但し、実は未だその「利用制限」の具体的内容に関しては今のところ指定はされておらず、それが1)入場禁止なのか、2)利用回数の制限なのか、3)使用金額の制限なのか、もしくはそれらの複合となるのかは明確にはされていません。

また、同時にこのプログラムへの申告対象者に対して、事業者が勧誘行為等を行うことも制限をすべきである、との方針が示されているところです。このあたりは、世界のカジノ産業で導入が進められている標準的なプログラム内容であるといえます。

一方、このようにカジノ側で排除プログラムの導入検討が現実的に進むにつれて、カジノ以外の国内既存ギャンブル等産業においてもその導入に対する社会的圧力が高まり、政府はいよいよ今年8月にカジノ以外の産業においても同様に導入検討を行うことを発表しました。但し、その制度的「あり方」を見ると、必ずしもその導入の形式は同一のものではないようです。以下、現在政府が検討を進めている各ギャンブル等産業における排除プログラムの比較表。

exclusion
※○:一部でも既に導入されているもの、△:これから導入検討

実は公営競技業界は、昨年末にIR推進法が成立し、カジノ産業において排除プログラムが導入される可能性が高まった後、慌てて同様の施策の導入に着手を始めました。未だ「本人による申告のみ」ではありますが、地方競馬が本年4月、中央競馬が本年7月、競輪・オートが本年9月、ボートが本年7月からと、各競技場および場外券売場での入場制限措置を順次導入しはじめています。公営競技業界は、今後、この制限措置を「家族による申告」にまで拡大する事を検討しているところです。

また、公営競技は競技場、場外以外にもインターネットによる投票券の販売を行っており、実はこの部分が最も依存に対してはリスクの高い販売手法であるといわれています。各公営競技業界は、既に本人の申請によるアカウントを停止できる制度は提供していますが、今後はそれを家族の申請にまで拡大する他、本人の申請に基づいて購入限度額の上限を設定できる仕組みの導入を検討するとしています。

一方、公営競技業界が現時点で示しているプログラムから抜け落ちているのが勧誘制限措置です。カジノ業界では、プログラムへの申告対象者に対して事業者が勧誘を行う事も排除プログラムの範疇としていますが、少なくとも現時点で公営競技業界は同種の制限措置を設けることは表明していません。この点は、今後、論議が必要な分野であるといえます。

一方パチンコ業界ですが、パチンコ業界は公営競技業界よりはかなり早い段階、2015年から排除プログラムの導入を開始し、本年8月の時点で同プログラムの提供を行っている店舗が全国1,670店舗にまで広がっています。現在提供されているプログラムの内容は、本人の申告によって使用金額の上限を定めることが出来る制度のみとなっており、業界は今後、このプログラムを遊技時間、および回数の上限設定にまで拡大する他、家族による申告の受付けの導入も検討するとしています。

一方、事業者による申告対象者に対する勧誘制限に関しては、少なくとも現在政府によって開示されている対策案の中では示されておらず、この点に関しては今後の論議が必要な分野となるでしょう。

以上が現時点で開示されている各ギャンブル等産業側で検討が進んでいる「排除プログラム」の内容に関する比較でありますが、実はこの制度の運用に関してはもうちょっと論議を深めなければならない点が存在します。次回は本プログラムの「運用」面に関してもう少し言及します。

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