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外国人地方参政権に反対していた朝鮮総連と北朝鮮 - 崔 碩栄 (ジャーナリスト)

 突然の解散に伴い行われることになった衆議院選挙の話で秋が盛り上がっている。第一野党民進党の解党、小池都知事が率いる希望の党の躍進、東京―大阪を代表する地域政党の連携など政界の地殻変動にマスコミは連日大騒ぎだ。

 それぞれの政党、そして政治家たちの動向が話題になっている今、にわかに注目を集めている話題がある。在日外国人の地方参政権に関する問題である。小池百合子氏が率いる希望の党が、民進党議員を受け入れる際に挙げた「条件」の一つとしてこの問題に対する姿勢を問うたのだ。

小池新党への合流条件「外国人参政権への反対」

 小池氏は希望の党からの出馬を希望する民進党員を全て受け入れるのではなく、人を「選ぶ」と明言した。そして、その条件として新しく希望の党に加わる人たちに「政策協定書」の署名を求めた。この協定書には小池氏の政治的スタンスを明確に示す内容が含まれている。「安全保障法制の運用」「憲法改正への支持」「外国人地方参政権付与に反対」等がそれである。これらの項目に同意する人たちだけを受け入れるというのだが、旧民進党員の中には、小池氏の提示した条件に反発する人たちが現れ、彼らは新しく立憲民主党を結成するに至った。

 民進党分裂の原因の一つとなった小池氏の「条件」は、一部から「踏み絵」とも呼ばれ、批判の声があがっている。中でもリベラル系のマスコミは外国人地方参政権付与に反対する姿勢が「寛容と多様性に反する」と強く反発している。例えば、『外国人への地方参政権付与には「反対」という右派色の濃い主張も盛られている。「社会の分断を包摂する、寛容な改革保守」という党の要綱と、どう整合するのか』(10月4日、朝日新聞社説)、『(外国人地方参政権の反対は)「寛容」「多様性」という看板と矛盾しないだろうか』(10月3日、毎日新聞社説)のような意見が代表的である。

 そのような反対の声が気になったのか、希望の党が6日に発表した衆院選の公約と政策集には「外国人の地方参政権付与に反対」が盛り込まれなかった。しかし、外国人の地方参政権付与に反対することが即ち「不寛容」であり、「多様性の否定」だろうか? 当事者の外国人たちもみんなそう思っているだろうか? 答えは「NO」である。少なくとも外国人の地方参政権付与に激しく反対してきた外国人集団は確かに存在する。それは朝鮮総連系の在日朝鮮人たちである。

朝鮮総連「外国人地方参政権付与は同化させるための蜂蜜を塗った毒」

 実のところ、在日コリアンの間では地方参政権を求める声や運動も存在していた。朝鮮半島に生まれ日本に渡ってきた在日1世は祖国の政治状況により多くの関心を示していたが、日本で生まれた2世、3世たちは居住国の日本で日本人と同じ権利を行使したいと望んだからだ。だが、在日コリアンの声は必ず一致しているものではなかった。彼らは、賛成と反対に分かれ激しく対立した。

 在日コリアン社会を両分する団体は、韓国系の「民団」と北朝鮮系の「朝鮮総連」の二つである。民団は地方参政権獲得運動に積極的だったが、朝鮮総連は地方参政権獲得運動が「日本同化論」だと激しく反対した。例えば、1996年中央日報のインタビューで朝鮮総連の傘下団体、在日朝鮮人人権協会の柳光守会長は次のように述べている。

 問) 朝鮮総連が先月から急に参政権反対運動を始めた理由は?

 答) 参政権運動は日本への同化、帰化政策に互応するもの。蜂蜜を塗った毒と同じだ。前からこれに反対していたが、最近民団の一部が朝鮮総連との対決姿勢を強めながら、朝鮮総連を吸収しようと参政権獲得運動を利用しているから反対運動を始めた。

 また、参政権付与獲得運動は朝鮮総連だけではなく、北朝鮮からも厳しく批判されてきた。次は2000年2月28日、朝鮮中央通信が伝える北朝鮮外務省スポークマンの声明内容だ。

 日本政界で起きている<地方参政権>の立法推進の動きは、在日朝鮮人同胞たちの民族性を去勢し、民主主義的な民族権利を蹂躙する民族排他的な行為であり、同胞社会を分裂、瓦解させ、最終的には共和国の海外同胞団体である朝鮮総連を崩壊させることを目的にする政治謀略である。本来<地方参政権>は数年前から韓国の統治者らと<民団>の高位層の悪質分子らが朝鮮総連抹殺を企んで、在日朝鮮同胞たちの<日本政治参加>を許容する<権利>を日本当局に要請したことから始まった。

 つまり、韓国系の民団が地方参政権運動を進めると、それが実現し民団の影響力を大きくなることを恐れた朝鮮総連と北朝鮮が参政権反対運動を広げたのだ。

 北朝鮮の経済難や独裁の実態がだんだん世界に伝わり、所属員が激減している朝鮮総連から見ると、頭の数で優位にいる民団が参政権を獲得し政治勢力化することは大きな脅威に他ならない。ゆえに、反対せざるをえなかったのだ。いわば反対のための反対ともとれるが、彼らの主張は、地方参政権付与は「民族性の去勢」であり、「韓国と日本が朝鮮総連を抹殺するため進めている政治的謀略」であるというものだ。

参政権付与に反対する総連と北朝鮮には何も言えぬマスコミ
小池批判こそ「反対のための反対」ではないだろうか

 日本列島の在日コリアンたちは数十年に渡り、北(朝鮮総連)と南(民団)に分かれ、朝鮮半島の北朝鮮と韓国以上に激しく対立してきた。そして、その中には相手の主張には無条件的に反対をする「反対のための反対」といるものも少なくなかった。

 このように当事者たちには複雑な事情がある。そして彼らの意見は一致するものではない。賛成の声がある一方で、古くから強く反発する声も存在していた。しかし「人権」を強調する日本の一部の人たちは当事者たちの立場や経緯は全く考えず、自分たちの立場から見た「善意」だけを持って「他人の尊厳」を語る。

 本当に参政権付与反対が「不寛容」と「多様性の否定」であるというのなら、参政権付与を反対してきた朝鮮総連と北朝鮮にも批判の声をあげるべきではないか。しかし、これに言及する日本のマスコミは皆無だ。小池氏の反対は「悪い反対」で、朝鮮総連の反対は「いい反対」でもあるというのか。それとも小池氏の政策協定書に対する批判も「反対のための反対」に過ぎなかったのだろうか。

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