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“モノづくり”ニッポンの失墜は「失われた20年」のツケ

メード・イン・ジャパンの信頼を失墜させる問題が、またもや発生しました。神戸製鋼所で発覚した品質データ改ざん問題です。その影響は、自動車や鉄道など日本を代表する産業に広がり、メード・イン・ジャパンは大きな痛手を負うことが避けられない見通しです。

神戸製鋼所は8日、アルミ、銅製品の一部について、検査証明書のデータの書き換えなどを行うことにより、顧客が求める製品仕様に適合するものとして出荷していたことを発表しました。

データが改ざんされていたのは、長府製造所、真岡製造所、大安工場などグループ4事業所で製造されていたアルミと銅製品です。

すでに、2016年9月1日から1年間に出荷した製品のうち、4%に強度や寸法に関するデータの書き換えが認められているほか、10年以上前から改ざんが行われていたという証言もあります。

神戸製鋼所は、会長兼社長の川崎博也氏を委員長とする品質問題調査委員会を設置するとともに、外部法律事務所に調査を依頼しており、これまでの調査においては、安全性に疑いを生じさせる具体的な問題は確認されていないと発表していますが、長期にわたるずさんな品質管理の影響は小さくありません。

というのは、製品の納入先は、自動車だけでも、トヨタ、日産、スバル、マツダ、ホンダ、三菱自動車と、広がりを見せているからなんですね。

部材の信頼は、車の安全性に直結します。現在は大丈夫でも、部材に長年にわたって力が加わるなどして、強度が低下すれば、人命にかかわる事故につながることは否定できません。

かりにも、安全性にかかわる重要部品で強度不足などが確認されれば、大規模リコールに発展する恐れもあるんですね。

タカタの欠陥エアバッグのリコール、日産自動車の無資格者による完成検査と、日本が強みとしてきた品質を揺るがす不祥事があとをたちません。いったい、日本のモノづくりの現場で何が起きているのか。

日本製品の質の低下を示す事象は、すでにあちこちで起きています。

例えば、米国の市場調査会社「J・D・パワー」の2017年米国自動車初期品質調査によると、ブランド別ランキングで韓国の起亜が2年連続1位、トヨタは14位です。

また、韓国の鉄鋼メーカーのポスコは、世界一厳しいといわれる品質基準をクリアして、トヨタへの納品を成功させました。つまり、ポスコの自動車鋼板の品質が、新日鉄やJFEなど日本のメーカーと肩を並べ、世界最高水準に達したということですね。

振り返ってみれば、日本の製品は60年代には、「安かろう悪かろう」といわれていました。しかし、その後の品質向上の努力によって、80年代には高級品の代名詞とまでいわれるようになったのは、ご存じの通りです。

ところが、90年代に入り、日本企業は経営環境の激変に直面し、いわゆる「失われた20年」を迎えます。

バブル崩壊後の20年間、日本企業はひたすらコスト削減を推し進めました。生き残りをかけてムダを省き、品質向上よりコストカットで功績を出した社員を評価するようになりました。

加えて、この間、熟練作業者は減り、かわって非正規従業員が増加しました。現場のスキルの低下は否定できませんね。

また、安全基準さえ満たせばいいという供給側の論理が優先され、顧客が製品を安心して購入でき、長期間満足して使用できる品質を保証することは、二の次にされてきたきらいがあります。

つまり、「失われた20年」において、日本の現場は大きく変化した。いってみれば、それがモノづくりの信頼の低下を招いた。

では、20年前に戻ればいいのかというと、そう簡単ではない。実際、現場を支えてきた世代が定年を迎えるなかで、人を中心にしたモノづくりの強さは、維持しにくくなっている。

また、働き方が多様化するなかで、これまでのように会社への忠誠心や製品への誇りを従業員に要求するのも困難です。

日本が今後とも、品質を強みに世界と戦うことができるかどうか。大変むずかしいところにきているのは確かです。

品質問題を克服するためには、経営トップから現場の社員にいたるまでの意識改革が求められるのは間違いないといっていいでしょう。

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