記事

米史上最悪のラスベガス乱射事件 それでも銃規制は遠い未来の話なのか

1/2

[写真]59人が死亡したラスベガス乱射事件の発生現場近く(ロイター/アフロ)

 カジノやリゾートホテルが数多く立ち並ぶ米西部ラスベガスで、1日午後10時過ぎ(現地時間)に突如発生した無差別乱射。標的となったのは市の中心部でカントリーミュージックの野外コンサートを楽しむ観客たちであった。どこから発砲しているのか分からないまま、会場にいた観客らはパニックになりながら逃げ続けた。

10分ほど続いた銃撃で、これまでに59人が死亡し、500人近くが負傷。容疑者は事件現場から約300メートル離れた場所にあるリゾートホテルの32階にあるスイートルームから犯行に及んでいたことが分かったが、警察の突入直前に自殺している。ラスベガスで何があったのか?アメリカの病巣ともいえる銃犯罪は、この事件をもってしても歯止めが効かないものなのか。

【写真】オバマ大統領が涙の演説 規制へ立ちはだかる「銃社会アメリカ」の壁

■謎だらけの容疑者の日常生活

 事件現場となったラスベガス・ストリップはラスベガスの目抜き通りでもあるラスベガス大通りの一部分だが、多くの有名ホテルやカジノがこのエリアに集まっており、絶えず多くの人で賑わいを見せているエリアだ。現地時間の10月1日、このラスベガス・ストリップでカントリー音楽の野外フェスティバルが行われていた。

コンサートの終盤、トリを務める人気カントリー歌手のジェイソン・アルディーンが、野外フェスに集まった2万2000人の観衆に向けてパフォーマンスを行っていた。演奏が続いていた午後10時過ぎ、繰り返される銃声とともに、無数の弾丸が音楽フェス会場にいた観衆を襲った。まるで空から弾丸が降り注ぐような状態の中、会場にいた観衆はパニック状態になりながらも、コンサート会場から必死で逃げた。その間も銃撃は続き、58人の死者と500人近い負傷者を出す大惨事となったのだ。

 やがて、音楽フェス会場から約300メートル離れた場所にある黄金色のホテル「マンダレイ・ベイ」の客室から何者かが発砲を繰り返していることが判明。警察は銃撃犯のいる部屋を特定し、遠隔操作でドアを爆破した後、部屋の中に突入した。容疑者が無差別銃撃を行ったのは32階にあるスイートルームだった。

部屋に突入した警察官が目にしたのは、すでに自殺を図った白人男性の姿であった。まもなくして、死亡した容疑者は64歳のスティーブン・パドックで、事件の3日前からホテルに滞在していたことも判明。銃撃を行ったパドック容疑者の部屋からは23丁のアサルトライフルや拳銃が発見された。また、パドック容疑者は単発でしか撃つことのできないライフルを連射させることのできる、「パンプストック」と呼ばれる機器を取り付けて、コンサート会場に向けてマシンガンのような銃撃を続けていたとされる。

 パドック容疑者がなぜホテルの高層階から無差別銃撃を行ったのかは不明だ。動機不明のまま容疑者は死亡したが、23丁もの銃器をホテルに持ち込んでいたことや、複数のカメラを自室周辺に仕掛けていた点などから、計画的犯行であったことはほぼ間違いないが、動機だけが謎として残った。パドック容疑者はかつて連邦政府で働いていた時期もあったが、ギャンブラーとしてカジノで高額の掛けに乗じたり、アメリカ各地に投資目的で複数の不動産を所有していた。また、パドック容疑者の知人や親族は複数の米メディアの取材に対し、パドック容疑者が極端な政治思想などを持っているようには見えなかったと語っている。

■類似の乱射事件は50年前にも

 容疑者がホテルの高層階から無差別に乱射を繰り返し、現在までに59人の死亡が確認された、アメリカ犯罪史上最悪の大量殺傷事件。実は今回のケースと非常に類似した事件が1966年に南部テキサス州のオースティンで発生しており、その際には15人が殺害され、30人以上が負傷している。25歳のチャールズ・ホイットマンはアッパークラス出身の大学院生であったが、1966年8月に自身が在籍していたテキサス大学オースティン校の時計塔に複数のライフル銃などを手にして現れた。

 90メートルの高さをほこる時計塔は観光スポットにもなっていたが、ホイットマンは時計塔の入り口付近で受付係や見学者らを射殺し、そのまま最上階に移動した。ホイットマンは時計塔の最上部から、地上にいる学生らに向かって狙撃を開始。ホイットマンは過去に海兵隊で一級射手として表彰されたこともあり、地上にいた多くの学生らが次々と凶弾に倒れた。通報を受けた警察はすぐにホイットマンの拘束を試みたが、時計塔の上からの狙撃によって、近くまで接近することすら困難で、警察がホイットマンを射殺するまでに1時間半以上を要した。

 ホイットマン事件は当時、多くのアメリカ人に衝撃を与えた。しかし、悲しいことに同様の無差別銃撃は全米各地で定期的に発生している。1984年にはカリフォルニア州のファストフード店でサブマシンガンとショットガンを持った男が侵入し、店内で食事をしていた子供ら21人を殺害している。容疑者は犯行から1時間後に警察の狙撃手によって射殺された。1986年にはオクラホマ州で、パートタイムで郵便配達の仕事に就いていた男性が10分間で14人の同僚を射殺した後、自ら命を絶っている。

1999年にコロラド州リトルトンのコロンバイン高校で発生した銃撃事件はのちにマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画のテーマにもなったが、2人の男子学生は13人の学生と教師を殺害し、図書館で自殺している。その後もバージニア工科大学での乱射事件では32人が死亡し(2007年)、コロラド州オーロラの映画館で発生した乱射事件では12人が死亡(2011年)、昨年6月にはフロリダ州にあるナイトクラブで49人が殺害されている。

 2012年12月には、米東部コネチカット州にあるサンディフック小学校にアサルトライフルと拳銃を持った男が侵入。男は児童や教師ら26人を殺害し、教室内で自らの頭部を撃ち抜いて命を絶った。この事件の直後、筆者はフロリダ州立大学で犯罪学を教えるギャリー・クレック教授に話を聞いた。クレック教授は事件を未然に防ぐ有効な手段が存在しない現状に悲観的だった。

「犯罪学者の間では、一度に4人以上が殺害されるケースを大量殺人と呼んでいます。割合で考えた場合、大量殺人はアメリカで年間に発生する殺人事件の僅か1パーセント足らずに過ぎません。しかし、学校や映画館、職場といった場所で発生する無差別乱射を未然に防ぐ方法がないのかという質問には、ほとんどないと言わざるをえません」

 銃犯罪を専門に研究するクレック教授は、多くの無差別乱射事件で容疑者が「覚悟を決めて」犯行におよんでいると指摘する。クレック教授が続ける。

「多くの場合、無差別乱射犯には非常に強い動機が存在し、事件後に逮捕もしくは射殺される可能性に対する恐怖感を捨てて犯行に及んでいます。無差別乱射の容疑者が事件現場で自殺するのもそのためです。銃を購入する際に義務付けられている身元調査ですが、強盗のような通常の犯罪者のみに対して高い抑止力があると言えるでしょう」

あわせて読みたい

「ラスベガス銃乱射事件」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    よしのり氏「自民の勝利は当然」

    小林よしのり

  2. 2

    政治力失った小池氏 出処進退は

    おときた駿(東京都議会議員/北区選出)

  3. 3

    「小池の変」失敗の被害者は国民

    郷原信郎

  4. 4

    立憲民主は戦後最弱の野党第一党

    木走正水(きばしりまさみず)

  5. 5

    維新議員 相手陣営のデマに怒り

    足立康史

  6. 6

    若者は現実政党しか信じなかった

    門田隆将

  7. 7

    保育士離職の原因は給与ではない

    石水智尚

  8. 8

    橋下氏 希望敗北でも「大功績」

    橋下徹

  9. 9

    立憲の鍵を握る改憲派・枝野代表

    篠田 英朗

  10. 10

    時代遅れなアパレル企業の悲惨さ

    Chikirin

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。