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「髪を染める麻布 修学旅行のない武蔵」名門校のユニークすぎる校風

9月16日、教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏の新著『名門校「武蔵」で教える 東大合格より大事なこと (集英社新書) 』の発売にあわせ、新宿紀伊國屋本店にてイベントが開かれた。

BLOGOS編集部

イベントは「武蔵vs麻布 本当に『変』なのはどっち?」というタイトルで行われ、『「謎」の進学校 麻布の教え (集英社新書)』で知られるノンフィクションライターの神田憲行氏とともに、武蔵・麻布という都内名門校の知られざる校風について語られた。

武蔵の伝統「おみやげ問題」

「武蔵」の通称で知られる私立武蔵高等学校中等学校は、1922年に創立された日本初の私立7年制高校をルーツに持つことで知られている。現在、高い学力で知られる私立の中高一貫校等なった同校は、他の進学校に比べ、ひときわマイペースに伝統を守り続けているという。その代表的な部分として、おおた氏は武蔵の入試問題を取り上げた。

武蔵の入試には現在でも「B4わら半紙」「手書きの問題文」など、特徴的な部分がある。その最たるものが「おみやげ問題」だと同氏は語る。

「おみやげ問題」は理科の問題として、毎年の入試で出題されている。この問題では、問題文に登場するネジや磁石といった題材が封筒に入った状態で受験生に配られ、指示通りにそれらを観察しながら回答する必要がある。試験後、封筒で渡されたものは持ち帰ることができることから「おみやげ問題」と呼ばれているそうだ。

実際におみやげ問題で出題された「ネジ」

おおた氏によると、この問題には「地道にものを観察して違いを見比べる」といった、武蔵で実際に行われている教育を入試の時点で体験させる意図があり、同校が「入学して欲しい」と思う生徒を見分けるためにぴったりだという。

髪を染める麻布 修学旅行のない武蔵

ユニークな校風は学内で行われるイベントにも現れている。

学校法人麻布学園が運営する「麻布」こと麻布中学校・高等学校の運動会では生徒たちが赤・青・黄色など、髪の毛を派手な色に染めることでも有名だ。髪を染める理由は運動会が3色の「色別対抗」だからだが、染髪を校則で禁止している高校も少なくないため、運動会に来た外部の生徒は驚くのだという。

おおたとしまさ氏

自身も麻布高校出身のおおた氏はこれについて、「世の中的に『してはいけないこと』でも、果たしてそれが正しいのかと論じるのが麻布」だと、母校の特徴について語った。

しかし、おおた氏が在籍していた当時はまだ髪を染める生徒は少なかったらしく、現在の麻布生が髪を染めるのは「いい子の仮面を引っぱがすためのイニシエーション(通過儀礼)」「本当は真面目なのに痛々しい(笑)」と自身の母校にツッコミも。会場の笑いを誘っていた。

対する武蔵の不思議として取り上げられたのが「修学旅行がない」こと。武蔵でも以前は修学旅行を実施していたが、各所でトラブルが起きたことがあり、修学旅行を行わないことになった。

おおた氏の取材によると、これは「トラブルそのものを問題視して修学旅行を中止」したわけではなく、「集団で行動することで付和雷同的な行動を取ることが武蔵らしくない」という、あくまで「校風にそぐわないから」といった理由によるものだ。

事実、現在は武蔵では学外で行うすべての行事が現地集合、現地解散となっている。こうした、あらゆる場面で校風をして貫き通すやり方も武蔵の特長だとおおた氏は語る。

東大合格者数だけではない名門校の価値とは

近年、東大合格者数が減少した時期があり、武蔵は開成、麻布と並ぶ「御三家」の一角として相応しくないのではないかという声も上がりはじめているそうだ。しかし、名門校には東大合格者数だけではない価値があるのではないかと2人は言う。

武蔵には「ヤギがいる」「学内のきのこや山芋を持っていくと社会の成績が上がる」など、およそ進学校らしからぬ特徴がある。そこでは伸び伸びとした教育が行われており、現在でも他の進学校ほど受験勉強に重きを置いていない。おおた氏は、現状の受験勉強は塾のメニューを指導通りにこなすことが合格への近道になっており、武蔵のような伝統を重んじる学校にとっては対応が難しいと指摘していた。

これに対し麻布は生徒数も多く、受験カリキュラムを取り入れるなどして東大合格者数を維持。同校の雰囲気を振り返りながら、生徒も学校も「要領がいい(おおた氏)」と述べていた。

神田憲行氏

神田氏は麻布の教師に麻布OBが少ないことを例に挙げ「いい学校は外部の人が価値を認めて残そうとする」と指摘。おおた氏も麻布OBであるにもかかわらず武蔵について本を書いたことに触れ「外から見るからこそ、その価値を大事にしようと思った」と述べた。

名門校の生徒に共通? 独特な話し方

神田氏が以前、麻布の生徒にインタビューをしていた際に気付いたこととして、何か質問を投げかけた際、「間違っているかも知れませんが〜」「○○を前提として〜」など、「保険をかけたようなしゃべり方をする」のが気になったそうだ。

これにはおおた氏も「武蔵も一緒です」と同調。神田氏が「頭のいい子のしゃべり方の特徴?(笑)」と返すと「自分の意見を押しつけるだけではなく、他の意見を聞き入れる余地を持っていますよ」「自分の意見と同じくらい、相手の意見も重要だ」という姿勢が自然と備わっているのではないかと分析していた。

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