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膨らむ卒業後の負債に議論沸騰!「出世払い」の英国大学学費事情

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10月22日、日本では総選挙の投開票が行われることになったが、先月まで政府は教育無償化の一環として、大学の授業料を最初に国が負担し、卒業後に学生が所得に応じて返済する「出世払い」を導入するための検討を行っていた。

何年も前からこの出世払いを実践しているのが、英国だ。しかし、卒業後に学生が返済する金額が膨れ上がり(試算では約5万ポンド=約750万円相当。9月中旬の為替レートによる。以下も同じ)、就職後、まもなくして返済を始めることになる学生にとっては、気が重くなる制度でもある。返済の金利はインフレ率に上乗せした金額として設定されるため、雪だるま式に増える負債総額に学生たちは悲鳴の声を上げている。

6月の総選挙で授業料無料化を掲げた最大野党・労働党が若者層の支持を受けて躍進し、大学学費が改めて政治問題化している。出世払い制に大きな疑問符がついた英国の状況を紹介してみたい。

英国の大学はほとんどが国立か公立

日英の大学制度にはいろいろと違う点がある。

まず、英国の大学はその大多数が国公立だ。進学したい人には、出身家庭の貧富に関わらず勉学の道が開かれているべきという認識があり、大学の授業料は1997年まで無料だった。税金や大学側の自助努力によって教育費を賄ってきたのである。

しかし、次第に進学率が上がってくると、税金や大学側からの拠出金だけでは学費を賄うことが難しくなってきた。そこで、1998年から、年間1000ポンド(約15万円)の授業料が導入された。この時、筆者は英国にいなかったのでどれほど学生、親、政治家などから反対の声が上がったのかについて、直接的には分からない。

「高額授業料は貧困層の進学を阻害する」

はっきりと覚えているのは、2006年以降の値上げの際の大きな議論だ。

この時に議論されたのは、1000ポンドから3000ポンドへの値上げだった。全国各地で学生を中心としたデモが頻発し、よくニュースでも取り上げられた。政治家の中にも反対者が続出した。自分たち自身が無料で大学進学をした世代である。多くの人にとって、大学進学は一つ上の社会階層に上がるためのステップとなった。学費が値上げされれば、「貧しい家庭出身の若者たちの教育の機会を奪う」ことにつながるのである。

当時は労働党政権だった。労働者や貧困層の守り手であるはずの労働党の政権下で、大学授業料が3倍に値上げされそうになった。

時のブレア首相は学生たちとの対話形式のテレビ番組に出演し、何とか値上げへの支持を取り付けようと躍起となった。

「値上げは教育の機会を奪う」、「大学教育はすべての人の恩恵になる。だから税金を使うのが当然」と主張した、ある学生がいた。

これに対し、ブレア首相は低所得で働く、ある労働者のことを考えてみてほしいと訴えた。確かに大学教育は社会全体に恩恵を与えるだろうが、この人はおそらく、大学進学者よりも低い給与で働いている。大学進学者は卒業後、より高い給与の職に就く。「この労働者に対し、あなたが進学することを正当化できますか」という趣旨のことをブレア氏は学生に問いかけた。

自治政府が決める学費の上限

日本と英国における大学制度の相違点の2つ目は、地方分権化が進んだ英国では大学の授業料についてそれぞれの自治政府が上限を決めている点だ。

上限の金額は中央部に位置するイングランド、西のウェールズ、北部スコットランド、アイルランド半島にある英領北アイルランドでそれぞれ異なる。

イングランドでは年間の上限が9250ポンド、ウェールズは9000ポンド、北アイルランドでは4030ポンド、スコットランドでは1820ポンドになる。各大学はこの上限ぎりぎりまでを学費に設定したがる。

ちなみに、スコットランドに住む学生は自治政府が授業料を肩代わりする形を取り、実質的に無料で勉学できるようになっている(ただし、イングランドなど英国内でもほかの地方の学生がスコットランドで勉強する場合は、最大で9250ポンドを払う)。以下、主としてイングランド地方の状況について書きたい。

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