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ルポ・生きづらさを感じる人々7 「死にたい」は日々の反響音のように 背景には難病とアトピーによる苦しみ〜慎吾の場合

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JR新宿駅前で待ち合わせていると、ニッカポッカを履いた加藤慎吾(32、仮名)が現れた。鳶職のようにも見えるが、肉体労働者ではない。仕事は屋内作業であり、職業からすると、異質な格好をしている。その後、取材以外で、別の場所で偶然会ったが、同じようにニッカポッカ姿だった。

「(ニッカポッカは)保護色なんですよ。この手の人は得意じゃないんで、“僕はそっち側ですよ"と表明してしまえば、無用なトラブルを避けられると思って....」

慎吾はかつていじめられる側だった。それによって死にたいとは思ったことがないのは、うまく立ち回ることができたためだ。カメレオンのように身を隠してしまえば、いじめの対象にならないことをどこかで学んだということだろう。それでも慎吾はいじめとは違う理由で日常的に「死にたい」と思っている。

僕の周りでは「死にたい」と思う人は常にいた

東京都は17年7月、自殺対策に関する意識調査を実施した。その中で「あなたは、これまでの人生の中で、自殺したい、またはそれに近いことを考えたことがありますか?」との質問がある。「ある」と回答したのは45.3%だった。その中で「最近一年以内」は、26.1%だった。類似の調査の中では高い印象だ。

一方、内閣府の調査(16年度)で「自殺したいと思ったことがある」と回答したのは23.6%。東京都調査はこれを大きく上回る。内閣府の調査は「最近1年以内」では18.9%だった。ただ、東京都調査は、もともと福祉保健政策に関心があるモニターを対象にしているために、層化2段抽出法の内閣府調査とは手法が異なっており、内閣府調査の方が信頼性は高いと言える。

内閣府調査をもとにすると、死にたいと考えたことがあるのは4人に1人。こうした数字を見た慎吾は「ショックを受けた」と言うのだ。これらの調査結果で自殺を考えた人が「多い」と感じたわけではない。むしろ、「少ない」と感じたようだ。

慎吾は同じような人たちとつながっているが、それはSNS、特にツイッターでのつながりだ。そこで「常に『死にたい』と思っているわけではないが、そういう感覚がある人」とつながっている、という。

「嫌なことがあると死にたいと思うんです。仕事でミスしたりとか、軽い気持ちでも思うことがあります。ただ、ずっと以前から、反響音のように『死にたい』『死にたい』と響いています。僕の周囲にはそういう人が当たり前にいたんです。自殺を考えることは、僕の中では普通のことだったんです。多かれ、少なかれ、考えることはあるだろうと思っていたんですが、思っていた割合と逆だったんです」 

飛び込み自殺を断念した理由とは?

20歳のころ、慎吾は電車への飛び込み自殺をしようと思ったことがある。日にちと時間、そして飛び込む電車を決めていた。本気だったというが、実際にはしなかった。

「決行しようとした当日、普段しないような寝坊をしてしまったんです。そのため、予定時刻の電車には飛び込めませんでした。そうしたら、『どうでもいいや』と思えたんです」

自殺をしようとしたのに寝坊というのは、単純な“ミス"なのか、それとも、防衛本能だったのかはわからないが、寝坊したことで、少なくとも、その時の自殺は止める。とはいえ、「死にたい」気持ちがなくなったわけではない。

「ある日、ドアを開けたら、ソイツがいつ顔を出すかわからない感じです」

慎吾が希死念慮を抱いたのは18歳の頃だが、特に家族関係や友人関係が悪いわけでないという。いじめられたことはあるが、それが原因ではない。

「虐待とかはなかったです。ただ、小学校から高校までは、いじめられる側でした。ただ、なんとかうまく立ち回ったのか、ヘビーにいじめられることはなかったです。もともと気が弱い性格で、人に対して甘いし、つけ込まれやすい。人の言うことを信じてしまうんです」

なにかあっても怒ることも基本的にしない。いや、できない性格のようだ。

「怒れないですね。怒った後に何が起きるか?と考えると嫌になるんです。『いい加減にしろ』と言ったとしても、僕に言われた方も、それを見ていた人がいても、気分が悪いですよね。だったら、今言わなくてもいいと思い、我慢します。となると、『アイツは怒らない』とか、『ここまでならアイツはOKだ』となります。だから、なめられやすい。僕一人でできるならば、我慢します」

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