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今後の生活「良くなっていく」9.4%が持つ意味(高橋伸彰)

内閣府は8月26日に、2017年の「国民生活に関する世論調査」(以下、同調査という)の結果を公表した。同調査は60年前の1957年度から実施されており、一億総中流社会のネタ元にもなった調査である。

ただ、総中流の正体が上中下の中ではなく「お宅の生活の程度は、世間一般からみて、どうですか。この中から1つお答えください。上、中の上、中の中、中の下、下」と尋ね、中の上、中の中、中の下の三つを合計した数値だったように、統計の作成方法や数字に現れた意味を問わなければ真の世論は見抜けない。

実際、同調査が「満足」と公表するのは、明確な「満足」と曖昧な「まあ満足」を合計した数値であり、明確な「満足」に限れば現在の生活に「満足」は12.2%、収入に「満足」は7.9%にすぎない。それにもかかわらず、同調査の結果を翌27日付の朝刊で報じた『朝日新聞』は「生活に『満足』過去最高73.9%」と見出しに掲げ、その真意を読み取らなかった。

これに対し、22年前の1995年に同調査の結果を報じた同年8月21日付『日本経済新聞』では、現状の生活に「満足」が約7割に達すると本文で書く一方、見出しには「『今後の生活は良くなる』13.7%過去最低に」と掲げ、二つの数字をつなぐ鍵として取材で得た「景気回復が足踏みするなか、現状を追認する傾向が見られる」という総理府(現内閣府)の分析を紹介している。

当時、生活に「満足」の割合が高く現れたのはバブル崩壊後の停滞が続く中で、この先も景気が良くなると期待できない国民が、半ばあきらめて「まあ満足」と回答したからではないかとの見方を国民目線で報じたのだ。

2017年の同調査でも今後の生活が「良くなっていく」と回答した国民の割合は9.4%と、上で示した95年の13.7%より4.3%低く、民主党政権時代の9.7%(2012年)にも及ばない。だが、現在の「満足」と今後の「予想」に潜む世論の洞察を怠った『朝日新聞』の報道には、将来に対する悲観から今の生活にやむを得ず「満足」を見出そうとしている国民の姿は映し出されていない。

同じことは、「『収入に満足』51%/21年ぶり“不満派”を上回る」と見出しに掲げて、2017年の同調査を報じた『日経新聞』(8月27日付)にも言える。同調査には今後の収入見通しに関する質問はないが、日本銀行が四半期ごとに行なっている「生活意識に関するアンケート調査」には、「1年後のあなたの世帯の収入は、現在と比べてどうなると思いますか」という質問がある。この6月の調査で「増える」は9.1%と低く、逆に「減る」が31.3%、「変わらない」は59.2%と過半を占めた。二つの調査を重ねれば、今の収入に対する「満足」の高さが将来も収入は増えないという悲観と表裏一体なのが透けて見えてくる。だが、こうした世論の真意を22年前のように今年の『日経新聞』は探ろうとしなかった。

政府の調査を報じる新聞は政府公表の数字を右から左に流すのではなく、その背後に潜む本質を摘出する責務を怠ってはならない。そうでなければ時の政権に都合の良い数字だけが蔓延り、国民の声はいつまでも埋もれたままになってしまう。

(たかはし のぶあき・立命館大学国際関係学部教授。9月8日号)

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