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中国の富裕層が日本観光に求めるもの 行楽ジャパン 代表取締役 袁静氏 - 中島恵

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 今年も中国の国慶節(建国記念日をはさむ大型連休)がやってきた。中国人の「爆買い」がブームとなったのは2015年。その後、中国人観光客の関心や消費は「モノ」から「コト」(経験)へと移行しているが、現在はどのような現象が起こっているのか。また、彼らはどんなアンテナを張り、どのように日本の情報を得て、どんな行動を取っているのか? 日本企業や地方自治体にはどんなビジネスチャンスがあるのか? 中国人のインバウンド事情に詳しいキーパーソンに話を聞いた。

 連載第1回目は、上海で富裕層向けメディア「行楽(こうらく)」を立ち上げ、富裕層の思考や消費傾向に精通する行楽ジャパン代表取締役、袁静(えん・せい)氏。

――上海などで、富裕層向けに日本旅行メディアを発行しているのですね。

上海の富裕層の間で人気の雑誌『行楽』

袁氏:もともとは09年に北海道を紹介するフリーペーパー『道中人』を創刊。その後、九州観光を紹介する『南国風』も発行し、それらを発展させた形で、13年にコンビニなどで販売する一般の雑誌『行楽』を発行しました。日本全国の観光や生活、文化に関する情報を網羅しており、エッセイなどもあります。

 価格は20元(現在のレートで約320円)で90ページ前後、A4サイズでフルカラーです。日本旅行やライフスタイルに関心のある人々を対象にして「中国初、中国語による日本情報専門誌」として出版しましたが、おかげさまで、これまでさまざまな人々に愛読されてきました。また、昨今のデジタル化につれ、SNS(38万人のフォロアー)、モバイルサイト、ライブ動画などのクロスメディアで情報発信をしています。

――中国の富裕層ということですが、具体的にはどのような人々でしょうか?

袁氏:高学歴で情報に敏感、旅行はもちろん、文化や芸術、社会事情など幅広い分野に関心のある30~40代の男女をターゲットにしています。上海から開始しましたが、北京や広州など他の都市部にもファン層は徐々に広がってきています。職業は自分で企業経営している方、大学教授、大手企業社員、OLなどさまざまですが、いずれも知的好奇心が高く、スマートな方々です。

――日本では一時「爆買い」が騒がれましたが、それは団体旅行者が中心で、個人旅行者ではないですね。洗練された富裕層は、当時も『行楽』などを読み、日本の最先端の情報を入手していたのですか。

袁氏:そうですね。北京、上海では旅行者の70%が個人旅行にシフトしてきており、この流れが加速することは確実だと思います。団体では見られないところ、地方都市、知る人ぞ知る名所、まだ中国ではあまり知られていない美食などに関心が高まっています。

 弊社では以前から、雑誌愛読者へのサービスの一環として、少人数でのツアーや読者間の交流会などを企画しており、これまでも和歌山県の高野山金剛峰寺で写経をしたり、沖縄で民泊をしたりするなど「特別な旅」を企画し、好評を得てきました。

――御社のウィーチャットを拝見すると、これまで日本で報道されてきたような一般的な中国人団体ツアーなどとは大きく異なっていて驚きます。

袁氏:今年、弊社のキャッチフレーズは「体験有温度的日本」(ぬくもりのある日本を体験する)なのですが、ご承知のように中国人富裕層の興味・関心は、“体験”へと移ってきています。これまでは車窓から眺めていた日本ですが、これからは日本人と交流したり、もっとぬくもりを感じられる旅が求められていくでしょう。

 たとえば、最近実施した企画は、東京・日本橋コレドで和菓子とお茶を飲む体験、手すき和紙を作る体験、大阪・太閤園の広大な庭園で鉄板焼きを食べる体験、銀座で懐石料理の盛りつけを行う体験……などです。

行楽ジャパン代表取締役 袁静氏

 個人旅行客が懐石料理を食べる機会は増えてきていますが、懐石料理の盛りつけを自分で行うという機会はないですよね。お料理や食材、飾りなどを準備し、それを参加者が自分でお皿に盛りつけるのです。試行錯誤でやってみるのですが、これがけっこう難しくて……。でも、皆さん、自分なりに盛りつけを楽しんでいました。また、それだけで終わらず、料理人の方が実演してくださったり、直接、料理人から解説をお聞きするのも大きな魅力です。   

 なぜ、この食材はこのように盛りつけるのか、どう盛りつけたらより美しいのか。その盛りつけ方にはどういう意味があるのか、など日本人の専門家のお話をうかがうと、日本の懐石料理への造詣が深まり、知識もぐっと増えます。このように、「体験」は重要なキーワードになっていますが、富裕層たちはさらにもう一歩踏み込んで、日本人の方と直接お話して、より多くのものを学んだり、コミュニケーションを取ったり、新しいことを吸収したいと思っています。

 もうひとつ、中国の富裕層もホームパーティなどを開催することが増えてきて、ゴージャスな食材を並べるだけではなく、洗練されたオリジナルな演出を求める風潮ができてきました。和食は味だけでなく、目で楽しむというイメージが共通認識としてあり、よい食材とよい器の組み合わせなどについて日本人の達人や匠(たくみ)から学びたい、との考えがあって、自分の生活にも取り入れたいと思っています。

――専門家が語る蘊蓄(うんちく)は勉強になりますよね。

袁氏:おっしゃる通りです。日本で実施する読者会だけでなく、上海でも少人数に限定した2~3時間の生け花教室、有田焼の器でコーヒーをいただく会、秋田県の稲庭うどんや日本酒を楽しむ会などを実施しているのですが、皆さん、専門家が語る蘊蓄に興味津々でした。また、参加者の側も「この出汁は何で取っているのですか?」や「この日本酒に合うお料理は?」「このすだちがアクセントになっていて、風味を際立たせていますね……」などの高度な質問や感想が飛び出しますし、蘊蓄を語れるほど高いレベルの方もいらっしゃいます。日本に何十回と足を運び、各地方でさまざまな料理を味わったり、ホンモノを目にしてきた「通」の方々は、文化や芸術にも精通していて、もっと奥深いことを知りたいと思い、探求心が旺盛。私も驚かされることが多く、ときどき「ついていけない……」と思ってしまいますよ(笑)

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