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「温暖化」以外にあった洪水被害の大原因

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いまやビジネスを進めるうえで「リスク」への備えは不可欠だ。どんなリスクがあり、どう備えればいいのか。デロイトトーマツ企業リスク研究所の茂木寿主席研究員は「洪水のリスクに注目すべき」という。実はいま全世界で洪水被害が増えている。「温暖化」という指摘もあるが、雨量や台風の数などはそれほど変化していない。なぜ被害が増えているのか。その背景には意外な事情があった――。


9月10日、イタリア各地で豪雨による洪水が発生し、西部トスカーナ州リボルノでは民家が浸水して家族4人が死亡するなど計6人が犠牲になった。写真は同州リボルノの空撮写真=伊消防当局提供(写真=AFLO)

■自然災害で最も増えているのは洪水

今回注目する第一のリスクは自然災害です。8月30日に米国のテキサス州を襲ったハリケーン「ハービー」による経済的損害額は、最低でも約1250億ドル(約13.8兆円)ドルにも達すると推計されています。日本でも台風5号が長期間停滞し、西日本に大雨による多大な被害をもたらしました。

いま全世界的に自然災害が増えており、大きな脅威になっています。国連の統計によれば2011年から16年の5年間だけ見ても、世界の自然災害は右肩上がりで増えています。その中で一番増えているのは洪水です。台風や地震もイメージとしては増えているように感じるし、これを地球環境の変化・温暖化の影響だという人もいますが、発生件数はそう変わっていません。

自然災害が増えている一番大きな理由は、世界の人口が増えていることです。いま世界の人口は約73億人で、2100年には100億人を超えると予測されています。人に災害をもたらすと自然災害となります。たとえば南極で大地震が起きても誰も被害をこうむらなければ、自然災害といいません。単なる地形の変化です。人口が増えたために被害を受ける人が増えて、自然災害の件数も増えているのです。

さて、自然災害の中で最も増えている洪水には2種類あります。川が増水し堤防が決壊して洪水になる。これを「外水型」の洪水と言います。最近、世界中で増えているのが「内水型」の洪水です。これは排水ができずに水があふれて冠水し、水なかなか引かないという状況です。2011年の秋から12年の初めにかけて、タイのバンコクで大規模な洪水がありましたが、これが典型的な内水型の洪水です。水があふれて滞留してかなか引かない。こういうタイプの洪水が世界的に増えています。

■「内水型」の洪水が増えている理由

内水型の洪水が増えている理由はいくつかあります。一つは人口が増えたこと。もう一つは、新興国に多いのですが、内陸部から沿岸部へと人の移動が起こっていることです。例えば、河口にある三角州を埋め立てて工業団地や住宅地を造成する。その結果、それまで水はけができていたのに、水はけが悪くなって洪水が起きてしまう。このような理由で内水型の洪水が増えているわけです。近代化・都市化の結果とも言えるでしょう。

今回のわが国の洪水は台風によるものですが、台風は雨、風を伴うことが多く、洪水を引き起こす原因となります。台風はだいたい6月から11月の間に、フィリピン沖や日本の南の海上で発生し、その数は年間で約30個ほどになります。そのうちの半分近く10個以上が日本の沿海にやってきます。

一方、フィリピン沖で発生し、フィリピン、台湾を経て、中国本土向かう台風も約半分あります。古来、中国では「治水」と言って水を治めることは、各王朝にとって内政の一大事でした。いまの中国政府も洪水対策に力を入れていますが、それでも洪水が発生しているというのが実態です。中国では内陸部から沿岸部に急速に人が移動したため、洪水対策が追い付いていないのです。

日本も台風のリスクは高いですが、実は中国も高い。フィリピン、台湾も非常に高いリスクにさらされています。台風の進路は普通は南寄りの進路をとったとしても、中国の広州あたりが最も南なのですが、たまにそれてベトナムのあたりに向かうことがあります。そうするとあまり台風に慣れていないので、小さな台風でも大きな影響が出ることもあります。

このように東アジア・東南アジアでは、自然災害とくに洪水が増えているということを認識していただきたいと思います。

■その土地の履歴を調べることが大切

では、台風などへの備えはどうすればいいのでしょうか。台風は地震と違ってある程度進路を予測できるので、対策が採りやすいとも言えます。ただし、予測がしやすいからと言って準備を怠ると、非常に大きな被害が出てしまいます。地震や新興感染症に対してはBCP(事業継続計画)を策定している企業は多いのですが、台風を想定したBCP策定している企業は多くありません。

ですから、対応策としては事前にBCPを策定し、台風の接近は予報で分かるので、人、設備、取引先の順に安全策を講じ、台風が去った後はBCPに沿って動くことが基本となります。

工業団地に進出するときには、その土地の来歴を調べることも大切です。バンコクの大洪水は100年に一度と言われましたが、調べてみると20~30年に一度大洪水起こっていたのです。上流にダムができたため、もう大丈夫と思われていたのですが、大雨に耐えきれずダムが放水したことが、大洪水を招きました。この洪水では7つある主要な工業団地すべてが冠水しました。ある日本企業に聞いたところ「すべての団地に日本を代表する企業が進出していたので、安心していた」と。

現在、7つの工業団地は高さ2メートルの堤防で囲まれ、日本企業は盛り土もしています。ただ、工業団地は守られたとしても、周辺の幹線道路が冠水する状況は変わっておらず、洪水になれば物流が途絶えてしまうリスクは残ったままです。

台風などの自然災害の影響を軽減するために、企業が確認すべきポイントを表1にまとめてあるので、ぜひ活用していただきたいと思います。



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