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日本だけ世界の流れになぜ逆行?CO2大量排出、石炭火力が増え続けている理由

「2040年までにガソリン車販売中止」を発表するニコラ・ユロ仏エネルギー相(写真:ロイター/アフロ)

 イギリスとフランスが、2040年までにガソリン車の販売を禁止すると発表しました。中国も同様の動きを見せており、自動車の勢力図は塗り替えられようとしています。

 その遠因になっているのが、2015(平成27)年に第21回気候変動枠組条約締約国会議で締結されたパリ協定です。同協定では、日本は温室効果ガスを2030年までに2013年度比で26%、2050年までに80%を削減する目標にしています。

 パリ協定に署名した国々のうち、フランスやイギリス、カナダは温室効果ガスを大幅に削減するため、CO2を大量に排出する石炭火力発電所の廃止を発表しました。また、世界最大の温室効果ガス排出国ともいわれる中国でも石炭火力発電を見直す動きが強まっており、新増設の抑制や建て替え計画が白紙撤回されています。

 世界的に脱石炭火力の潮流が強まる中、日本はパリ協定に逆行するかのように石炭火力発電への依存度を強めています。

福島第一原発事故、電力小売自由化の安売り競争が原因

 日本国内で石炭火力発電の依存することになったのは、2011年の東日本大震災がきっかけでした。震災を起因として福島第一原子力発電所の事故により、脱原発の声が高まったのです。

 全国でも原発を動かせない状況下で、電力会社が着目したのが安価なエネルギー源とされていた石炭です。また、2016年に始まった電力小売全面自由化が開始されて、電力の安売り競争が加速したことも安い石炭を求める傾向が強くなりました。環境省環境評価課の担当者は、こう話します。

「最新鋭の技術で建設された石炭火力発電所でも、CO2排出量は天然ガス発電所と比べると約2倍にものぼります。そのため、石炭火力は時代遅れとされています。また、石炭火力発電所は、ほかの発電所と比べても建設コストが高いのも特徴です」

 それでも日本の電力会社が石炭火力を選択する理由は、燃料コストが安い点が挙げられます。

「発電所を20~40年稼働させることを前提にすれば、石炭火力はほかの発電所よりも安価に発電できる計算になります。そうしたコスト面のメリットに加え、石油や天然ガスは大部分を輸入に頼っていますから、政情不安や価格変動といったリスクもあります。電力会社はそれらを考慮して、安定的に供給できる石炭を選択しているのです」(同)。

環境相は電力会社に「石炭火力発電所計画の再検討を」

 発電所を建設する際は、周囲の環境を悪化させないように事業者が事前に調査し、対策を講じることを環境評価法で義務付けています。当然ながら、石炭火力発電所はその対象です。

 現在、環境評価法に基づいて国内で準備書・評価書・工事中案件になっている石炭火力発電所は、7か所あります。また、その前段階でもある配慮書・方法書段階の石炭火力発電所も7か所あります。それだけの数が、石炭火力発電所として新たに稼働する可能性があるのです。

 今年8月、山本公一環境大臣(当時)は石炭火力発電所ラッシュ状態の電力会社に対して、石炭火力発電所計画を再検討するように促しました。

 電力会社を所管する経済産業省の世耕弘成大臣も電力会社にCO2削減に取り組むよう指示を出しましたが、それでも日本の電力業界では石炭火力が優勢である状況は変わっていません。

欧州の金融機関・機関投資家らは石炭火力プロジェクトから資金引き上げ

海外の石炭火力発電所。世界的には温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電所の増設が見直されている(写真:アフロ)

 電力業界のみならず、石炭火力への取り組みが遅れていることは資金面からも窺がえます。脱石炭火力を推進するヨーロッパ諸国では、金融機関・機関投資家が石炭火力プロジェクトから資金を引き揚げることを表明しました。一方、日本の金融機関・機関投資家は多額の投融資を続けています。

「海外では大手金融機関や機関投資家などが石炭火力から投融資を引き上げる、ダイベストメントと呼ばれる動きが強まっています。国際的には、石炭火力は時代遅れの発電方法という認識が広まっているのです。そうした認識は日本でも浸透してくることは間違いありません。座礁資産化するリスクを踏まえると、電力会社は石炭火力発電所に多額の建設費用を投じることは難しくなるでしょう。環境省は電力会社の経営方針に介入することはできませんが、20年後、30年後の未来を考えると、電力会社は脱石炭火力に舵を切らざるを得ないと考えています」(同)。

小規模火力発電所は環境評価法の対象外

 実は、環境評価法には抜け道があります。発電容量が11.25kWを下回る小規模石炭火力発電所は環境評価法の対象になっていないのです。これまで小規模火力発電所は自社工場や自社オフィスに電力を供給する、いわば自家発電装置としての役割がほとんどでした。

 ところが、電力小売完全自由化で売電が可能になりました。そうした状況の変化も伴い、小規模石炭火力発電の新設申請が相次いでいるのです。これらの動きは、CO2削減への取り組みを阻害する要因にもなっています。

 今般、電気がなければ生活は成り立ちません。誰もが電気の重要性を熟知しています。だからと言って、環境が悪化することを看過することもできません。私たち個人ができる取り組みとしてエネルギーを無駄遣いしないこと、つまり省エネへの取り組みがあります。

 電力と環境の折り合いをどうつけるのか? 環境省や電力業界だけに任せず、私たち一人ひとりも考えなければならない課題です。

 小川裕夫=フリーランスライター

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