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なぜ「ゆとり世代」は自己肯定を求めるか

■世代で決めつけることはできないが…

私は、世代論はあまり好きではない。

「ゆとり世代」などの言葉で一括りにしてしまうと、その中にあるさまざまな個性や多様性が見えなくなってしまうと感じる。

また、年齢で人の生き方や考え方が決まるとも思わない。現代においては、何歳になっても若々しい人たちもいるし、子どもでも、大人顔負けの知識やスキルを持っていることも多い。

世代だけで人を決めつけることはできない、ということを前提にしたうえで、最近気づいたことを以下に書きたい。もちろん、これは1つの「傾向」であって、みんながそうだとは限らない、ということをお断りしておく。

■「絶好調」という経験がない


“バブル世代”におなじみのディスコ、ジュリアナ東京。(AFLO=写真)

10代、20代の学生や若い社会人と話していて、「ああ、そうか」と気づいたことがあった。彼らは、生まれて以来日本が「調子がよかった」ことがない。バブルが崩壊して以来、経済が絶好調だった、という経験がない。

そのこともあって、日本の現状が否定的に語られることに対して、ある種の「拒否反応」のような心理を抱いている。日本の現状をやたらと否定する人のことを、論の当否は別として「クレーマー」のように感じている。このような「感性」を前提にしないといろいろなことが理解できないと気づいたのである。

考えてみれば、子どもの頃から「おまえはダメだ、よくない」と言われ続けたら、やる気をなくしてしまう。そんなことを言う大人に対して、「もういい加減にしてくれ」「聞き飽きた」という気持ちになるのは当然のことだろう。

日本の肯定から始めたいという気分が、10代、20代の若者の間にあるように思う。日本の問題点を指摘するよりも、何かもっと前向きで、建設的な提案を待望するという思いが強いようなのである。

私自身は1962年生まれで、子どもの頃、日本経済は高度成長が続いて基本的に元気だった。明日は今日よりもよくなる、という根拠のない自信が国中にあふれていた。

■建設的な批判さえも届かない時代

その頃、いわゆる「知識人」は、基本的に日本の現状を批判することが仕事だったように思う。また、日本という国自体にも、そのような批判を受け入れ、自らをさらに高めるための「薬」にするだけの余裕があった。外国に比べて日本がいかに遅れているか、というような論が歓迎されたのである。

時が流れ、日本についての論説も、異なる工夫が必要な状況になってきているように思う。たとえ日本の現状を批判するにしても、日本という国を基本的には肯定している、というメッセージが裏にないと、特に10代、20代には響かないという気がする。

もちろん、日本の現状をさらによいものにするために、批判的思考が必要なことは間違いない。諸外国との比較も冷静で客観的な評価のためには欠かせないだろうし、時には、厳しい言葉を使うこともやむをえないかもしれない。

それでも、批判の背後に、日本を肯定的にとらえる心情があるのだということをきちんと伝えないと、建設的な批判でさえもなかなか届かない時代になっているように思う。さまざまな機会に、10代、20代と対話を重ねてきた私の、1つの結論である。

結局、必要なのは挑戦するための心の「安全基地」だと思う。自己肯定感がなければ、成長もできない。まずはお互いの安全基地を確認することから始めることだろう。

(脳科学者 茂木 健一郎 写真=AFLO)

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