記事

東浩紀氏ツイートで話題 選挙の「棄権運動」は静かな革命か


【批評家の東浩紀氏(写真:共同通信社)】

 今回の突然の解散で“選択肢なき選択”を強いられる不条理に一石を投じる案を提示したのが、批評家の東浩紀氏だ。「解散へ」の一報が流れた9月17日、東氏はツイッターにこう投稿した。

〈総選挙になったら棄権だな。今回は堂々と棄権を訴えよう。バカげすぎている〉

 政治への怒りを「棄権」で表現するという考え方だ。これに対しネット上では「民主主義の自殺だ」「厭世的過ぎる」という非難もあがったが、東氏は“炎上”を歯牙にもかけない。

〈この局面においては、棄権すること、つまり「おまえらの政治ゲームにはのらないよ」と意志を表示することこそ重要だ〉
〈論点なし。必然性なし。いまだと勝てるからやる。それだけ。独裁国家の信任投票のようだ〉

 東氏に改めて取材を申し込んだところ、「(ツイートしたこと以外に)あまり話す内容はありません」とするのみだったが、“暴論”に見える同氏の提案にうなずきたくなる有権者もいるのではないか。

 海外ではすでに似たような先例がある。5月に行なわれたフランス大統領選ではエマニュエル・マクロン氏が、極右の「国民戦線」マリーヌ・ルペン氏を大差で破ったが、白票・無効票が11.5%もあり、棄権と合計してみると有権者の実に3分の1が「選択肢なし」に投じていたことになる。

 これは移民を中心とする貧困層の間で白票を投じる運動が広がって起きた現象とされる。「反ルペン」を理由にエリートのマクロンに投じれば、むしろ現体制が維持され差別が残る。“騙されてなるものか”という強い不信感が根底にあったと指摘されているのだ。

◆〈棄権〉こそ〈危険〉のサイン

 東氏の提案は、見方によってはさらに過激なものだ。白票でも、票を投じてしまえば選挙を正当に成立させるだけ。政権維持に利用されるぐらいなら、投票そのものを拒否して選挙の正当性の根拠となる「投票率」を引き下げてやろうという、強烈な意思表示に映る。関西大学東京センター長の竹内洋・名誉教授(社会学)は、東氏の「棄権」の意図を汲み取って解説する。

「今回の安倍首相の乱暴な解散戦略に対して、本来“禁じ手”である棄権を意図的に呼びかけるという手法はありうるかもしれない。極論だが、仮に棄権が80%や90%に上れば政権にノーを突きつける“静かな革命”でしょう。政府・与党にとってみれば、〈棄権〉こそ〈危険〉のサインになる」

「棄権」が80%であれば投票率は20%になる。これまで、投票率は低いほど組織票のある自公に有利とされてきた。それが逆に“低すぎる”状態を作り出せば、与党への(野党にも)かつてなく強烈な「NO」になるという指摘だ。

 そもそも、自・公は衆院の議席の7割弱を占めているが、大勝した前回でさえ両党の得票(比例)は有権者全体の25%弱に過ぎない。“棄権運動”が効果を発揮すれば、その実態も炙り出されることになる。

「棄権が充分集まらなければ、注目されることもなく、安倍首相のダメージにもつながらない」

 そう竹内氏は棄権運動のリスクも指摘した。

 東氏はツイッターで、〈他人に棄権しろというつもりはない。ただ、棄権がオプションだと訴えたい〉とも綴った。この“静かな革命”の成否は「有権者が東さんほどに腹を括って“怒り”を表現できるか次第」(竹内氏)だという。

 棄権の数が、危険水域まで達することはあるのか。

※週刊ポスト2017年10月6日号

あわせて読みたい

「東浩紀」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    よしのり氏「自民の勝利は当然」

    小林よしのり

  2. 2

    政治力失った小池氏 出処進退は

    おときた駿(東京都議会議員/北区選出)

  3. 3

    「小池の変」失敗の被害者は国民

    郷原信郎

  4. 4

    立憲民主は戦後最弱の野党第一党

    木走正水(きばしりまさみず)

  5. 5

    維新議員 相手陣営のデマに怒り

    足立康史

  6. 6

    若者は現実政党しか信じなかった

    門田隆将

  7. 7

    保育士離職の原因は給与ではない

    石水智尚

  8. 8

    橋下氏 希望敗北でも「大功績」

    橋下徹

  9. 9

    立憲の鍵を握る改憲派・枝野代表

    篠田 英朗

  10. 10

    時代遅れなアパレル企業の悲惨さ

    Chikirin

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。