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外国キャリア記事の価値 - 増沢隆太(人事コンサルタント)

インターネット上で「面接の受け方」や「履歴書の書き方」のような記事をよく見かけます。つまり人気があって、関心が高いから頻繁に掲載されるのでしょう。ところでそうした記事の中にけっこうな割合で翻訳記事があるのはお気づきでしょうか?外国、特にアメリカのコラムを訳したもので、転職が普通なアメリカではそうしたノウハウや事例も多いのだといえます。ただし、「私たちの国では」とか「外国(アメリカ)では」というやつには要注意です。

■外国記事に価値はあるか?

自分が書くコラムでもそうですが、キャリアのことで「唯一絶対、これしかない正解」など存在しません。立場や見方、経済状況、そして国柄も違えば判断や価値は大きく変わります。若い人にとって転職などフツーで、「くだらない職場に一日でも長くいると損をする」というのは一理あると思います。実際転職活動で次の場を得ることも十分可能でしょう。

しかしこれが40代や50代ではどうでしょう?転職したばかりであっても、「次」などそうそう見つかる人はいません。そこにしがみつくしか選択肢がないという人も珍しくありません。景気回復、アベノミクス効果といわれても、その果実がトリクルしてダウンしていない人は山のようにいると感じます。

海外との違いで大きいのは法律の差です。外国と日本では労働規制が異なりますから、何より解雇規制という正社員をガッチリ守ってくれる恩典は日本の大企業正社員だけのもの。そもそもアメリカにおいては、日本でいう正社員という終身雇用の存在はないのではないでしょうか。

その代わり、アメリカで職を変わることは日本に比べればずっと容易です。日本の労働基準法の存在なしに、キャリア問題を語っても全く意味はありません。外国記事を読む際、それが日本で通用するものかどうか、まずは法律面で判断可能になります。

■外国記事から得られるもの

では外国記事には意味がないかといえば、そうではありません。先ほど指摘したような「唯一無二の正解」と鵜呑みにせず、そうした判断や行動基準のコンセプトを理解するのなら、転職の歴史が長い国の事情は参考になるでしょう。

「履歴書のアピールの仕方」は日本では無意味です。これは英語のResumeが書式自由であるがゆえ、大いに個性を発揮できるフォーマットなのに対し、日本ではJIS様式のような定形履歴書であり、個性を発揮するのは職務経歴書の方です。この違いも分かっていなければ、履歴書を個性的にいじるという、かなりリスキーなことになります。

ちなみに採用の場面で、JIS様式の履歴書出なければならない決まりはありません。実際自由書式で応募する人はいます。ただ、採用される率を考えると、統計データはありませんが、無難に定形履歴書を使う人の方が有利だろうと思います。法定文書である履歴書は虚偽記載が許されませんので、そうした定型を守る姿勢が評価されるというより、オフィシャルな手続き場面でそうして定型を嫌うようなタイプの人を好まない組織が多いとも考えられるからです。

つまり海外のコラムで得るものはノウハウのような直接的解答ではなく、あくまで考え方のフレームワークやコンセプトだ考えれば良いのです。

■面接で求められるのは?

いまだに限りなく多くの人が誤解していることに、面接における正解の存在があります。面接は口頭試験だ、面接官の質問に正解を答えた人が採用されるのだという信仰に近い考え方の人がいます。面接も採用する人材レベルによって中身はだいぶ違うのですが、マニュアルレイバー、いわゆるマックジョブと呼ばれるような、指示通りの作業をする人と、自ら判断して行動を求められるマネジメンと人材では当然中身も違います。

後者であるマネジメント人材であれば、問われることは正解かどうかではなく判断基準や思考経路になります。よくある逸話の転職面接で「何をしてきたか?」という質問に「部長をしてきた」と答える都市伝説があります。思考回路を開示して説明できない時点で、こんな人が本当にいれば当然マネジメントとして雇われる可能性はゼロです。

新卒学生は実績の代わりに、「ウソつき大会」と称して、やってもいないボランティアやらサークル副幹部経験、アルバイトの特盛りなどをすると言われますが、全部人事にはバレています。そんな盛った回答に何一つ価値はなく、なぜそのような行動をしたか、判断基準などで採否は決められています。学生時代の武勇伝のネタなどどうでもよく、自らの行動様式を他人にわかるようコミュニケーションできるかどうかこそが大事なのです。

■外国記事を活用するには

面接ノウハウは「考え方」を学ぶのなら価値がありますが「こう答えて採用された」という事例研究にはほぼ意味はないといえるでしょう。まして外国事例は、その国の人でない人間が外国で実践してもまず機能するとは思えません。日本の事例ですら、人も学歴も、社会経験も違う人の答えに意味はありません。大事なのは考え方に尽きるのです。

私自身は特にアメリカの面接技法やレジュメ攻略本にお世話になりました。意味がないといったくせに何だと思うかも知れませんが、外資系企業が長かったので、外国人マネジメントとの面接においては、外国のノウハウはけっこう活用できました。

外国人マネジメントと相対する時はいかに自分を大きくアピールするかとか、ビジュアル化して業績を説明するなどは徹底的にやり、そこそこ面接を通過して採用オファーもいただけました。しかし履歴書は日本の人事部が見分しますので、ここはきっちり没個性なJIS履歴書を手書きで用意しました。

要は今、自分に求められているもの、ニーズを判断してその行動に役立つ情報はいただき、そうでないものは鵜呑みにしなければ良いだけです。自分の頭で考えて判断できないのであれば、いくらノウハウコラムを読んでも意味ありません。外国だからダメなのではなく、そうした情報の意味を考えないことこそ、一番ダメなことだといえるでしょう。

【参考記事】
■アピールの誤解 土下座で交際してくれることはありません2017
http://shachosan.rm-london.com/?eid=850527
■そんなにうらやましくない????社長公募!新卒年収650万!
http://shachosan.rm-london.com/?eid=850251
■内定辞退の作法(増沢隆太 人事コンサルタント)
http://sharescafe.net/46036751-20150826.html
■就活学生は親の言うことを聞くべきなのか(増沢隆太 人事コンサルタント)
http://sharescafe.net/51751714-20170724.html
■忍者の人手不足問題と獣医師(増沢隆太 人事コンサルタント)
http://sharescafe.net/51473596-20170612.html

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