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メディアに求められるものは表現の自由を守ることではない

9月19日頃、森友学園関連の取材や著書『日本会議の研究』などで知られる、ノンフィクション作家、菅野完氏のツイッターアカウントが凍結された。(*1)

このことについて、一部のサヨク界隈では「森友問題の隠蔽のために、ツイッター社がアカウントを凍結したのではないか」などの陰謀論が飛び交っている。

さて、ツイッター社による、ろくに意味の分からないツイッターアカウントの凍結は、何も菅野氏の例が初めてではない。最近では蚊に対して「死ね!」とツイートしたアカウントが凍結されたことが話題になっていた(*2)し、僕自身が経験した例では、当時放送中だったアニメ「ユリ熊嵐」の公式アカウントが、なぜか凍結されたということがあった。(*3)

企業による公式アカウントだから、凍結されるような問題のある発言が含まれるとは思えないのだが、なぜだろうか。
また、過去の東京都知事選で型破りの政見放送をしたことでも知られる、活動家の外山恒一氏なども、ツイッターアカウントを凍結された。外山氏はこれ幸いと、ツイッター社に街宣車で押しかけて抗議をした所、凍結が解除されたようである。(*4)

この他にも、僕がフォローしている個人がどんな理由かわからないが、アカウント凍結されたことも幾度かある。更に言えば、自分だって他人事ではない。僕自身も嫌がらせを受けることもあり、いつ理由もわからないまま凍結されることがあってもおかしくないとは思っている。 しかし、その一方で、検索妨害になるようなBOT(自動発信)アカウントを通報しても、なぜか「ルールに違反しないと判断しました」という返答があるのがせいぜいであり、ずいぶん不公平だとは感じる。

さて、こうしたツイッター社による凍結に対して「表現の自由を守れ!」と主張して、批判する人達がいる。しかしそれは、僕はおかしいと思うのだ。

表現の自由とは、基本的には日本国憲法第二十一条を指して言う。
第二十一条
1,集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2,検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
以上が表現の自由である。

では、ツイッター社におけるアカウント凍結は、これを侵害するものだろうか?
僕はそうは思わない。

そもそも、憲法とは国に対する命令であり、企業がこの憲法の条文をもって、それを守る責務があるということはない。では、企業は何を規範とするかだが、それは各種の法律である。そして法律の中に「会員の発言の自由を守らなければならない。アカウントの凍結をしてはならない」という内容のものはない。

ツイッターはあくまでも、企業が提供するプラットフォーム上における、サービスにすぎない。たとえツイッターが自分のプラットフォーム内で、自分の会員のアカウントを凍結し、発言をさせなくしたとしても、それは決して表現の自由を奪われたなどという話ではない。

その凍結された人は、別のサービスでの表現は認められているのだから移ればいいし、もし、そうしたサービスの大半でアカウントを凍結されたといしても、最悪自分のサーバーを立てて表現をすればいい。最近はテクノドンじゃなくてフォレスドンじゃなくて、マストドンなんていう個人や企業がサーバーを立てて連結することで実現されているSNSもあるのだから、それらを利用すればいい。

それは例えば一橋大学での百田尚樹氏の講演会が中止になったという問題でも同じで、主催者側が講演会を中止したり、また講演会を行うことを他者が批判し、主催者に中止を求めることは、他の主催者や場所での講演の自由が認められている限り、決して表現の自由をないがしろにする行為ではないと言える。

もちろん、国が「この個人のインターネットや公の場での表現を全て禁じる」とか「内容にふさわしくないものがあれば、表現を停止させる」などといえば、表現の自由に反するが、少なくとも表現の自由を守る義務があるのは国や行政であって、表現の場を提供する会社や個人ではないのである。

とはいえ、ツイッター社の姿勢に問題が無いとは全く思わない。
なぜなら、ツイッター社によるアカウントの凍結は、あまりに「理由が不明」なものが多すぎるからである。菅野氏の件も、先にも言ったようにそうした「意味不明な凍結」の1つであるといえる。

もちろん「あいつはこういう言動をしていたから、凍結されても当たり前ではないか」と論じることはできる。しかし、そうであってもいずれにしても憶測の範疇にすぎず、凍結の理由は明らかにされていないことに変わりはないのである。

もし、このことを批判するとすれば、それは「公平性が明らかではない」という点を批判するべきではないだろうか?

サービスを凍結する理由が明らかでない以上「誰かの顔色を伺って、このアカウントを停止したのではないか」と疑うことは決して批判できないし、理由が明らかではないから、それが100%間違いであるとも言えない。結局、誰にもなぜかがわからないから、陰謀論が飛び交う結果となるのである。

ツイッター社に、アカウントを凍結するなとは言わないが、せめて凍結するならその根拠を明らかにするべきではないかと言いたい。

そして、菅野氏の件に限らず、ツイッター社によるアカウントの凍結を批判する際には、表現の自由という安直かつ、的はずれな表現を使わず、ツイッター社に対しては、凍結理由の開示により、公平な判断がされていることをハッキリと透明化することを求めるべきではないかと僕は考える。

*1:解除求め署名活動も 菅野完氏ツイッター“永久凍結”のなぜ(日刊ゲンダイDIGITAL)https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/213923
*2:何カ所も刺されて蚊に「死ね!」とツイート……アカウント凍結(BBCニュース)http://www.bbc.com/japanese/41105014
*3:TVアニメ「ユリ熊嵐」公式Twitterアカウントが凍結(ねとらぼ)http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1501/31/news017.html
*4:アカウントを凍結された外山恒一氏がツイッター社に直接抗議に行ったら、あっさりと解除された顛末(週刊SPA!)https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170706-01358243-sspa-soci

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