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「産後うつ」は「ホルモンのせい」ではない【「産後うつ」チェックリスト付】 高齢出産の増加で「産後うつ」リスクは高まっている - 熊田 梨恵

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 自分のしている育児が正しいかどうか解らない、待望の子どもなのに可愛いと思えない、眠れない――。

「子どもに何かあってはいけない」という母親としての責任感と義務感でいっぱいになり、精神的に追い詰められていく「産後うつ」。2015年、筆者も産後2カ月で産後うつを経験した。

 産後うつは約10人に1人が経験すると言われている。出産後の母親が育児への不安や重圧から罹る産後うつを予防するため、厚生労働省は2017年度から健診費用の助成を開始したが、一般的な認知度はいまだ低い。

 なぜ今、「産後うつ」が注目されているのか。産後うつになる原因や予防する方法、社会的な支援体制はどのようになっているのか。産前産後の女性のメンタルヘルスの専門医で、『これからはじめる周産期メンタルヘルス 産後うつかな?と思ったら』の著書がある広尾レディース院長の宗田聡氏に聞いた。

「産後の女性は幸せいっぱい」は間違い


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――そもそも産後うつとは何でしょうか?

宗田 産後、ひどく憂鬱な気分になり、何に対しても興味や喜びを感じないような状態が2週間以上続く状態を「産後うつ」と呼びます。産後2~3週から6カ月ぐらいの頃に発症することが多く、一般のうつに比べて不安や焦燥感が強く、様々な症状が出て重症化しやすい傾向があります。

 その症状は様々な形で現れます。赤ちゃんを可愛いと思えなくて、家事や育児をする気が全く起きなくなったり、赤ちゃんの母乳の飲みが悪いと過剰に心配したりします。母親失格だと思って自分を責めたり、悲観的にしか物事を捉えられなくなり、ひどくなると自殺してしまいたいとまで追い詰められる方もいます。眠れないとか、食事がとれなくなったりするのもそうです。国際的なスクリーニング法として「エジンバラ産後うつ病自己評価票」が使われています。

 もともと抑うつや不安の症状は、女性の方が男性より2倍も出やすい上、産後の女性は一般女性と比べて出現率が10~15%と一般女性に比べて高い。「産後の女性はみんな、赤ちゃんが生まれて幸せいっぱい」というのは世間の間違ったイメージです。

――どういう人が産後うつになりやすいのでしょうか。

宗田 もともと真面目で几帳面だったり、うつになりやすい気質の人はリスクが高いです。出産は女性の心身に大きな影響を与えますし、生活環境も変化するのでその負担に耐え切れずに発症することが多い。うつ病や摂食障害などの既往歴があるとハイリスクです。

 また緊急搬送や予定外の帝王切開など、状況を理解しきれないまま出産が進むと、出産そのものを受け入れられなかったり、何が悪かったんだろうと自分を責めたりすることがあります。赤ちゃんに病気や障害があった場合もそうです。望まない妊娠だったり、復職に関するトラブルがあることも要因になります。

原因は「ホルモンバランスの乱れ」ではない

――産後はホルモンバランスが乱れて感情的になりやすいと言われますが、それも原因ですか?

宗田 産後うつの原因は「ホルモンバランスの乱れ」とよく言われますが、違うようです。出産直後に現れる激しい感情の浮き沈みは「マタニティーブルーズ」と言われ、これはホルモンの急激な変化が原因で、ほぼ2週間以内に収まります。

 産後うつは本人の抱えているメンタルの既往のほか、人間関係や住環境の変化など環境的な要因によって引き起こされます。これらは本人が元気な時には自分で対処したりバランスをとったりできるので表面化しません。しかし、出産は10カ月かけて心身に変化を起こし、産後は外傷による痛みが大きく、人によっては痔や恥骨の痛み、骨盤の違和感などもあり、最低でも1カ月は安静が必要です。授乳もあり、家庭によっては上の子の世話や家事などで動かざるを得ず、負担が増えます。その結果、それまで余裕があった時にはできていたことができなくなり、上述の問題が表面化し、産後うつという形で現れてくるとも言えます。

 見方を変えれば、産後うつは夫や家族、周囲のサポートがあれば予防・軽減・改善できるものです。産後の母親が体に受けているダメージの大きさを皆が理解し、母親は少なくとも産後1カ月しっかり休む、動いても授乳程度にできるように環境を整えることが大事です。


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