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大相撲もプロ野球もケガ人続出は練習不足が原因<日本野球よ、それは間違っている!> - 広岡 達朗

 大相撲が大変なことになっている。

 3横綱の休場で始まった秋場所は、6日目の9月15日に大関・照ノ富士も左ひざの負傷で休場。3横綱2大関が休むのは、大正7年以来99年ぶりだという。これで幕内では、途中から出場した力士を含めて8人が休場するという異常事態である。

 2日目の11日に、NHKの大相撲中継で興味深い年表を見た。昭和40年代以降の力士の平均体重が、毎年大幅に増えているというのだ。この10年で、幕内平均体重が13.5kg増の163.5kgになった。特大のアンコ型力士が多いのが気になっていた私は「やっぱりな」と納得した。

 しかも最近の力士は「どうしてあんなことでケガをするのか」と首をかしげたくなることが多い。たとえば、この日の大関・高安も小結・玉鷲に押し出され、土俵際で踏ん張ったときに右太ももの肉離れ。

 平幕では宇良が貴景勝に突き倒されたときに踏ん張ろうとして、7月の名古屋場所で靭帯損傷していた右ひざを悪化させた。

巨体を支えきれない下半身

 相撲にケガはつきものだが、それにしてもひざや足首の包帯・テーピング姿が多い。添え木でも入れているのかと思えるようなひざの大きな包帯は、痛ましいのを通り越して見苦しい。

 横綱以下、ケガ人続出の大相撲を見て思うのは、太りすぎと稽古の問題である。

 長い間、一人横綱を務め、史上最高の優勝39回など数々の記録を残している白鵬の“金属疲労”は理解できるが、日本人横綱・稀勢の里が、土俵から転落したときの左上腕筋損傷と左足首痛で3場所連続休場したのには同情できない。

 30歳をすぎてやっと横綱になった稀勢の里は昇進後ますます太り、筋肉がたるんでいるように見える。名古屋場所の休場も、立ったまま土俵下に落ちて足首を痛めたのは、体重が重すぎるか下半身が弱すぎるからといわれても仕方がない。

 今場所、3日目から休場した弟弟子の高安も、玉鷲の突き押しに耐えようとして肉離れを起こすような下半身では、力士として恥ずかしいのではないか。

 この2人だけでなく、若い力士の巨体にも驚くばかりだ。情報によると、最近の力士は部屋のちゃんこより、外食で大量に焼肉を食べることが多いという。

 そういえば、小柄で幕下時代から異能力士として人気があった宇良も、十両から西前頭4枚目に昇進するにつれ、上位力士の圧力に負けないために体重を増やして太鼓腹になった。

力士はちゃんこより焼肉が好き?

 肉、魚、野菜がたっぷり入った相撲部屋のちゃんこは、消化と栄養バランスのよい伝統料理だ。しかし、外食で肉ばかりの偏った食事で太った力士が土俵で簡単に転んだり、前に落ちるのは当然だろう。

 相撲解説者の北の富士勝昭さんが九重部屋の親方のとき、横綱・千代の富士と弟弟子・北勝海(八角信芳、日本相撲協会理事長)が稽古の最後に行う「ぶつかり稽古」は当時、角界一厳しかった。北の富士さんは「いまの力士はぶつかり稽古が少ない。何回も転んではぶつかっていくのがいいのに、最後に形だけ転がすだけというのが多い」と嘆く。

 巨体のわりに下半身が弱く、ケガが多いもう一つの理由は、最近の力士が土俵で汗と土にまみれるより、機材による筋肉トレーニングを好むためではないかと、私は思う。

 なぜちゃんこがいいのか、なぜ筋トレより土俵の稽古が大事なのか、親方衆が弟子たちに分かりやすく教えるべきだ。

プロ野球も大相撲の異常事態に学べ

 親方でもない私が長々と相撲のことを書いたのは、ケガ人続出のプロ野球にも同じ傾向と問題があるからだ。

 巨人は9日、「沢村拓一投手の右肩故障は、2月のキャンプで球団トレーナーから受けた鍼治療の施術ミスの可能性がある」と発表した。

 沢村はその後故障が改善せず二軍生活を続けたが、私はそんなことより、沢村の不振は金太郎のように丸々と太った体にあると以前から指摘してきた。

 クローザーとしてもっとスピードを出すため筋トレでパワーをつけたかったのだろうが、太い首やプロレスラーのような分厚い胸は、微妙な感覚で投げる投手には害こそあれ益はない。

 焼肉もいい、筋トレもいい。しかし大事なのは、バランスである。

 力士も野球選手も、必要な力は本業の鍛錬で身につけ、バランスのよい食事で正しい生活習慣を守ることだ。

 ここでいうバランスは、“50:50”の意味ではない。食事は焼肉よりちゃんこ、稽古・練習は土俵やグラウンドが中心でなければならない。

 つまり焼肉や筋トレはあくまで補助的な手段であり、本末転倒しては進化ではなく退化につながる。相撲も野球もケガが多いのは、肥大化した上半身に下半身の強化がついていけないからではないか。

 現役時代、兄弟子・千代の富士の胸を借りて泥まみれになった八角理事長も、「ケガをするのは稽古が足りないということだ」と断言している。プロ野球だけでなく、スポーツ界全体が大相撲の異常事態に学ぶことは多い。

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