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【読書感想】名門校「武蔵」で教える 東大合格より大事なこと

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名門校「武蔵」で教える 東大合格より大事なこと (集英社新書)

名門校「武蔵」で教える 東大合格より大事なこと (集英社新書)

Kindle版もあります。

名門校「武蔵」で教える東大合格より大事なこと (集英社新書)

名門校「武蔵」で教える東大合格より大事なこと (集英社新書)

内容(「BOOK」データベースより)
校内の一等地にやぎがいる。英語の授業で図画工作。おまけに、きのこを見つけたら成績が上がる!?時代が急速に変わりゆく中、恐ろしいほどのマイペースさで独特の教育哲学を守り続ける名門進学校がある。それが本書の舞台、私立武蔵中学高等学校だ。時に理解不能と評されることもある武蔵の教育が目指しているものとはいったい何なのか…。斬新な視点から数々の学校や塾を論じてきた気鋭の教育ジャーナリストが「学校とは何か?」「教育とは何か?」に迫る、笑撃の「学校ルポルタージュ」。

 この新書、面白そうなんだけど、僕も息子たちも、こんな名門校には縁がなさそうだし、読んでもあんまり意味なさそうだよな……
 そう思っていたのですけど、読み始めてみると、面白くて、一気読みしてしまいました。
 日本には、こんな学校があるのか!
 僕ももし生まれ変わって、もうちょっとマシな頭があれば、ここに通ってみたかった。

 読みながら、この本のことを思い出していました。

fujipon.hatenadiary.com

 こちらは大学、「武蔵」は中学校・高校だけれど、どちらも自由と自主性を重んじた環境で、天才たちが過ごしている場所なんですよね。

 武蔵にはやぎがいる。ペットとしてうさぎを飼うのとは全然違う。「飼育している」というのもちょっと違う。身近なところに家畜として置いて、よく見るためにいるのだ。やぎを育てることが目的ではない。生徒を育てるためにやぎがいる。
 武蔵には約30人の「やぎのひとたち」がいる。雨の日も、雪の日も、休みの日にもやぎにエサをやり糞の掃除をする生徒たちだ。2011年に高1の選択必修授業「総合講座」のテーマの一つとしてに二頭のやぎを迎え入れ「やぎの研究」が始まった。いまでは学年にかかわらず関心のある生徒が参加している。
「やぎのひとたち」を束ねているのが、田中洋一教諭である。当然理科の教員だと思うだろう。残念。数学の教員だ。
「ところがどうしてもね、やぎはかわいい。かわいいもんだから、ついペットを飼っているような気分になってしまう。でもそうすると、やぎそのものがクローズアップされていって、雨の日も雪の日も、蚊がぶんぶん飛んでいる中でもやぎの世話をする生徒に対するねぎらいの視点がまったくなくなっちゃうんですよ。もちろん私に対するねぎらいも(笑)。不思議なんですよ」

 著者は、武蔵でやぎが飼われるようになったきっかけについても、詳しく話を聞いています。
 これがまた、どこまで本当なのか、よくわからないような話で。

 僕が驚いたのは、生徒たちが、このやぎに対して、どのように接しているか、でした。
 自然や生命に直に触れることの大切さ、とかいうような美談ではなく、なんとなく「やぎっていいよな~」と癒されていたり、やぎの「研究」をしてみたり。

 やぎの前を通りかかると、「やぎっていいよな」なんて言いながら生徒たちがよく掃除をしている。しかしただエサをやって掃除するのが「やぎの研究」ではない。
 数名の学生横断グループで研究テーマを決めて、観察や調査を行う。中学生の「やぎのひとたち」に聞いた。
「僕は反芻と食事の関係を調べています。エサの量を決めて、一日中観察して反芻の時間を計ります。食べる量が増えると反芻の時間も増えるんですけど、やぎの個体によっても反芻の時間が違ったり、ちょっとした食べていないのにずっと反芻していたり、日によって違ったり……」
 それをどうまとめるかはこれからの課題だ。
「僕は糞を捨ててしまうのはもったいないと思って、やぎの糞からつくった堆肥を混ぜた土と、普通の腐葉土を混ぜた土と、化学肥料を混ぜた土とで野菜の生育を比較しました。結果は化学肥料の圧勝でした……」
 あれ?
「ちょっと計画が甘くて……。堆肥のいいところは土の中にいる生物を多くするとか、空気がよく通るようになるとか、そういう効果なので、栄養価で比較するべきではなかったなと。いままた違う研究を考えています」
 研究テーマは生徒たちが自由に決める。田中さんは一切口を出さない。

 数学の教育によるやぎの研究、社会の教員によるきのこの話、英語は要らない英語劇、国語の教員による対馬研究、数学の教員による震災対策……まさしくカオスである。ほかにも国語教員による打楽器の授業、数学教員による酪農体験、英語教員による稲作実習、社会科教員によるお菓子づくりなどの正規の授業がある。

 武蔵というのは、効率重視、大学入試最優先で、結果を詰め込む授業ではなく、学ぶことが好きな先生たちが、生徒たちに「ちゃんとした研究をやるためのプロセス」を教える学校です。

 テーマは生徒たちが自分で決めて、それを証明するための方法も自分で考える。

 テーマの中には、先行研究があって答えがすでに出ているものもあるし、望んでいた結果が出ないこともある。

 その試行錯誤の過程を体験させることが、武蔵の「教育」なのです。

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