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2020Tokyoに向け民放は

 民放連ネットデジタル研究会。民放のキー局・ローカル局が参加し、ネット・デジタル対応を練る場です。ぼくが座長を務め、これまで6年間続けてきました。

 6年目の報告をまとめるに当たり巻頭言をしたためたので、貼っておきます。放送局の幹部向けのものなので、マイルドにしてあります。
――――――――――――――――
 現在、総務省情報通信審議会に「放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会」が置かれ、放送・ネット同時送信が焦点になっている。通信・放送融合の政策論が始まった1992年の郵政省・電気通信審議会以来25年を経て、放送とネットとの関わりが成熟したことを示す。

 私が座長を務める知財本部にて、さきごろ映画の振興をテーマとする会議が開かれ、吉本興業がNetflixと制作した「火花」が190か国に配信され、その後NHK地上波でオンエアされていることが話題となった。

 米IT企業の資金で作った「映画」級のコンテンツが「ネット」配信され、それが「放送」番組となる。従来のビジネスモデルも、通信・放送の前後関係も、制作手法も、全てが既に覆っている。場面は切り替わった。

 昨年のレポートの巻頭で私は、放送局が自らのビジョンに立って多様な路線を取り始めたと総括した。民放公式テレビポータル「TVer」のスタート、ソーシャルサービスとの連動、ライブ配信、プラットフォームへのコンテンツ提供、Vlowマルチメディア放送や「モアテレビ」の始動など、各社それぞれの意思により、さまざまな戦略を繰り出している。

 参加各局のレポートを読み、「「テレビからITへ」の展開、「放送からITへ」の攻めとも言えよう。放送局がITを使いこなす意思が明確となってきた。」と結論づけた。

 今年の報告ではそうした多様な路線は定着し、ビジネスが本番に向かったことが伺える。ネット配信やそのビジネスモデルに関する各局の取組がちりばめられている。そのリアリティーを確認していただきたい。

 それに先立ち、菊池尚人氏がこの20年のメディア変遷を踏まえ、20年後のメディア展望を描いている。そして内山隆氏は放送のネット配信が欧米に遅れている状況をにらみ、それらの動向・展望と政策論議を整理している。出色の寄稿、ぜひお読みいただきたい。

 さて、昨年、私は2点、留意点を指摘した。

 一点は「テレビ」を問い直す局面だということ。番組がスマホやタブレットでも、世界どのエリアでも視聴できるようになり、いわゆる「オールIP」も視野に入ってくるということだ。

 もう一点はスマートの次の世界、「脱スマート」とでも呼ぶべき段階が現れたことだ。IoTやAIに代表される状況だ。

 この一年で、早くもこれらは俄然、本格的な段階に突入した。AbemaTVはじめスマホ向け映像サービスが普及し、若い世代が急速に映像も「スマホファースト」に移りつつある。そして政府はAI/IoTの開発を成長戦略の重要課題と位置づけ、第4次産業革命・Society5.0と称して、それら新技術の普及に力を入れている。

 これらの大波が放送界を襲うのは、25年前の通信・放送融合よりも高速であろう。デジタル基盤が既に整っているのだから。

 今回のプロジェクトでは、6回にわたりゲストと討論した。これまた刺激的だった。SpotifyやFreewheelのかたにお越しいただき、海外の音楽・映像配信のヤバさを再認識すると同時に、radikoやdTVの状況から、ネットとの連動が定着したことを確認した。AbemaTVには、融合ビジネスで放送局の役割が不可欠であることを指摘してもらった。

 私がショックを受けたのは2点。まず、LINE LIVEが「若いユーザは映像をタテ画面でしか見ない」と報告したことだ。スマホファーストにシフトする中で、映像はヨコからタテにシフトするのか。すると、3:4だの9:16だのヨコ文化でやってきたテレビの映像はどう作ればよいのか。これは4Kや8Kへの対応をしのぐ大きなテーマになりはしまいか。

 もう一点は、米国で「オールIP」の動きが現実に始まったという報告だ。放送のシステムがまるごとネットのクラウドに移行することを意味する。25年前、「いずれそうなるかもしれない」だった通信・放送融合が本番を迎え、次の「いずれそうなるかもしれない」がもう目前に迫ってきた、ということだ。

 五輪中継のgorin.jpにも報告をいただいた。次の五輪、2020Tokyoでは、これらが全て本格化する。スマホファーストや4K8Kは無論、オールIP、VR・AR、IoT・AI、それら新技術が放送との関わりに決着をつけ、日本が世界のショウケースとなるはずだ。

 号砲は鳴りっぱなしである。備えはよいだろうか。

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