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「暫定的な北朝鮮との共存がむしろ北朝鮮の崩壊を早める」姜尚中・東大名誉教授が提案する「戦争回避」の道筋

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北朝鮮から発射されたミサイルが日本の上空を通過し、2回目のJアラートが鳴り響いた9月15日の午後、東京・有楽町の外国特派員協会で「北朝鮮との共存は可能か」と題された講演会が開かれた。

スピーカーは、政治学者の姜尚中・東京大学名誉教授。挑発的なミサイル発射と核実験を繰り返す北朝鮮に対して、国際社会は圧力を強めているが、姜氏は戦争による惨劇を回避するためには「北朝鮮との経済的な繋がりを深めることが重要だ」と語った。どのような論理で、姜氏は「戦争よりも対話を」と唱えているのか。海外メディアの記者に向けた姜氏のスピーチを紹介する。

撮影:亀松太郎

「北の核とミサイル」は20年で飛躍的に向上

(今回発射された北朝鮮のミサイルについて)いろいろな説があるので、どれが確定的かわかりませんが、大きな問題は核弾頭のミニチュア化と大気圏の再突入です。このテクノロジーを確実なものにするのが、北朝鮮の今の二つの課題だと思います。

私自身はエキスパートではないので、断言はできませんけれども、たぶん1年以内に実験が完了して、実戦配備になる可能性があると思います。

実は、2020年の東京オリンピックのときは、朝鮮戦争の70周年になるんですね。私は、北朝鮮がそれに向けて、アメリカと対等の交渉ができるような能力をつけたいということだと思います。

今日のお話ですが、まず、危機の現状をどう見るか。これは、1994年の最初の核危機のときよりも、もっと危機的な状況だと思います。なぜかというと、北朝鮮の核とミサイルの能力は、約20年前に比べると飛躍的に向上しているからです。

みなさんもご存知の通り、当時のペリー米国防長官やペンタゴン(米国防総省)は、寧辺(ヨンビョン)の核施設をステルス(戦闘機)で爆撃した場合、どういうリアクションが北朝鮮から出てくるかについて、いくつかのシュミレーションをしたと思います。当時、最悪の場合は100万人近く死ぬのではないかというシナリオでした。つまり、北朝鮮がどう出るか、よく読めなかったということです。

アメリカは20年たった今も、北朝鮮という国の軍事力について、正確な情報をまだはっきりと持っていないんじゃないでしょうか。

北朝鮮は「中国の影響力」を相対化したい

もう一つ、冷戦が崩壊して、北朝鮮の後ろ盾になるロシアが、今では経済力で韓国よりも劣っている。

今では昔話ですが、金日成(キム・イルソン)の基本的な戦略は、中ソ対立をうまく泳ぐということだったと思います。

あまりご存知でない人もいるかもしれませんが、金日成の息子である金正日(キム・ジョンイル)はロシア語を使っていました。

1937年の旧ソビエト時代、スターリンによって、(極東ロシアの)沿海州からかなりの数の人々(高麗人)が、中央アジアに連れてこられたという歴史的背景があります。彼らが建国まもない北朝鮮のある種のアドバイザーになりました。

つまり北朝鮮は、メンタルな部分では、中国よりもロシアに対してシンパシーを持っているということです。

当時、高麗人が約300人のアドバイザリー・コミッティーを形成していました。したがって、ロシアは非常にシンパシーを持っているんですけども、いかんせん中国ほどの力がない。

そんな中で北朝鮮が考えていることは、中国の影響力を相対化したいということだと思います。

張成沢(チャン・ソンテク)という、金正恩(キム・ジョンウン)の義理の叔父にあたる人が処刑されたことは、ご存知の通りです。

現在の韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領のアドバイザーの一人である、文正仁(ムン・ジョンイン)という人は延世(えんせい)大学の名誉教授で、「張成沢と三日三晩、一生懸命話し合った」と私に話してくれました。

それによると、張成沢は「中国型の改革開放を進めていかないといけない。北朝鮮の最大のネックは経済である」と盛んに力説していたと、文さんは私に話してくれました。

彼らは「旧ソビエトのオルタネート(代替)は、実はアメリカである。米中の対立が北朝鮮にとっての生存条件になる」と考えているのではないかと思います。

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