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「安倍首相、10月総選挙を決意」―憲法改正に向け新たな道筋を模索― - 屋山太郎

 安倍首相は10月下旬に総選挙を行う決意を固めたようである。解散を決めた第1の要因は、総選挙によって憲法改正を発議できる両院の3分の2の議席を確保できる目途が立ったからだろう。現行でも自公合わせれば3分の2を確保しているが、改正の眼目は9条に「自衛のために自衛隊を置く」条項を入れることができるかどうかだ。公明党は「加憲」を原則として認めてきたが、「9条」には触れない頑なな姿勢を貫いている。首相は改正賛成の野党が出現し、新たな3分の2を形成し、念願の9条改正を達成することを模索していた。

 憲法改正について維新は道州制の導入を挙げていたが、橋下徹・前大阪市長は最近、明確に9条に言及している。次回、総選挙で橋下徹氏が出馬するかどうかで政界の勢力図は大きく変わってくる。公明党の勢力を上回る議席獲得は容易だろう。自・公連立が自・維連立になっては困るから、公明党が9条問題で譲歩してくる可能性もある。

 日本の野党は民主党時代に政権を獲ったが、3年3ヵ月で潰れた。これを含めて社会党、民主党、民進党がどうしても3分の1を超えられず、現実政党として国民に評価されなかったのは、常に共産党と結びついていたからだ。

 日本では社共共闘が当たり前、しかも3分の1を取って憲法改正を阻止すれば十分と考えていたから、政策論争が成り立たなかった。

 国民も与党の政策に「何でも反対」が野党の在り方だと錯覚してきた。ところが今、民進党を根底から動かしているのは共産党との関係がこのままでいいのかという深い疑問である。

 民進党代表選挙に当たって前原誠司氏は「共産党との絶縁」を打ち出し勝利したが、「共闘派」は約4割を占めた。前原執行部には選対委員長や国対委員長を“共闘派”が占める。前原氏自身は共産党と“縁切り”する覚悟を決めているが、国会運営や選挙では相変わらずの共闘関係ができる可能性が高い。この事態に失望した勢力が、民進党からの離脱を図っている。既に離党した細野豪志氏やその周辺に集まっている松沢成文氏らの胸中にあるのは“保守系新党”だろう。

 小池百合子東京都知事の側近の若狭勝衆院議員が政治塾「輝照塾」を開塾した。小池ブームを利用して東京圏から20~30議席獲得しようとの思惑だ。思惑通りにいけば、自民党はその分、減る勘定だが、安倍首相は改憲勢力の数に変動はないとみているようだ。

 しかし若狭氏の改憲テーマは「参院を廃止して一院制にする」というもの。参院不要論は昔から政界に堆積しているが、参院の3分の2が「不要」と発議するわけがない。

 自民党の新安保体制の是非に対して、民進、共産は相変わらず加計問題を首相のスキャンダルに仕立てて選挙を戦おうとしている。加計問題は岩盤規制を巡る問題であって、スキャンダルとするのは次元が低い。

(平成29年9月20日付静岡新聞『論壇』より転載)

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屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。 著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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