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“かかりつけ医”の役割は広い。 高齢者の疾病や心身・生活を 理解し、ときには介護サービスを 紹介することが求められている - 「賢人論。」第46回鈴木邦彦氏(中編)

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日本医師会の常任理事を務める鈴木邦彦氏をゲストに招いた「賢人論。」。中編となる今回は、前編「高齢化率がピークに達する2025年。医療と介護を一体的にケアする“地域包括ケアシステム”の構築は超高齢社会を乗り切る切り札になる」に引き続き、地域包括ケアシステムが拓く日本の未来を伺う。限りある医療資源を有効活用し、“かかりつけ医”をハブとして医療・介護が連携する。そんな仕組みをつくることが今後の課題となりそうだ。

取材・文/佐藤 舜(編集部) 撮影/公家勇人

地域包括ケアシステムは“まちづくり”まで巻き込んだ大改革

みんなの介護 前編「高齢化率がピークに達する2025年。医療と介護を一体的にケアする“地域包括ケアシステム”の構築は超高齢社会を乗り切る切り札になる」で伺った地域包括ケアシステムですが、現在、どれほど整備が進んでいるのでしょうか。

鈴木 これからですね。ある程度人口が多く、かつ高齢化の進み方も著しい中規模の自治体は「一刻も早くやらざるを得ない」という意識になってきていると思います。一方で大都市や小さな市区町村に関してはこれからです。大都市ではまだ高齢化の実感を持てずにいますし、小さな市区町村では、高齢化が進んでいるにも関わらず医療資源・介護資源が足りていないところも多いのです。

特に医療資源の不足は深刻ですね。介護資源はある程度計画的に整備してきましたから、まだマシな方ですが。全国一律のシステムにするのではなく、各々の地域性に応じてやっていく必要があります。1,700の市区町村があるなら1,700通りのやり方があっていい、ということも厚労省の見解で出ています。

医師会についても、自分たちで地域包括ケアシステムを進めることが難しい小さな医師会は周辺の大きな医師会や都道府県の医師会が支援をしたり、あるいは小さな医師会同士で協力し合ったりする取り組みをするなど、さまざまに工夫していくべきだと思います。地域包括ケアシステムに必要な資源が十分ではない地域もありますが、1人も医者がいない、という地区は日本には少ないですから、今地域にある資源を活用することでできる対策の余地はまだまだあるでしょう。

みんなの介護 限りある資源を有効に運用する、というのは、医療に限らず介護業界でも重要なテーマです。

鈴木 特に地方ではこれからどんどん人口が減っていきますから、元気な高齢者に頑張ってもらいながら、女性も子育てと両立しながら仕事ができる社会にしていかなければなりません。そういう意味で、地域包括ケアシステムは“まちづくり”へもつながっていかなければならないのです。奥が深い問題なのですよ。

医療だけでもない、介護だけでもない。働き方まで絡めて、高齢化に対応できるよう地域のあり方を変えていこうというのですから。大きな改革だと思います。


医師会は“かかりつけ医”育成のための研修制度も実施

みんなの介護 医療・介護サービスを提供する側だけでなく、私たち利用者の側にもできることはありそうですね。

鈴木 病院をまるで“コンビニ”みたいに捉えて、ちょっとしたことですぐ頼ったり、タクシー代わりに救急車を使ったり、というようなことをしていては限界があるでしょう。日本型の「かゆいところに手が届く」サービスを追求することは、人手不足の中では難しくなってきます。他業種ですが「ヤマト運輸」なども最近、手厚いサービスの提供を削減しましたね。

高齢者自身も、全部介護保険にお世話になるのではなく、自立できる部分は自立していく。それは“生きがい”につながっていくことにもなりますからね。支えられるだけでなく、余力のある高齢者はむしろ支える側に回っていただく。同時に仕事と子育ての両立できる環境を整えながら、少子化対策も進めていく。そうすれば20年後、これから生まれる人たちが社会に出る頃には、もう少し次の世代につなぎやすくなっているのではないでしょうか。

みんなの介護 世界史上類を見ない速度の高齢化を経験している日本の動向は、「高齢社会の先輩国」として、特にアジア各国から注目されています。

鈴木 私自身、昨年(2016年)の11月と今年の6月に韓国へ視察に行きました。韓国の出生率は直近で1.17(※日本は1.44)ですから、日本よりも早い速度で少子化が進んでいます。韓国の高齢化率は13%台、日本は27%台。まだ韓国の方がはるかに低いのですが、それでも2060年には日本を追い抜くと言われています。

日本がうまくいったら、それを参考に高齢化対策をしていく方針である、ということを韓国ははっきりと表明しています。日本は、世界でトップの高齢国ですから、世界のお手本になるように我々も頑張らなければいけないですね。

みんなの介護 地域包括ケアシステムはそのひとつの試金石となりそうですね。

鈴木 本格的に超高齢社会が始まる2025年までに、地域包括ケアシステムを地域性に応じた形で完成させられれば、と思っています。地域包括ケアシステムを構築していくためには、900近くある郡市区医師会と行政が車の両輪になる必要があります。

特に郡市区医師会とそこに所属するかかりつけ医たちには、地域包括ケアのリーダーとして、多職種のまとめ役になっていただきたいと考えています。そのために、我々医師会は昨年の4月から「日医かかりつけ医機能研修制度」を始めました。

昨年度1年間に延べ9,391名の方が研修を受講されましたが、今年度も延べ1万人以上の先生方が研修を受けられるのではないでしょうか。日本医師会の調査では、診療所の内科医の45%、外科医の40%がこの研修を受けているというデータも出ています。今後は、かかりつけ医機能を中心的に担う医師と、眼科などの専門医療を中心に活躍する医師が緩やかに分かれていく、という状況になるのではないでしょうか。

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