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日本から一万円札がなくなる日 -国家のデジタル通貨発行について-

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先日、日本経済新聞の一面に、”デジタル通貨 中銀に待望論”という見出しが躍り出ました。

これは、世界の中央銀行が、法的な裏付けを持つデジタル通貨の発行を相次いで検討し始めているという内容です。驚異的な速さでビットコインなどの仮想通貨が普及し続けると、資金決済サービスなどで自国通貨の存在感が低下し、いずれ金融政策にも影響を及ぼしかねないとの危機感が検討を進める大きな要因の一つです。

中央銀行のデジタル通貨発行については、キャッシュレス化を推し進める抜本的な手段として期待する見解がみられている中、世界各国では、活用に関する研究が進んでおり、銀行券や硬貨の発行・管理に伴うコストを削減しようとする動きが活発化しております。

例えば、シンガポールでは、 現金や小切手といった紙ベースの決済手段の利用に伴うコストは GDPの0.52%に達すると試算されており、現金から電子的な決済手段への移行を後押しする取り組みが進められております。

また、デンマークでは、中央銀行による銀行券や硬貨の新規製造を2016 年から取り止め外注化することが公表されており、この結果、2020 年までには 1 億クローネのコスト節約につながると試算されています。

さらに、エストニアでは、自国のクレジットで仮想通貨価値を高めると同時に、世界中からエストニアへの資金調達を容易にする仕組みづくりを行おうと国家初のICO(Initial Coin Offering / イニシャルコインオファリング)となる独自のデジタル通貨「エストコイン」を発行する計画を明らかにしました。

ただ、欧州中央銀行(ECB)が「ユーロ圏の通貨はユーロ。加盟国はその国独自で通貨を発行することはできない。」と牽制する中で、ICOによる仮想通貨政策ならば自国での発行も可能という見解で前に進むエストニアが今後どのようなやり取りをいっていくのか注目される場面であると思います。

そして、スウェーデンにおいては、Swishと呼ばれるスマートフォンを使った決済アプリが国民の間で広く使われていることを受け、商業銀行の間では、現金関連サービスの縮小や店舗の統廃合など、コスト削減に向けた動きが進められています。2018年末には、デジタル通貨「eクローナ」の発行に関する可否を判断することとなっており、実現すれば銀行口座を持っていない人でも店頭で電子決済が可能になリます。

またロシアでも、プーチン大統領がビットコインに次ぐ仮想通貨イーサリアムを生んだ起業家のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏に会い、支持を表明しました。そしてロシア中央銀行が、イーサリアムの技術を活用したシステム開発を行うと表明し、ロシア初の法定デジタル通貨発行への研究が進められております。

その他にも、オランダ、カナダ、英国などの中央銀行も一斉に研究に乗り出しております。

しかし、中国では2016年1月にデジタル通貨の発行を検討すると表明している一方で、暗号通貨やその技術を使ったICOによる資金調達を突然全面禁止にしました。様々な理由があるかと思いますが、私感の推察では、中国のような一党独裁制の社会主義共和国の中で、オープンに開かれたブロックチェーンの活用による仮想通貨を用いた資金調達などデジタル通貨の利用拡大が行われることは、結果として国家の将来的な存続を危ういものにするという危機感の現れかもしれません。

そうした中、日本でも日本銀行や金融界を中心に「第2の円」ともいえる安全なデジタル通貨の活用論が広がっております。

日本銀行が発行する日本銀行券、および造幣局が製造し政府が発行する貨幣(硬貨)をといった法定通貨をデジタル通貨に段階ごとに切り替えていくことは、銀行券や硬貨の発行に加え、現金や小切手といった紙ベースでの決済手段の利用管理に伴うコストを削減に繋がると同時にユーザー利便性の向上、金融政策の有効性確保、通貨発行益(シニョレッジ)減少防止にも繋がります。

また、デジタル通貨革命によるキャッシュレス化は、効率性・利便性を高め、社会のスマート化を進めることに繋がり、金融、経済、観光、福祉、行革などあらゆる分野でポジティブな効果をもたらす可能性があると考えます。

例えば、企業の資金調達、税金の納付・還付、年金や生活保護費等の支給、そして世界中の観光地で自分のウォレットからエクスチェンジの必要なく、デジタル通貨により支払いができる仕組みなど世界中のありとあらゆる環境や組織の中で、お金が流通しやすくなる仕組みづくりを行うことが可能となります。

それに加え、国家による価値の保証を持たない民間の仮想通貨に関しては、無法地帯になっている現状を正し、秩序を抑制しながらネガティブな要素を抑えつつも、イノベーションの源泉となるポジティブな要素を成長させるルールづくりをしっかりと行うことが必要です。

中国が、ICOの全面禁止など市場への規制を強め、リスクヘッジをする一方で、成長を遅られる対応を行う中、日本がこの市場で主導的な立場を取ることができれば、日本の経済界や金融業界にとってはとてつもなく大きなチャンスに繋がると考えております。

こうした観点から私も民進党内の政策ベンチャーにおける経済チーム内で、この日本銀行のデジタル通貨発行について進言をさせて頂いております。

まだ研究段階ですが、より良い政策に磨き上げ、次回の民進党マニフェストの経済金融政策内に加えて頂きたいと考えております。

拙い経験ですが、私の企業経営に携わった経験を活かし、民進党が弱いとされている経済、金融政策を今後も更にブラッシュアップすることで、国民の皆様からの信頼を得られるように、日々研究を重ねて参りますので、今後ともぜひご注目ください。

==下記、政策立案に関する参考資料==

◇日本銀行レビュー

中央銀行発行デジタル通貨について
―海外における議論と実証実験―
引用 要約まとめ

〇はじめに

新しい情報技術を各種の金融サービスに活用していく「フィンテック(FinTech)」への関心が世界的に高まっている。この中で、日本銀行をはじめ各国の中央銀行も、フィンテックの動向に対して大きな関心を向けている。この背景には、大きく分けて2つの要素があるように思われる。

第一に、中央銀行は、支払・決済システム の安定などの責務を負っており、このような責務を果たす上で、フィンテックが金融・経済全般に及ぼす影響をしっかりと把握していく必要があるということである。

第二に、中央銀行は、銀行券や中央銀行当座預金、大口決済システムといった、経済社会を支える基盤インフラを、自ら提供しているということである。この中で、その時々で利用可能な技術を活用し、自ら提供するインフラの改善を通じて経済社会への貢献を果たしていくことも、中央銀行としての重要な役割といえる。

〇ブロックチェーン・分散型元帳技術と中央銀行

フィンテックの代表的な技術とされるブロックチェーン・分散型元帳技術(Distributed Ledger Technology、DLTは、2008 年、仮想通貨「ビットコイン」を支える基盤技術として考案された。こうした誕生の経緯から、ブロックチェーン・DLT は、ビットコインなどの仮想通貨との関係が注目されがちである。しかしながら、ブロックチェー ン・DLT は、「中央に特定の帳簿管理主体を置くかわりに、複数の参加者による『分散型』での帳簿管理を可能とする技術」と捉えることが妥当である。したがって、この技術の応用範囲は仮想通貨にとどまるものではなく、各種の財産権の管理など、幅広い応用が可能と考えられる。

言うまでもなく、中央銀行はそれ自体「中央帳簿管理者」とみることもできる。

すなわち、中央銀行は自らの債務として銀行券を発行し、また中央銀行当座預金を提供している。したがって、これらを管理している中央銀行の「帳簿」に前述のブロックチェーン・DLT を応用したらどうなるのか、といった発想が出てくるのは自然な流れともいえる。

ここで留意すべきは、「中央銀行によるブロックチェーン・DLT の活用」を巡る議論は、必ずしも「現在流通している紙の銀行券をデジタル形式のものに置き換える」という、いわゆる「中央銀行発行デジタル通貨」に関する議論に限られている訳ではないということである。すなわち、既に実質的にはデジタル化されたデータとして管理されている中央銀行当座預金について、データの管理方法を集中的なやり方から、ブロックチェー ン・DLTを活用した分散的なやり方に移行させたらどうなるか、といった議論も含まれている。

〇中央銀行発行デジタル通貨を巡る議論

そこでまず、中央銀行がデジタル通貨を発行することのインプリケーションについて、主に海外で行われている議論をみていく。もっとも、既に1990 年代にも、「中央銀行が『電子マネー』を発行したらどうなるか」といった議論が盛んに行われていた。したがって、「中央銀行がデジタル通貨を発行したらどうなるか」という議論は、必ずしも新しいものばかりではなく、これまでの議論と重なる部分も多い。

その上で、中央銀行がデジタル通貨を発行することのメリットとして主張される内容は、以下の 3つに大別されるように思われる。

①ユーザー利便性の向上

紙の銀行券のハンドリング・コストや保管コストがますます強く意識されるようになっている中、中央銀行が最新の情報技術を活用してデジタル通貨を発行することは、ユーザーの利便性に資するとの主張である。

まず主要国における通貨流通残高の対GDP 比率をみると(図表3)、

2010 年から 2015 年にかけて日本や香港では同比率が高い伸びを示している一方で、国際決済銀行(BIS)傘下の決済・市場インフラ委員会(Committee on Payments and Market Infrastructures、CPMI)加盟国・地域の平均は横ばい圏内の動きとなっているほか、キャッシュレス化の進むスウェーデンでは顕著に低下している。

こうした中で、例えばシンガポールでは、 現金や小切手といった紙ベースの決済手段の利用に伴うコストは GDPの0.52%に達すると試算されており、現金から電子的な決済手段への移行を後押しする取り組みが進められている

欧州でも、北欧を中心に社会のキャッシュレス化が進んでおり、銀行券や硬貨の発行・管理に伴うコストを削減しようとする動きが活発化している。このうち、デンマークでは、中央銀行による銀行券や硬貨の新規製造を2016 年から取り止め外注化することが公表されており、この結果、2020 年までには 1 億クローネのコスト節約につながると試算されている。

また、スウェーデンにおいてはSwishと呼ばれるスマートフォンを使った決済アプリが国民の間で広く使われていることを受け、商業銀行の間では、現金関連サービスの縮小や店舗の統廃合など、コスト削減に向けた動きが進められている。このような動きの中、中央銀行デジタル通貨について、キャッシュレス化を推し進めるより抜本的な手段として期待する見解がみられている。

このほか、ブロックチェーン・DLT 技術を用いて有価証券などの権利移転や関連事務の効率化を図っていく上では、同様にブロックチェーン・DLTで処理できる中央銀行マネーが発行されていれば、証券と資金のDVP ( delivery-versus -payment)が実現しやすいのではないか、といった議論がある。

②金融政策の有効性確保

ビットコイン等の仮想通貨のプレゼンスが中央銀行発行通貨(ソブリン通貨)を凌駕するまでに拡大し、これがそのまま財やサービスの取引に用いられるようになれば、金融政策の有効性低下は避けられない。この点、中央銀行が自らデジタル通貨を発行すれば、紙のコスト故に銀行券が仮想通貨に凌駕されるといった事態を避けることができるとの主張である。

また、中央銀行の発行するデジタル通貨が紙の銀行券を代替していけば、デジタル通貨の残高を操作することにより、「名目金利のゼロ制約」を乗り越えやすくなる可能性も論じられている。

③通貨発行益(シニョレッジ)、その他

さらに、中央銀行が自らデジタル通貨を発行すれば、仮想通貨との競争を受けたシェア低下による通貨発行益(シニョレッジ)減少を防ぐことができるとの議論がある。この間、中央銀行デジタル通貨の発行が、不正行為の抑止に役立つのではないか、といった主張も一部にみられる。もっとも、これらの主張の一方で、いくつかの留意点も提起されている。

まず、中央銀行がデジタル通貨を発行した結果、民間銀行預金から中央銀行発行デジタル通貨への資金シフトが起これば、民間経由の資金仲介が細っていくのではないか、との見解がある。さらに、金融システムのストレス時には、民間銀行預金から中央銀行発行デジタル通貨への資金シフトが加速し、この結果、民間銀行の流動性不足がより起こりやすくなるのではないか、といった議論もある。

また、ビットコインなどの仮想通貨が信認のあるソブリン通貨を凌駕して拡大していくとは考えにくく、この点を過度に心配すべきではない、との見方も多い。さらに、中央銀行がデジタル通貨を発行しても、紙の銀行券を廃止しない限り、やはり「名目金利のゼロ制約」の問題は残り続けるとの指摘もある。

このほか、より根本的な問題として、中央銀行が全ての取引にかかる情報を把握し得るような形でデジタル通貨を発行する場合、中央銀行はこれらの情報をどのように取り扱うべきかといった問題もある。

加えて、中央銀行が広く一般向けに、銀行券を代替し得るような形でデジタル通貨を供給する場合、これは中央銀行口座を広く一般に開放することと近くなる。このことは、「中央銀行はいかなる主体に口座を提供すべきか」という観点からも、興味深い論点を提起するものといえる。

以上みてきたように、中央銀行発行デジタル通貨を巡る議論は多岐にわたっているが、いずれも、中央銀行や通貨、経済取引における情報の取扱いなど、深遠な論点につながり得るものといえる。

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