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手術で治る脳梗塞のある時代

脳梗塞というと、一度起こすともう治らない、死んだ脳組織は再生しない、あとはリハビリを頑張って生き残った他の神経細胞に頑張ってもらうしかない、いう印象を、かく言う私も医学生から研修医のころくらいまで、ずっと思っていました。

ところが、最近そうではなくなってきています。

もちろん、治る、というのは言い過ぎかもしれませんが、一部の脳梗塞は治療によって劇的に軽快します。

そして、そういった治療自体がスタンダードとなりつつあり、どの地域でもそういった治療が行えることが、当たり前になりつつあります。

ひと昔前に、脳梗塞の画期的治療といえば、tPAというのが話題になりました。

これは現在でもファーストラインの治療として行われており、発症4時間半以内の脳梗塞に対して、治療基準を満たす場合に行われます。

tPAは血栓を溶かす薬剤を投与するもので、しばしば症状を軽快させることもあります。

しかしながら、このtPAは全く万能ではなく、tPAが効かない症例がどういったものかということも、はっきりとしてきました。

中でも、脳の太い動脈に血栓などがつまった場合の主幹動脈の塞栓症に対しては、tPAはあまり効果がありません。

しかしこういった主冠動脈の塞栓症こそ、最も重症の脳梗塞となりうる病態です。

tPAの有効性が望めないこの病態に対して、ここ数年で有効性が認められたのが、カテーテルを用いた血管内治療です。

原理は簡単で、脳の太い血管に血栓が詰まってしまうというのならば、それをカテーテルで取り除いてしまおうというわけです。

単純明快な治療法ですよね。

ただ、単純だからこそ、有効です。

太い血管を再開通させれば、脳の血流を再開させることができます。

一旦途絶えた脳の血流が回復するのですね。

時期を逸せず、塞栓が起きてから早期に治療を行うことができれば、劇的な治療効果が得られるのです。

このカテーテルを用いた血行再建術の有効性がはっきりと明らかになったのはほんの1-2年前のことです。

それ以前からもこの治療は行われてはいたのですが、むしろ臨床試験からは否定的な結果が多く、tPA静注などを含む内科的な治療に対しての優位性が証明されていませんでした。

それが、治療デバイスの進化によって、ここ数年で、太い脳の血管が詰まった場合には内科的治療に勝ると証明されたのです。

ただ、もちろん、この治療はカテーテルが到達できるような、比較的太い血管に限られます。

脳梗塞に関しては、今後は脳の太い血管の塞栓についてはカテーテル治療、より細い動脈が原因と考えられる脳梗塞については、これまで通り内科的治療、というのが常識になりつつあります。

カテーテル治療が脳梗塞の標準治療の一つとして確立しようとしている現在の状況は、心臓のカテーテル治療が普及し、津々浦々の病院で治療が普及したのと同じようなパラダイムシフトが起きていると思います。

ただ、残念ながら、現状、日本国内のどの地域でも満遍なく、脳梗塞に対してのカテーテル治療が行えるというほど、普及しているというほどではないように思います。

この治療は時間が命ですので、発症後に遠く離れた病院にまで行かなければいけないようでは、ダメなのです。

地域ごとに、どこからでも、30分以内に搬送できる程度の距離に、この治療が可能な病院を整備しなければなりません。

カテーテル治療が有効であると証明されたことによって、今後は脳卒中に対する医療体制自体が変化していくことになりそうです。

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