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「箱根駅伝優勝」を企む慶應三田会の策略

年始の恒例行事、東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)に慶應義塾大が“本気”で挑む。慶應大は1994年の第70回記念大会を最後に出場していないが、「箱根駅伝プロジェクト」をスタートさせ、5年で本戦出場、10年で優勝を目指す。その裏には正月の箱根路で母校のたすきを見ることをもくろむ、大学のOB組織「三田会」の策略が見え隠れする。

■OBが全国を奔走

プロジェクトの中心人物である慶應大大学院蟹江憲史教授は「われわれの最大の武器はOBのネットワークだ」と断言する。そもそも計画の発端も競走部の三田会である「慶應陸上競技倶楽部」からだった。「今年競走部は創部100周年で、そんな中でさまざまなプロジェクトチームが発足した。記念式典を企画するチームや、記念品を製作するチームなど。その中で短距離競技出身のOBから『この機会に本気で箱根を目指したらどうか』と声が上がり、そこから一気に盛り上がった」と説明する。

その後、自前のマーケティング能力を駆使し同倶楽部はとあるデータを発見した。「われわれの調べでは最近の全国高校生のランキング(男子5000m)では700位程度の選手のタイムは切るくらいだ。しかし、30年前は同じくらいのタイムの選手が100位という上位に食い込んでいた」(競走部OB)。一方で箱根を走る選手はそれほど速くなっていないという。

慶應は他大学と違いスポーツ推薦枠を設けられない弱みがあるが「当時の上位100位に入るような優秀な選手が今は700人もいるのであれば、その中には慶應受験を突破できる生徒が相当数いるはず」という結論を導いた。

選手のスカウティングにもOBが大きな役割を担う。「全国各地のOBが地方の大会や練習の見学にいっている。各自で情報共有をし、いい選手がいたらOB自ら話しかけ、慶應受験を勧めている。“三田会”はやろうと決めたら、とにかく団結力が強い」。

慶應の競走部出身でもある蟹江教授はOB会で起きている動きを大学関係者に相談した。その結果、大学は駅伝競技をはじめとする陸上競技を専門に研究する「ランニングデザイン・ラボ」の設置を承認した。ラボは駅伝チームと連携し、スポーツ医学や栄養学、ITを活用して本格的に選手をバックアップする。

■「血縁主義」を捨てプロコーチに託す

卒業生同士のつながりが異常に強い慶應だが、コーチにはあえて身内ではなく、外部から人材を招いた。

「遊びの集団を、箱根を目指す本気のチームに変える」。そう語るのは今年4月に駅伝チームのコーチに就任した保科光作コーチだ。保科コーチは日本体育大出身で4年連続で箱根に出場し、社会人チームの日清食品や母校での指導経験もある。駅伝のプロフェッショナルとして、大学関係者から大きな期待がかかる。

保科光作コーチ

「就任当初は練習に参加しない生徒もいた。『君たちが目指しているのは箱根のはずだ。本気じゃないなら辞めてしまえ』といった厳しい声もかけ、選手の意識を変えさせた。今は明らかに足りていなかった基礎のトレーニングから練習の強化をしている」

熱い思いは選手にも伝わっている。駅伝チームのリーダーで環境情報学部4年の下川唯布輝さんは「目標が明確になった」と目を輝かせた。「コーチがくるまでは箱根を目指したいとは、恥ずかしくて言い出しづらかった」と振り返る。保科コーチは30代前半と若いことから、選手からは頼れる兄貴分としても慕われているようだ。

保科コーチは直近の目標として、2018年の箱根駅伝の関東学生連合チームに慶應から一人出場させることを挙げる。同チームは箱根駅伝の予選会で敗退した大学の優秀な選手で構成される。

保科コーチは「絶対に箱根で優勝します」と力を込める。“三田会”が操る箱根制覇の方程式で、東京・大手町のゴールテープは切れるのか。

(プレジデント編集部 鈴木 聖也 撮影=横溝浩孝)

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