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「中国政府はアメリカと『金正恩政権崩壊後』について協議を始めるべき」〜中国政府中枢ブレインの過激論文に驚く

 これは驚きました。

 中国の著名な国際政治学者がインターネット上で、「北朝鮮の崩壊に備え、中国は米国や韓国と緊急対応策の調整を始めるべきだ」とセンセーショナルな提言をしました。

 英語の論文はこちらで現在も閲覧できます。

Time to prepare for the worst in North Korea

f:id:kibashiri:20170916154423p:image

http://www.eastasiaforum.org/2017/09/11/time-to-prepare-for-the-worst-in-north-korea/

 論文のタイトルは"Time to prepare for the worst in North Korea"(「北朝鮮の最悪の事態に備えるとき」)とあります。

 この論文、大きな話題を呼ぶことは必至です。

 この論文が在野の論客によるものではなく、権威ある中国政府筋からの発言だからです。

 論文をあげたのは賈慶国・北京大学国際関係学院院長であります、賈氏は中国の国政助言機関、全国政治協商会議(政協)の常務委員も務めている、中国政府中枢のブレインであります。

 言論の自由などない中国でありますが、中国政府側の政治学者が「北朝鮮崩壊」を前提とした論文を発表したこと自体、これはセンセーショナルな事象だと申してもいいでしょう。

 国際的に政治的インパクトを狙った中国政府公認のアドバルーンの可能性もあります。

 早速日本のメディアも速報しています。

【朝日新聞速報記事】

「北朝鮮崩壊後に向け協議を」中国識者が異例の提言

http://www.asahi.com/articles/ASK9H3GYWK9HUTFK00K.html?iref=comtop_8_01

【産経新聞速報記事】

「北朝鮮の崩壊に備えよ」 中国で有事対応説いた論文が注目

http://www.sankei.com/world/news/170915/wor1709150115-n1.html

 今回はこの賈慶国氏の論文"Time to prepare for the worst in North Korea"を取り上げたいと思います。

 論文は極めて厳しい現状認識から始まります。

When war becomes a real possibility, China must be prepared. And, with this in mind, China must be more willing to consider talks with concerned countries on contingency plans.

戦争が現実味を帯びているとき、中国は備えなければならない。そして、これを念頭に置いて、中国は緊急時対応計画について、関係諸国との協議を検討する強い意思を持たなければならない。

 もはや中国は関係諸国、すなわち米国・韓国等と協議を開始すべきだとしています。

 そして金正恩政権崩壊を念頭に、中国政府がこだわる5つのイシュー(問題点)を列挙します。

 (以下、文中太字は木走が付けています。)

the first issue that Beijing may wish to talk about is who would control North Korea’s nuclear weapons arsenal.

最初のイシューは、(金正恩政権崩壊後に)北朝鮮の核兵器を誰が制御するのかということだ。

 核兵器が「政治的混乱の中で北朝鮮軍の手に落ちるのは危険すぎる」とし、アメリカか中国のいずれかの国の管理を示唆しています。

The second issue Beijing might wish to talk about is how to deal with the expected refugee problem.

2番目のイシューは、(金正恩政権崩壊後に)難民問題にどのように対処するのかだ。

 「中国北東部への大量の難民流入を食い止めるため」中国は国境地帯に難民収容所を設ける可能性を示唆しています。

The third issue Beijing may wish to talk about is who is to restore domestic order in North Korea in the event of a crisis.

3番目のイシューは、(金正恩政権崩壊後に)戦後の北朝鮮の国内秩序を誰が回復するのかだ。

 これは意外と難問で中国は米軍が38度ラインを越境することは認めないとしています。

The fourth issue Beijing may wish to discuss is the post-crisis political arrangements of the Korean peninsula.

4番目のイシューは、(金正恩政権崩壊後に)新たな政権を国際社会がどう立ち上げるかだ。

 論文は北朝鮮と韓国による統一政府樹立の可能性を示しています。

Finally, Beijing may also wish to talk about the removal of the Terminal High Altitude Area Defense (THAAD) system from the peninsula when Pyongyang’s nuclear program is gone.

最後(のイシュー)は、(金正恩政権崩壊後に)平壌の核計画が廃止されたときに、半島からをターミナル高高度防衛(THAAD)システムの撤去するかだ。

 これは中国が強く撤去を求めており、おそらく「ワシントンとソウルは受け入れるだろう」と指摘しています。

 ・・・

 これらの文章は全て"Beijing may also wish to talk about"(「北京は〜について話し合いたいのかも知れない」)で始まっています。

 文章の形式としては筆者の推測で記述されているのですが、今検証したとおり、それぞれのイシュー(問題点)が極めて具体的であることに驚かされます。

 現段階でこの論文が発表されたことの影響を断定的に語ることはできません。

 単に一人の中国人学者による北朝鮮に対するブラフ・脅かしのようなものであり、中国政府の意思や政策を示すものではなく、北朝鮮の崩壊を望まない中国政府の方針とは乖離しているのかもしれません。

 だがしかし、国政助言機関、全国政治協商会議(政協)の常務委員も務めている、中国政府中枢ブレインの学者が、中国政府の意向を無視して暴走気味な論文を勝手にネットに公開することは、中国の体制から申して「政治生命」を失う危険が伴います。

 だとすれば少なくとも中国政府から論文公開「黙認」のシグナルは受けていた可能性が高いと思われます。

 ならばこの論文の内容は中国政府がひそかに検討していた可能性も、完全に否定することはできないと思われます。

 いずれにせよ、

 「中国政府はアメリカと『金正恩政権崩壊後』について協議を始めるべき」

 このような過激な論文が中国側からネットで公開されたのは驚きであります。

 もしかすると、中国政府の大きな方針転換の「予兆」なのかもしれません。

 ・・・

 ・・・

 この緊迫した状況において、日本国内では「日本がアメリカの戦争に巻き込まれる」などと、のどかでおかしな論説がいまだ飛び交っているのは、非常に残念なことです。

田原総一朗

2017年09月14日 20:02

トランプ大統領のやり方で、北朝鮮との戦争は避けられるか?

http://blogos.com/article/246255/

 失礼して当該部分を抜粋ご紹介。

へたをすると、日本も巻き込まれる大戦争が起きる危険性がある、と僕は危惧している。今の状況を見るかぎり、その可能性を否定することは、とても残念なことに、けっしてできないのだ。

 この局面、日本は当に当事者であります。

 日米同盟を基軸に、上記中国論文が強く示唆しているように、必要ならば中国とも協議をするべきです。

 もちろん戦争回避の協議が大前提です。

 そのうえで、あらゆる将来に備えることも必要なのです。

 少なくとも我々も当事者として覚悟も持つ必要があると考えます。

(木走まさみず)

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