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時の景気に人生を委ねる日本社会の末路

全国の公立小中高で、20代の教師が増えているという。(*1)
記事ではベテラン世代が退職し、その世代交代として20代が増えていると、さも明るい話題であるかのように報じられている。

しかし、そのグラフを見た時に愕然としないわけにはいかないのは、40代の少なさである。
本来、40代は団塊ジュニアの世代にあたり、人口は20代30代よりも多いはずである。にもかかわらず、このグラフでは40代が谷になっている。これは明確に就職氷河期の影響である。

かつて右肩上がりの経済成長が崩壊し、景気が悪くなった時代。そのときに社会に出てきた団塊ジュニア世代周辺の若者たちは、突然に雇用の門戸を閉ざされることとなった。そして後に「就職氷河期世代」と呼ばれるようになる。

人口が多い世代である団塊ジュニア世代が就職しようというときに、不景気による就職氷河期が重なったことにより、正社員の口は減り、多くの若者がアルバイトや契約社員といった非正規労働で働くことを余儀なくされた。グラフの数が少ないのは、決して自分からやめたとかやめさせられたということではなく、不況時に当時の学生である団塊ジュニア世代の採用を極限までに絞ったからである。

団塊ジュニア世代の人口が多いのも、就職時に不況だったことも、そのどちらも当の世代の人たちのせいではないことは明らかだ。にも関わらず、その不利益だけを就職氷河期世代は一方的に負担させられ続けてきた。

最近になってようやく景気が良くなってきたと言うが、その利益は、これまでさんざん苦労してきた就職氷河期世代が真っ先に受け取るようなことはなく、苦労していない今の若い世代が真っ先に受け取ることになったのである。

ベテラン世代が退職し、40代の若手が少ないからと、慌てて新しい20代の新卒学生の採用を増やした。だから20代が増えたのだ。
すなわちこのグラフは「就職氷河期世代が見殺しにされているグラフ」であり、決して世代交代などという前向きな意味を持つグラフではないのである。

さて、では団塊ジュニア世代が就職するときに、もし不況が来なければ、この問題は発生しなかったのであろうか? いや、団塊ジュニアの世代で問題が起きずとも、その後に問題は発生した。

最近では日本は経済成長をしているという人達がたくさんいて、中には経済成長さえすればよく、政府による再分配は、財産権の侵害であり不要であると主張する人までいる。しかし、再分配が機能しない社会においては、人の人生を「大学卒業時に景気が良いこと」に賭けなければならないのだ。

好況のときに大学を運よく卒業すれば正規の仕事を得られて幸せになりやすく、不況のときに卒業する不運の人は、一生報われない人生。そんな運任せの社会でいいのだろうか?

国は国民全員の生存権や人権を守る義務を負う。適切な再分配を行わずに経済成長だけをあてにすることは、その義務の放棄である。

本来、人口の多いはずの世代が、正規労働者として働くことができていないことを示すこのグラフは、そんな国が義務を放棄した運任せ社会の恥ずべき末路といえよう。

*1:公立校教員、20代の割合増加 首都圏では2割以上に(朝日新聞デジタル)https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170915-00000001-asahi-soci

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