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プログラミングとは新しい絵筆

プログラミング教育が注目されている。拙著『習い事狂騒曲』にも掲載したリクルートの「ケイコとマナブ.net」の調査結果によると、2016年度、子供に習わせたい習い事のランキングトップ10に、「パソコン関連」が入った。2020年度以降順次導入される新学習指導要領で、小学校教育でもプログラミング的なモノを取り入れる方針がすでに発表されていることを受けての反応だと考えられる。

プログラミングを学ぶことで論理的思考力が鍛えられると言われている。それも間違いではないが、本来的な理路は逆だと私は思う。論理的思考力があればプログラミングなんてできると考えたほうがいい。

断言してもいい。いまプログラミングをやっておかなければ将来困るなんてことはない。いまの子供たちが大人になるころには現在のプログラミング技術など旧石器時代の産物のようになってしまっているだろうし、多分プログラミングという概念すらなくなっているだろう。きっとそれに取って代わる新しい概念が幅をきかせているはずだ。そのときに必要なのはプログラミングの技術ではない。普遍的な論理的思考力である。

そもそもいまの子供向けプログラミング教育で鍛えられる論理的思考力とは、幾何の証明問題を考えるときに必要となる高次な論理的思考力ではなく、物事を正しい順番に並べる段取り力に近い。

たとえば数学をしっかりやっていれば、あとからプログラミング技術なんてすぐに身に付けられる。大人になってからいくらでもできることを子供のうちからやらせる「必要」はないと私は考える。プログラミング教育に反対なわけではない。単なるオプションの一つであり「必要」だとは思わないというだけだ。

一方、プログラミングができるようになることは、新しい絵筆を手にすることに似ていると私は思う。デジタルの世界で表現する手段を得ることだからだ。

いままでならプログラミングによって作られた「テレビゲーム」の「消費者」という立場でしかなかったゲーム好きな子供たちが、プログラミングを学ぶことによって、デジタルコンテンツを生産する立場に立てる。「もっと面白いゲームはないか」「自分ならもっと面白いゲームを作ることができる」という思いを形にすることができるようになる。

これまでゲームばっかりやっている子供は「ゲームオタク」などと呼ばれてやや肩身が狭い思いをしていたかもしれないが、これからはプログラミングを学ぶことによって、日々のゲーム修行で培われたデジタルネイティブな感性を表現することができるようになったのだ。

たくさんゲームをすることは、画家になりたい子供がたくさんの名作に触れるようなもの。そうやって想像力は広がる。

どんなゲームが面白いのかに「正解」はない。そこで必要なのは論理的思考力ではなく、創造力だ。逆に言えば、創造力がなければ、いくらプログラミングを学んでも何も表現できないということ。その順番を間違えてはいけない。

「プログラミング教育」などというと難しく聞こえるが、あんまり難しく考えず、新しい絵筆だと思えばいい。その絵筆によって可能性が開ける子供もいるだろうし、見向きもしない子もいるだろう。

※全国のFMラジオネットワークJFNの「OH! HAPPY MORNING」2017年9月13日に放送した内容を掲載しています。

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