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対北制裁、またもや空砲 中国の策謀

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「中朝友誼(ゆうぎ)橋」中華人民共和国遼寧(りょうねい)省丹東市と朝鮮民主主義人民共和国平安北道(ピョンアンブクどう)新義州市(シニジュし)を結ぶ。中国側正式名称:鴨緑江(おうりょくこう)大橋 出典) flickr : photo by Prince Roy

田村秀男(産経新聞特別記者・編集委員)

【まとめ】

・対北朝鮮追加制裁は空砲に終わる。中国の金融支援が背後に。

・中国からの対北金融ルートの遮断が必須。

・しかし、中国大手銀行のドル取引停止は米経済にも打撃の為結局出来ない。

 北朝鮮による6回目の核実験を受け、国連安全保障理事会は9月11日午後(日本時間12日午前)、北朝鮮への新たな制裁決議案を全会一致で採択した。

▲写真  対北朝鮮制裁案を決議する国連安全保障理事会 2017年9月11日    出典)UN News Centre

原油や石油製品の対北輸出に上限を設けたことや、国連加盟国による北からの繊維製品輸入を禁止したことから、日米の外交当局は「大幅な制裁強化」と自賛するが、だまされてはいけない。これまでの度重なる国連の対北制裁と同様、空砲に終わる可能性がある。なぜなのか。

韓国政府の調査などによれば、北朝鮮の国内総生産(GDP)は年間300億~400億ドルで、軍事支出は約100億ドルに上る。ミサイルや核開発を支えるのは輸出収入による外貨で、中国向け輸出が全輸出の約9割を占める。

中国の貿易統計によれば、北からの輸入は2016年で27億ドルである。この他に、中国などへの出稼ぎ者からピンハネする分が年間約10億ドルという。8月初旬、国連安保理は、北からの石炭、鉄鉱石の輸入禁止などを決議した。その時、トランプ氏は「制裁効果は10億ドル相当」とツィッターで称賛したが、金正恩氏の返事は6回目の核実験だ。

 従来の経済制裁には抜け穴がある。それを利用する元凶は、北にとって最大の貿易相手、朝鮮戦争で「血の友誼」を交わした中国である。北朝鮮は制裁によって輸出が減ると外貨収入が落ち込むので、軍用、民生用を問わず、輸入に支障をきたすはずだ。

ところが、北の対中輸入(中国の対北輸出)が急増し続けている(グラフ1参照)。なぜ、可能か。答えは簡単、中国の大手銀行が信用供与、つまり金融協力しているからだ。

 中国銀行など大手国有商業銀行が北に協力していることは、米財務省がオバマ政権時代から綿密に調べ上げてきた。国連事務局も実態を把握している。ならば、中国からの対北金融ルートを遮断すれば、確実に制裁の実を挙げられる。そのためには、米政府が中国銀行など大手銀行に対し、ドル取引禁止という制裁を加えればよい。

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▲ 写真  中国銀行本社ビル 北京

世界の基軸通貨ドルを入手できなくなれば、中国の金融機関はたちまち干上がるので、米側の要求に応じざるをえなくなるはずだ。ところが、オバマ前政権はもとより、トランプ政権もまた逡巡している。

 北の核実験を受けた3日には、トランプ氏がツィッターで「(中国の対北圧力は)ほとんど成果を上げなかった」、「北朝鮮とビジネスをする全ての国との貿易停止を検討している」とぶち上げた。

(トランプ大統領のツイート)

北とビジネス取引する最大の国とは、もちろん中国のことである。ムニューシン財務長官は大統領の指示を受けて「北朝鮮との取引を望む者は米国と取引できないようにする」と言明し、北に協力する中国企業リストを作成中だが、ワシントンの関係筋からは「銀行大手は対象外」と聞く。なぜか。

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