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焦点:東芝メモリ買収、日米韓が最終盤でリード 残るWD訴訟リスク

[東京 13日 ロイター] - 半導体子会社の売却交渉を進める東芝<6502.T>は13日、米系ファンドのべイン・キャピタルと韓国半導体大手SKハイニックス<000660.SK>を中心とする「日米韓連合」と交渉加速に向けた覚書を交わした。米ウエスタンデジタル(WD)<WDC.O>など他の2陣営を引き離した格好だが、WDが提起した訴訟問題は解決しておらず、日米韓連合が契約締結を勝ち取るのか、不透明要素があるとの指摘も交渉関係者から出ている。

<最終盤のドラマ>

今月8日、東京・浜松町の東芝本社。べインとSKグループ関係者は、東芝の綱川智社長、成毛康雄副社長らが居並ぶ中、半導体子会社「東芝メモリ(TMC)」買収案について、詳細な説明を行った。

「プロジェクト・パンゲア」──。約3億年前に地球上に存在したと考えらる巨大な大陸にちなんで付けらたコードネームを持つ買収プランは、東芝が抱えたWDとの係争で、べイン・SK連合が東芝と共闘することが盛り込まれていた。

べインとSKグループ関係者は、その点を最大のポイントとして強調。対WDへの徹底抗戦を呼びかけた。

関係者によると、綱川氏は別の場所で「我々も一緒に闘ってくれる人たちを探している」と応じたという。

ベイン・SKグループが、再び、日米韓連合に交渉の流れが傾いたと感じた瞬間だった。

TMCの売却交渉は、大きな流れが二転、三転する過去に例を見ない展開となる。

東芝は6月下旬、産業革新機構(INCJ)、日本政策投資銀行(DBJ)にべインとSKハイニックスを加えた日米韓連合を優先交渉先に選定した。

だが、6月末としていた最終合意は遅れに遅れた。最大の障害になったのが、同意のないままTMCを第三者に売却することに反対したWDが、国際商業会議所(ICC)の国際仲裁裁判所へ5月に仲裁を申し立てたことだった。

WDの主張が認められた場合、日米韓連合によるTMC買収の完了後、連合に参加した各社へのTMC株式の移転が無効になる。

ICCの国際仲裁では最終決着まで3、4年間かかったケースもあった。このため買収が無効になるリスクが数年間続くことに対し、政府資金が入っているINCJとDBJが敬遠。WDとの係争が解消しない限り、最終契約はできないと東芝に主張し、いったん日米韓連合との交渉はストップした。

<東芝、拭い切れないWDへの不信感>

ちょうど同じ時期に、WDの巻き返しが活発化する。TMCの買収後もWDからは役員を派遣しないことや、WDの議決権比率について、合併など重要事項への拒否権を発動できる3分の1超を保有しないなどの譲歩案を示した。

そこに銀行側の思惑も重なる。2兆円規模の資金が東芝に払い込まれるTMC売却を来年3月末までに完了させ、今年度中に東芝の債務超過を解消させることが、銀行にとってのゴール。

米系ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)<KKR.N>が加わるWD陣営と契約を急ぐよう、主力銀行団は東芝に強く働きかけた。

さらに経済産業省の人事異動が、交渉の先行きに影響を与えたと複数の交渉関係者は指摘する。7月人事で新たに担当になった幹部は、英語に堪能なこともあり、WDのスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)と「意気投合」(東芝関係者)。WDと契約するよう東芝の背中を押したとみられている。

ところが、土壇場の段階で交渉は難航した。WDが将来持つTMCの議決権比率や、三重県四日市市の工場で生産されるメモリーの配分割合で「主張を譲らなかった」(関係者)という。

東芝とWDは交渉を続けたものの溝は埋まらなかった。東芝社内では、半導体部門を中心に「WDへの不信感が高まって行った」(関係者)という。

その一方、TMCでは人材流出が続き、フラッシュメモリー世界2位を誇る現場には疲労感が漂っていた。

<米IT大手、WDの訴訟に懐疑の視線>

銀行側から最終期限とされた8月31日が接近しても、対WDの交渉は決着しなかった。

交渉関係者によると、その時、べイン・SK陣営に強力な援軍として登場したのが、アップル<AAPL.O>や複数の米IT大手企業だった。

INCJやDBJが資金拠出できない間は、アップルなどが6000億円近い資金を供与するというスキームが出来上がった。

アップルなどの資金拠出の背景として「WDの対東芝訴訟の意図をいぶかしく感じている」──ことがあると、先の交渉関係者は指摘する。

WDは過去にアップル向け製品供給を絞り、値上げした経緯があり、アップルはWDに不信感を持っていると、あるIT業界関係者は語る。

アップルが「WD陣営に売却したら、TMCからはメモリーをもう買わない」と東芝に伝えていると複数の交渉関係者は指摘する。その背景には、米IT業界に存在する企業同士の「葛藤」が存在しているようだ。

東芝が13日、日米韓連合と覚書を交わしたことについてWDは、「発表に失望した」などと声明を発表。合弁契約に基づき、同意なしに第三者への売却を禁じる「同意権」についても、「守ることができると引き続き確信している」とした。

WDは国際仲裁とは別に、米カリフォルニア州でも売却差し止め仮処分を求めていたが、WD側が求めていた差し止め判断は示されなかった。

べイン・SK陣営関係者は「WDは年内には国際仲裁への訴訟を取り下げざるを得ないだろう」と自信を示す。

<日米韓連合に残る死角>

だが、売却交渉に関与している複数の関係者からは、ベイン・SKグループとは違った見方が出ている。

WDとの訴訟リスクに関し、多くの関係者が指摘しているが、そのほかにも懸念材料があるとの声が上がっている。

ある関係者は「日米韓連合の提案は、まだ、煮詰まっていない」と指摘し、提案の詳細を検討し、契約書の締結に至るには、かなりの曲折を要するとみている。

また、WDとの訴訟を抱えたままで、銀行団から6000億円の融資を得るのは難しく、2兆4000億円の規模を維持できない可能性があると指摘する。

別の関係者は「きょうの覚書に法的拘束力はなく、外部に対し、交渉が進んでいることを見せる目的があったのではないか。譲歩しないWDを揺さぶりたいという東芝の思惑も透けて見える」と話す。

最終盤でリードした日米韓連合が、このまま契約にこぎつけるのか、それともWD陣営が大逆転を果たすのか──。

中国など主要国の独占禁止法をめぐる審査期間を勘案すると、実質的な時間は9月末までの約2週間しかないというのが、交渉関係者の大方の見通しだ。

どこが最終的な買収者になるのか、見方が真っ二つに分かれたまま、ゴールテープが見えつつある。

(浜田健太郎 布施太郎 取材協力:山崎牧子 編集:田巻一彦)

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