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国の歳出増の最たる要因は社会保障費。その伸びを抑制していかないと社会保障制度も国の財政も持続可能ではない - 「賢人論。」第45回八幡道典氏(前編)

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「賢人論。」第45回のゲストは、財務省主計局に勤務する八幡道典氏。これまで財務省で国の予算編成に携わったほか、厚労省で介護保険法の施行準備にも関わった八幡氏が、“財政政策の当事者”の立場から社会保障を語る。前編では、政府での議論を紹介しつつ、社会保障費のこれからを語る。 ※2017年7月10日付で金融庁に異動。肩書は2017年6月12日時点のもの。

取材・文/佐藤 舜(編集部) 撮影/公家勇人

公私ともに、介護には思い入れが深い

みんなの介護 八幡さんは1994年に財務省に入省し、これまで24年間、財務省などで日本の財政に携わってこられました。

八幡 財務省でもずっと財政に携わっているわけではありませんが、20代の後半、1998年から2000年には当時の厚生省の老人保健課に出向していました。その頃は、まさに介護保険法の施行準備の真っ最中。とても忙しかったですが、やりがりのある仕事でした。そういう意味で、介護分野は特に思い入れがありますね。

みんなの介護 プライベートでは“介護”に馴染みはありますか?

八幡 父は数年前、癌でなくなりましたが、在宅のターミナルケアを受けており、介護保険も利用していました。今は母も癌を患っていて、要介護度1~2を行ったり来たりしています。姉が近くでサポートしているので、施設は利用しておらず、訪問看護や訪問介護を利用しながら在宅で生活しています。

みんなの介護 他人事でなく、公私ともに介護に関わりがあるのですね。そんな八幡さんは現在、財務省の「主計局調査課」という部署に在籍されています。日本の財政状況は厳しいと言われていますが、実際はどうなのですか。

八幡 国の毎年の歳出に必要な財源は、本来ならば、その年の税収等で賄うべきです。ところが、現実には、2/3程度しか賄えておらず、残りの1/3は借金。つまり将来世代の負担に頼っている状況です。この毎年毎年の借金が積み重なった結果、その残高も膨れ上がってしまい、債務残高の対GDP比で2倍を超えています。

これは国際比較でも突出して悪い状況です。ですから、まずは毎年の歳出をその年度の税収等で賄えるようにすること(※プライマリーバランスの黒字化)が必要ですし、同時に債務残高の対GDP比も安定的に引き下げる必要があります。

みんなの介護 政府はその「プライマリーバランスの黒字化」を2020年までに実現する、という目標を掲げていますね。実現できるのでしょうか。

八幡 実現できるよう、しっかり取り組んでいく必要があります。安倍政権の発足以降、歳出・歳入両面での改革が進められています。この年末に編成される2018年度予算は、政府が策定した「経済・財政再生計画」の改革集中期間の最終年度に当たりますので、その取組を引き続き進めるということかと思います。

みんなの介護 やはり社会保障費は抑制していく必要があるのでしょうか。

八幡  現在、国の歳出が伸びる最たる要因が社会保障費です。高齢化等による伸びは「自然増」と言い、制度改正を行わなければ自然に歳出が伸びていきます。しかし、その伸びを抑制しないと社会保障も財政も持続可能なものとなりません。

ですから、先ほど述べた経済・財政再生計画でも、歳出の伸び、特に社会保障費の伸びを抑制することをメインとして、その目安を掲げています。社会保障費については、2018年度までの3年間で伸びを1.5兆円程度、2018年度は5,000億円程度に抑えていくことになっています。


何が医療費の無駄かという“神学論争”的な議論ではなく、優先順位を考えるべき

みんなの介護 2018年度の社会保障費の伸びを5,000億円に抑制・・・!どうすればできるのでしょうか?

八幡 やるべきメニュー、検討項目は「経済・財政再生計画」の改革工程表として掲げられています。これを踏まえて、2017年度の予算編成でも、例えば医療分野では、現役並みの所得のある高齢者の自己負担上限額の見直しなどが行われました。

これなども、かつてのように高齢者が一律弱者というイメージの頃であれば難しい見直しだったかもしれませんが、世の中の変化もあって国民の理解も得られ、実現したものと思います。改革工程表には、社会保障分野だけで44もの項目が掲げられています。2018年度以降も、これらをしっかりと検討していく必要があります。

みんなの介護 ただ保障するだけでなく、“いかに無駄なく保障するか”ということも今後は考えなくてはいけないのですね。改革工程表の中でも、特にやるべきと思うことはありますか。

八幡 改革工程表の項目は、どれも重要ですし、その優先順位を述べる立場ではありませんが、最近、自民党の若手議員が社会保障について議論された場では、例えば薬局でも買える薬が保険で給付されるのはおかしいといった点がテーマになりました。

多くの論点の一例にすぎませんが、湿布薬をドラッグストアで買えば、当然、全額自己負担になるのが、病院で処方された場合には一般的には3割負担で、残りは保険制度から給付されます。やっぱり、何か変だよな、と。少しずつ見直されてはいますが、もっと抜本的に変えるべきではないかという議論でした。

もちろん、少額負担の場合を保険でカバーすること、例えば1,000円かかるところを300円で済むようにすることも大切です。しかし、私見ですが日本の医療保険制度のさらに優れている点は、公的保険がなければ、突然、何十万円、何百万円といった高額な医療費がかかりかねないケースでも、月々の負担上限が大きく抑えられる、という点にあるのではないかと思います。国の財政も医療保険財政も厳しい状況の中では、何が無駄かという“神学論争”的な議論ではなく、保険制度の中での優先度も考えていかないといけないと思います。

みんなの介護 その他、改革工程表以外には、どのような課題があるのでしょうか?

八幡 基本的に改革工程表に当面の検討項目は出揃っています。が、また自民党の若手議員の議論の紹介で恐縮ですが、医療関係で意見が百出したのは、乳幼児の医療費助成でした。例えば東京23区だと、中学生まで医療費は無料です。各自治体がそれぞれに単独事業として助成しているのですが、中学生は乳幼児でもないし、やはり無料は行き過ぎではないかと。

私も含め、親からみれば助かる話なのですが、本当に無料なわけではありません。あまり意識されないだけで税金が投入されています。これは、厚労省ではなく自治体行政の話ですが、自治体間では助成の拡大競争になってしまいますし、問題認識は共有されても見直しが難しいテーマです。これもやはり制度の問題ではないかと思います。

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