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左派政党は没落したのではなく、もともと存在していなかった

城繁幸

2010年03月18日 10:52

「格差」の戦後史--階級社会 日本の履歴書 (河出ブックス)
橋本 健二
河出書房新社

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“戦後”というキーワードでくくられがちな現代を、統計データからいくつかにわける。興味深いのは、社会保障システムがボロボロで貧乏人であふれていた印象のある終戦直後というのが、実はもっとも格差の少ない時代だったということ。でも、これはよく考えてみれば当然だ。戦前は華族、財閥という真の富裕層がいたけど、終戦という革命によってそういった人たちは一斉に没落。都市部の中間層と農村を中心とした一次産業の格差も、前者が壊滅することでほぼ消滅。

というわけで、すごく平等な社会が焼け野原に実現してしまったわけだ。そう考えれば「希望は戦争」というロジックも、あながち間違いとも言い切れない。

だが本書の最大の魅力は、戦後日本の格差構造に踏み込んでいる点だ。社会党、共産党といった革新政党は、既に50年代から大企業・官庁の労組を最大の支持基盤としていた。しかも、70年代以降、中小零細企業の労働者からの支持が「壊滅的といっていいほどに」低下し、この大手・日の丸依存の傾向は一層強まることになる。この点に関する著者の分析は鋭い。

おそらくは、離陸を果たして生活水準を向上させた大企業・官公庁労働者に取り残された中小零細企業労働者たちは、さらなる労働条件の向上を訴える巨大労組とこれに支えられた革新政党に見切りをつけたのではないだろうか。この動きには2005年の郵政選挙で自民党を支持した人々の行動とも通ずるものが感じられる。

70年代以降、日本型雇用という一種の身分制度が確立することで、企業規模による賃金格差が拡大した。大手が中小下請け&非正規雇用労働者から搾取するというシステムの完成だ。現実にそういった状況で搾取される側の人間が「労働者は連帯しよう!」としか言わない階級闘争バカを支持するだろうか。むしろ、逆に反感買いまくりだろう。

都合のよいデータだけを切り貼りしてひたすら既得権擁護の主張を展開してしょっちゅう炎上している某親方日の丸労組ブログなんかを見ていると、「ああ、こうやって日本の革新政党って大衆から乖離していったんだなあ」と、今日の絶賛低迷ぶりがよくわかる。

というわけで、中流以上が革新政党を支持し、下層が自民党を支持するというおかしな状況が日本に生まれることになった。もちろん、自民党も格差是正にまったく関心がないという点で社会党・共産党と同じようなものだが、少なくとも自民は下層にとって“敵”ではなかったということだ。

そう考えると、大手を支持基盤とした革新政党が、日本型雇用と歩調を合わせるかのように衰退したのもうなづける。労組組織率の低下、若年層の流動化と非正規化によって中産階級が減り、同じように革新に見切りをつける労働者が増えたというわけだ。いや、もともと日本に本当の意味の革新政党なんてものは存在しなかったと言うべきか。

問題提起をする本ではないが、基本事項を整理するにはもってこいの入門書だ。文章も読みやすいので広くおすすめしたい。

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