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「結婚する資格がない」諦めていた私を変えた夫の言葉

障がい者の就労支援を中心にソーシャルビジネスを展開するゼネラルパートナーズ(東京・中央)がこのほど実施した調査では、障がいがある人が「障がいが結婚のハードルになる」と感じる割合は既婚者(25%)と未婚者(71%)で大きな差があることが分かった。ハードルをどのようにして乗り越えたのか。実際に結婚した人へインタビューし、結婚について悩んでいたことや、結婚を決めた理由などを聞いた。(聞き手・オルタナS編集長=池田 真隆)

インタビューを受ける小澤さん

今回、取材したのは日本アイ・ビー・エムの人事部で働く小澤綾子さん。小澤さんは20歳のときに、運動能力が低下していく難病・筋ジストロフィーと診断される。現在は5年半付き合った外資系IT企業で勤めるエンジニアの池山邦彦さん(35)と結婚し、夫婦で暮らしている。

筋ジストロフィーは進行性の難病で、数十年後には歩くことが難しくなってしまう可能性もある。小澤さんは病気が分かってからは「結婚する資格がない」と思い込んでいたが、池山さんからもらったある言葉で結婚することを決めた。

――ゼネラルパートナーズ社が行った調査では、「障がいが結婚のハードルになる」と感じる割合は、既婚者は25%、未婚者は71%だと分かりました。小澤さんは2014年に5年半付き合った池山さんとご結婚されましたが、結婚するときに障がいをハードルに感じましたか。

小澤:はい、正直感じました。

――どんなことがハードルだと感じましたか。

小澤:色々なことがあります。まず、家事や身の回りのことに関して、一人ではできないことが多いので、相手の時間を奪ってしまうのではないかが心配でした。また、実家でも家族と障がいが理由で言い争いになることがあったので、好きな人とそうなることは嫌でした。

将来のお金の不安もありました。今は会社で働いていますが、このまま勤め続けられるか分かりません。進行していく病気なので、いつかは施設に入らないといけないかもしれない。それによって、金銭的にも心理的にも相手に負担をかけてしまうので。

それに、相手の両親に許してもらえるのかも分かりませんでした。ハードルになることを挙げたら切りがなかったですね。

――そうなんですね。もともと結婚願望はあったのですか。

小澤:病気が分かる前はありました。ただ、病気が分かってからは、結婚したいけれど、私には結婚する資格がないと思っていました。結婚は一緒に暮らした相手を幸せにしていくものだと思います。でも、私と結婚しても、相手にとっては引き算になってしまうように思えて・・・。どうしても足し算になるようなイメージを持てませんでした。

病気が発覚したのは20歳のときなのですが、周囲に障がいがある友人がいなかったので、誰にも相談できず、一人で辛い思いをしたのを覚えています。

同世代の友達は「結婚は◯歳までにする」「子どもは◯人ほしい」といった話をしていましたが、私はそうした会話に入っていけず。「自分のことは誰も分かってくれない」と心を閉ざしていました。

――ご主人とのお付き合いのきっかけは何でしたか。

小澤:結婚と恋愛は別だと考えていたこともあり、実は交際は私から申し込んだんです。

交際する前から交流はあったため、主人も私に障がいがあることは知っていました。ただ、交際を始めてからも、病気のことについては詳しく話せませんでした。もし言ってしまったら、この楽しい関係が終わってしまうのではないかと不安だったからです。

――それでも結婚に踏み切れた理由は何でしょうか。

小澤:長く付き合っていくうちに「結婚したらここに住みたいね」「そろそろ親に挨拶に行かなきゃね」といった話が出るようになりました。

でも、そのたびに私は不安で。ある時、「結婚したら大変だよ、今よりもっと責任は重くなるし、今みたいに楽しいだけではいられなくなるんだよ」と話をしたんです。

すると、彼からプロポーズの言葉が。突然だったこともあり、すぐには答えが出せないでいたら、もう一度「結婚しよう」と言ってくれて。「ああ、この人は本気なんだ」と感じ、結婚しようと決めました。

結婚がうまくいく秘けつとして、小澤さんは「お互いが支え合うこと」と言う

――病気のことは、いつどのように伝えましたか。

小澤:主人の両親にご挨拶に行く前、「あと10年くらいしたら車椅子に乗ることになって、20~30年したら、動けなくなるかもしれない。子どもも産めるか分からない身体だから、ご両親が結婚を許してくれないかもしれない」と打ち明けました。

主人がどこまで深く考えていたかは分かりません。ただ、「おれはそれでもいいよ」と。そして、「おれがOKと言っているから、親も絶対OKと言ってくれるはず」と、謎の理論でそう励ましてくれました。

実際、ご挨拶に行ったときには、なかなか病気について話すことができずにいて。そのままお別れするタイミングになった時に、これではいけないと思い、「こんな自分ですみません」と頭を下げたんです。

すると、主人のお母さんから「そんなこと気にしなくていいのよ。お互い支え合うのが家族だから」と言ってくれて、「あぁ、家族になるんだ」と実感できて、すごくうれしかったことを覚えています。

――実際に結婚してみて、いかがですか。

小澤:以前は、結婚は引き算だと考えていました。でも、いまは「結婚して本当に良かった」と思いますし、引き算どころか、かけ算だったんだなと感じます。

私には、結婚生活において、障がいによってできないことがいくつもあります。ただ、そんな中でも相手が喜ぶことを一つでもしたいなと思っています。料理が好きなので、好きな料理を作って帰りを待つようにしたり、掃除はできないのですが、できる範囲で部屋をきれいにしたりしています。

私の病気がなければとよかったと、夫婦でどん底な気分を味わうこともありますが、どうしたら二人で幸せになれるか、出口の見えないところで、出口を探しています。

――障がいがある人の結婚や恋愛について、どう思いますか。

小澤:障がいがある人は自分自身に自信がない人が多く、人に対して引け目を持ってしまうこともあると思います。私の場合は、おしゃれな服を着たり、髪型を変えたりすることで、その劣等感をぬぐうようにしていました。

それに、意外と自分が思っているより、他人は気にしていないこともあります。障がいをハードルに感じることは誰にでもありますが、ちょっとした変化をつけることで、そうした殻を破ってほしいですね。

――小澤さんはアマチュアシンガーとしても活動しています。どんな思いで活動を続けていますか。

小澤:最近は病院で歌う機会が多くなっています。それは、この活動をしようと思ったきっかけが病院にあるからです。

私には、30年近く入院していた同じ病気の友達がいました。彼は病室のベッドに寝たきりのまま、作詞作曲を続けていました。そして、「やりたいことはたくさんあるのに、時間がない」とよく言っていました。彼と出会い、どんな人にも役割はあるんだと気付きました。

いま彼は天国にいます。「彼から託された歌を多くの人に聞いてほしい」「私を通じて、病気や障がいについてより多くの人に知ってほしい」、そう考え、活動を続けています。

ゼネラルパートナーズ社が実施した、障がい者の結婚に関する調査結果はこちら

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