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ダイヤと東洋経済の年金特集の差

週刊 ダイヤモンド 2010年 2/20号 [雑誌]

ダイヤモンド社

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週刊ダイヤモンドの今週号『年金の大誤解』。現制度の問題点をごまかすことなく網羅し、
「これ一冊で基本的な論点は理解できる」というレベルに仕上がっている。

それにしても、先の東洋経済の特集と、同じテーマでここまで違うかという方向性には驚かされる。
良い機会なので、主な点だけ以下に挙げておこう。

・国民年金の未納問題のツケはサラリーマンが被っていること。

基礎年金に回される拠出金は国民年金、共済年金、厚生年金の各年金制度への加入者数に応じて割り振られる(国民年金はなぜか実際に払っている人だけを頭数にカウント)。

国民年金なんて免除を含めれば負担者は実質半減しているわけで、国民年金の保険料だけでまかなうのは無理だ。この時点で、サラリーマンも未納問題の影響を受けている。

さらにいえば、国民年金は14,660円と一律で満額66,008円支給と、とてもクリアなシステムなので、いじりすぎて明らかに割に合わない設定にしてしまうと誰も払わなくなるから、大きくはいじれない。
だから、厚生年金側により大きな負担がかかっているはずで、実際、サラリーマンの厚生年金保険料のうち、基礎年金にいくら回されているのかは明示されていない。
田中秀明・一橋大学准教授は「基礎年金制度が作られたのは国民年金救済のため」だとし、被保険者総数で均等負担する場合に比べ、サラリーマンの負担は2割高いと試算する。


ちなみに東洋経済では「厚生年金が未納を肩代わりはまったくのウソ」だそうだが、なんべん読んでもロジックが意味不明。

・09年に厚労省が出した「年金財政検証」の是非

もはや年金制度は実質的に破たん状態にあるにもかかわらず、「問題ないです」と誤魔化そうとすればどこかで嘘をつかないといけない。この年金財政検証は、そういった嘘のオンパレードだ。
名目運用利回り4.1%、名目賃金上昇率2.5%って、一体どこのBRICs諸国の話なのか。
過去十年の長期金利1%台、賃金にいたっては09年度はマイナスのこの国で、一体何をどう検証すれば

こんな数字が出るのか。
というわけで、もちろんダイヤは「そんな金利になったら国家財政が破綻する」という自民党議員の声とともに全否定する。

ちなみに東洋経済は09年検証を全面的に擁護し、むしろ出生率などでは控えめだとさえ言っている。
まあそれならそれでもいいんだけど、だったらぜひ賃金を2%以上、利回りを4%以上に引き上げできる経済政策でも特集してください。


・いったい、誰が悪いのか

両誌最大の違いはこれだ。そしてこれこそ、両紙の年金特集が180度違う根本でもある。
ダイヤでは厚労省年金官僚の存在をクローズアップする。
彼らは「日本国民の年金」という膨大で美味しいパイを守るため、自民党厚労族と癒着し、政治力をバックにあらゆる年金改革を潰してきた。そして厚労族へのご褒美には、地元にグリーンピアなどの豪華な箱モノを(年金保険料から)プレゼントしてあげる。もちろん、そういった無駄な施設は天下り先にもなるから、官僚にとっては一挙両得である。
こうして問題をひたすら先送りし続け、次世代にツケを回し続けているのが厚労省というお役所の正体だ。


一方、東洋経済では厚労省批判は一字たりとも登場しない。すべては間違い。そう、馬鹿で浅はかな人間の間違いだ。
年金改革を主張する経済学者も、不安がって年金問題を選挙の争点にする有権者も、みんな馬鹿なだけ。
愚民どもは黙々と働いて保険料を負担すればよいのです。なんの問題もありませんよ年金制度には、というスタンスである。

象徴的なのは、両誌の囲み記事に登場する人物だろう。
ダイヤでは河野太郎が登場し、年金官僚の無能腐敗ぶりを憤る。一方の東洋経済には堀勝洋という厚労省の天下り教授が顔を出し、現行制度を持ち上げる。もうここまでくると笑うしかない。


読んでいて、ダイヤは東洋経済特集を相当意識しているなと感じた。
特に終盤の「経済学者による共同提言」は強烈な皮肉だろう。
賛同者の中には、権丈さんも天下り学者も、もちろん変な予備校講師もいない。
かわりに構造改革派からリフレ派まで、代表的な学者やエコノミストが名を連ねている。
これをみるだけでも、いまさらながら「東洋経済はやってしまったな」と思わざるを得ない。
たぶん、ダイヤは大喜びでこの企画を作ったはずだ。“敵失”という言葉がこれほど当てはまる事例は少ない。

僕がお付き合いがある身で心配しているのは、ただ一点。

これだけの学者に連名で反論出されるような、というかある程度そういった書を読んでいれば見抜けるくらい幼稚な御用論理を全面的に誌面で展開してしまうチェック体制の無さを、読者層に露呈してしまったことだ。

別に訂正しろとか(さんざん東洋経済特集において批判した)鈴木亘氏に反論書かせろとかいうつもりはないけれども、少なくともチェック体制の構築をアピールすることなしに、信用は取り戻せないのではないか。

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