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ルポ・生きづらさを感じる人々6 父親の虐待と傍観する母親に絶望…。現在は家族から離れて舞台に~華生の場合

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新宿・歌舞伎町。とあるイベントスペースで春画の朗読会が開かれた。春画の背景には、そのシーンを説明する「詞書(ことばがき)」や、登場人物のセリフを記した「書き入れ」がある。それらをエロティックに読み、臨場感を多々酔わせる。その朗読の舞台に立った一人に、北條華生(31)がいた。

仕事は別に持ちながら、演劇に携わっている。僧侶の格好をし、左腕には数珠をつけている。コスプレで着ているのではない。僧侶の修行をしていた証でもある。

春画の詞書を朗読する華生(撮影:渋井哲也)

華生は母親からは常に「お前は女の子。たった一人の娘。大人になったら、帰ってきて、親の面倒を見るんだよ」と言われ続けていた。しかし、あるとき反抗した。「今さら言われても、私は出て行く人間と思ってきた。それは正直、虫がいいのでは?」。母親は一人暮らしをさせたことを後悔したという。なぜ、そんな母娘関係になったのだろうか。

父親からは「お前は悪い子」と言われながら育った

華生は「悪い子」と言われながら育った。父親は住職だが、パチンコを楽しみにしている人だった。負けると機嫌が悪くなる傾向があった。あるとき、華生はタバコをすっていた父親の灰皿を触ってしまい、火傷をした。教師である母親は父親に対して、日頃から「床に灰皿を置かないでほしい」と言っていた。父親は母親に言い返せない人間だったため、灰皿を触った華生にこう言った。

「お前は悪い子だ。だから、服を脱いで出て行け」 「服はお父さんが買ってあげたものだからな。お前はうちの子じゃないから出て生きなさい」

住職でありながら、理不尽な叱責をされる。そのため、本当に裸になり、家を飛び出した。そのとき近所の人とぶつかった。「裸でどうしたの?」と言われた。華生が経緯を説明すると、近所の人は信じず、こう言った。

「お父さんがそんなこと言うはずがない」

このシーンは明確に今でも覚えている。そのとき、華生は「私の言うことは信じてもらえない」と感じるようになっていく。

そもそも、父親と母親は競馬場で知り合った。華生が幼い頃は、3人でパチンコ屋に出かけたこともあった。そして、負けると、父親に「お前は悪い子。連れて行ったから負けたんだ」と言われ、お尻をなでられ、そして叩かれた。

「叩かれる前になでられたんですが、何回目で叩かれるのかはそのときじゃないとわからないので、びくびくしながら待っていました」

しつけの意味もなさないこれらの行為はいわば虐待ではないか。。そして、父親からの明確な虐待としては、前日の残り水のある風呂場の浴槽に、頭を掴んで沈められるということをされていた。

「父親はこれがしつけだと思っていたようです。それを母親は見ていました。でも、止めることはなかったんです」

祖父母からは後継ぎの弟と比べられる

母親が止めようという意思を見せたことはある。それは父親の不倫がバレたときだ。母親は「これからは、はなちゃんを守ろうと思う」と言ったことがあった。しかし、その意思はながく続くことはなく、しつけのつもりである虐待は続くことになる。

その上で、弟と比べられる。お寺にとって、男の子は後継ぎ。そのため、大事に育てられることになる。成績は、華生の方が体育以外は弟よりも出来はよかった。しかし、両親からは「お姉ちゃんは成績がよいかもしれないが、同じ年齢だったら、弟のほうがいい」と言われてしまっていた。

「テストでよい成績を取ったんですが、ゴミ箱に捨てられていました。そのとき、『100点とっても捨てられる』と母親に言ったんですが、父親は『大事なのは間違えたところ。何が間違えたのかが学ぶこと。そんなものは価値がない。ゴミなんだ』と言われたんです」

父方の祖父母と一緒に住んでいたが、母親がいないとき、祖母は弟だけにおやつをあげていた。両親だけでなく、祖父母も後継ぎの弟を優遇して育てた。そのほかにも、お年玉は弟のほうが多くもらっていたし、テレビのチャンネルに優先権があったのは弟だった。華生の誕生日でさえ、弟にチャンネルの優先権があった。

離婚をお願いするも、弟が「別れないで」と言っていると母

こうした家庭環境によって、「死にたい」と思うようになったのは中学3年生のときだ。演劇をしたいと思っていたが、当時の養成所は「高卒」が条件というところが多かった。そのため、「演劇部が盛んな高校に行きたい」と両親に願い出るが、理不尽にも却下されてしまう。華生自身の願いが叶わない中、性病に感染したことで父親の不倫がまたバレることになる。

母親は「私とはしてないのに、そんな心配があるの?」と騒いだ。華生は「受験生なのに、勘弁してくれよ」と思っていた。母親は自分の部屋に閉じこもるが、食事の時だけ顔を合わせる。そんなときだ。父親が華生の布団に入ってくるようになったのは。理由は「寂しいから」という。

華生はすでに中3。15歳だ。ただでさえ、女としての自分を意識し、父親を遠ざける時期だ。それなのに布団に入ってくる。それ自体が、性的虐待めいた行為だが、父親は娘の気持ちを推し量ることはできないでいた。逃げようとすると、「どこへ行く!?」と言われ、父親に手を掴まれた。「嫌だ」と言えない雰囲気がただよった。

「何をされたというわけではないが、気持ち悪い。母親にはそのことを告げて、『お願いだから離婚して』と、土下座をしながらお願いをしたんです」

すると、母親はこう言った、という。

「あなた、お父さんとそういうことしているんじゃないでしょうね?」

性的なことはしてないと告げると、さらにこう言った。

「もしあなたがレイプされるようなことがあれば離婚する。けど、弟が『別れないで』と言っているので、別れない」

「死にたい」「親を殺したい」遺書を書き、持ち歩く

この言葉を聞いた華生は「私が殴られたりすることを母親は知っています。止められないけど、なんとかしたいとは思っていたはず。でも、父親にレイプされないとダメなのか。そこまでされないとだめなのか。レイプされる前になんとかするものじゃないか。される前なら今だろ?と思ったんです。結局、祖父母と同じように、そこまで弟が大事なんだ」と考えた。

家出することも考えたが、そのために、援助交際をするかどうかも頭を巡らせた。しかし、そんなこと自分でできるのかどうかは疑問だった。もしかして、殺されちゃうかもしれない。そこまでして家出や援助交際をする勇気もない。父親からの虐待から解放されるのはどうしたらいいのかと、悩み続けた。

「このとき、『死にたい』とか『親を殺したい』と思いました。しんどいことをわかってもらうために遺書を残して死んじゃおうかな。遺書を書いたのですが、ずっと持っていました」

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