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"核戦争を回避"キューバ危機に学ぶ 北朝鮮情勢の解決策は?

 朝鮮半島の緊張が高まる中、北朝鮮は9日、69回目の建国記念日を迎えた。日米韓は連携・圧力を強化することで一致、さらなる制裁強化に向けて動いている。そんな中、アメリカのモニズ前エネルギー長官が「核兵器が使用される危険性はキューバ危機までさかのぼり、50年余りで最も高まった」と発言した。

 1962年、キューバを舞台にアメリカと旧ソビエトが対立、核戦争に最も近づいた瞬間だと言われているキューバ危機。AbemaTV『AbemaPrime』では、キューバ危機から北朝鮮危機解決のヒントを探った。

 西のアメリカ、東のソビエトという東西冷戦構造の真っ只中の1958年、アメリカが中距離弾道ミサイルの発射実験に成功。1960年代前半までは核兵器・ミサイル開発競争で、アメリカがソビエトを一歩も二歩もリードしていていた。劣勢を一気に挽回しようというソビエトは、アメリカ本土に近いキューバにミサイル基地を建設、武器を供与するという計画を立てた。

 当のキューバでは1959年1月のキューバ革命で政権を掌握したフィデル・カストロが農地改革や米系企業の国有化を進めたことで、アメリカとの国交を断絶(61年)。そして62年10月14日、アメリカの偵察機がソビエトによるキューバへのミサイル搬入を捉えたのだった。

 アメリカ全土がソビエトの核の脅威に直面する18日、ケネディ大統領がソビエトのグロムイコ外相をホワイトハウスに招き会談。しかしグロムイコ外相はキューバのミサイル基地の存在を否定した。会談から4日後の22日、ケネディ大統領はテレビで「私はすぐに次の対応を取るように指示した。このような攻撃的な挑発に対抗するため、キューバへ輸送中のすべての兵器について厳しい臨検を行うことにした。どの国や港を出ようともキューバ行きの船で兵器が発見された場合は送り返される」「キューバから発射されるミサイルは、西側のどの国を狙ったとしても全てソビエトから米国への攻撃とみなし、ソビエトに対し報復が必要になる」と演説、海上封鎖を断行した。

 しかし、ソビエトの艦船が米軍の海上封鎖線に接近。米ソ間の緊張は頂点に達し、核戦争の危機が迫る中、ケネディ大統領はソビエトのフルシチョフ首相と水面下で交渉を重ねた。演説から8日後の26日、フルシチョフ首相はアメリカがキューバへ侵攻しないことを条件にミサイル基地を撤去することを提案。両者が合意したことで、ケネディ大統領「核戦争が実際に起こる確率は三分の一から二分の一と思った」(当時の側近の証言)と語るほどの危機はギリギリで回避されることになった。

 国際政治学者の栗崎周平・早稲田大学准教授は、キューバ危機回避の背景について「意図したものかどうかは分からないが、ケネディが最初のソビエトとのコミュニケーションをテレビ演説で行ったということ。プライムタイムの番組を全てキャンセルして、アメリカ国民に向け放送したこと」と指摘する。

 栗崎准教授によると、それまでのケネディ大統領はソビエト側との会談ではポーカーフェイスで、ソビエトのミサイル基地建設について言及することもなかったという。その状況下で突然のテレビ演説を行い、強い口調でソビエトを避難したため、フルシチョフ首相はひどく動揺したのだという。

 「深夜にソビエトから来た長い回答文はフルシチョフ本人が書いたものだったが、酔っ払っている人が書いたようなものだった。それほどまでにソビエトのソビエトの指導部を緊迫させた。同時に、ケネディ大統領は秘密裏にソビエト側に条件を提示した。ソビエトがミサイルをアメリカの裏庭に置いたように、実はアメリカもソビエトの裏庭であるトルコにミサイルを置いていた。これを撤去させる代わりに、キューバからミサイルを撤去させるという裏取引を密かに弟のロバート・ケネディに交渉させた。表向きはどちらかが譲歩したということを見せないように、双方が政治的な勝利を得られるような形にした」(栗崎准教授)。

 キューバ危機から学ぶべき教訓として栗崎准教授は「不確定要素を排除させていくことが今後の危機管理では非常に大事になる。大筋のシナリオを描いて、ただしそこから少しぐらいの逸脱に政治的にいちいち反応しないことが大事だ」と指摘、「北朝鮮とアメリカの間での出口戦略・緊張緩和は難しくなってきていると言える。アメリカにとって、中国に政治的な勝利を与えてしまうのは不本意だろうが、第三のプレーヤーとしての中国に譲歩するという形で決着を目指すことはあり得るだろう。その際に不確定要素が出てくるとしたら日本、韓国が過度に反応してしまうこと」とした。

 「トランプ大統領のツイートにあるような、『屈服させる』という"政治的勝利"を考えるようでは、軍事的な安定性は難しい。アメリカを含めた国際社会としては、核兵器を持っていることに対し認めてもいないし、否定もしていない国がすでにある。北朝鮮はNPTを脱退しているので、国際的に違法であるとは言えないが、核兵器の保有を事実上黙認するということも落としどころになる」(栗崎准教授)。

 安全保障問題のスペシャリストで、静岡県立大学の小川和久特任教授は当時17歳、陸上自衛隊の生徒(少年自衛官)だった。「訓練名目だったけれど、3日3晩、大きなリュックサック、スコップ、鉄兜、ライフルという完全武装で過ごした。弾だけは渡されなかった。夜間にトイレに行くと、廊下すれ違うと鉄兜が触れ合うガチャガチャという音がした。授業も、隣にライフルを斜めに置いて受けた。横須賀の海上自衛隊やアメリカ海軍を警備することになるんだろうなと思っていた」と振り返る。

 「北朝鮮がアメリカに攻撃されない範囲でミサイル実験や核実験をやるのは、交渉のためのカードを強くし、枚数を増やすため。米ソの軍事交渉も、お互いにたくさん持っているカードを少しずつ削っていこうやってきた。北朝鮮危機も、それと同じ道に入ろうとしている。だから、ある日目を覚ましたらアメリカと北朝鮮が、核保有国として認めてやるよということで落ち着いている、という可能性すら視野に入れなくてはいけない状況にある」(小川特任教授)。

 さらに小川特任教授は「キューバ危機も教訓を学ぶべき歴史的大事件だが、94年の朝鮮半島核危機からも学ばなければいけないことがある」とし、「キューバ危機の時も海上封鎖があったが、94年の時も海上封鎖の体制をとりつつあった。海上封鎖は戦争か、戦争をしないで済むかの分水嶺。船舶検査での小競り合いから戦火が広がる可能性もある。アメリカは精密誘導兵器で北朝鮮の重要な軍人を叩くサージカルストライクの体制をとっていた。だが、それではあまりにも犠牲者が出すぎるかもしれないということで、金泳三大統領がクリントン大統領に軍事的行動を止めるよう依頼、金日成主席が特使として派遣されたカーター元大統領と会い、南北首脳会談が実現した。そこまでの軍事的な圧力があって北朝鮮は動いた。実は航空自衛隊も当時、偵察機を北朝鮮上空に飛ばす訓練を、日本の似た地形のある場所でやっていた」と指摘。加えて「アメリカ大使館は韓国にいる自国民に"まだ大丈夫だ"と伝えている、一方では国土安全保障省の担当者たちが韓国に入って、非戦闘員を逃す計画が機能するかのチェックを始めている。そういった情報がメディアに漏れることも、北朝鮮への圧力になる。ただ、危機感という意味では94年核危機よりも小さい」とした。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶『AbemaPrime』は月~金、21時から放送中!

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