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選択肢がなければつくりだす。自分たちで変えられるという公共性の感覚こそが自由と民主主義の本質だと思う - 「賢人論。」第44回望月優大氏(後編)

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スマートニュース株式会社の望月優大氏を迎えた第44回「賢人論。」。中編「特別養子縁組や社会的孤立。子どもたちを取り巻く制度や社会問題のリアルを伝えることで人々の理解を少しでも深められたら」では、自身が指揮を執るNPO支援事業「ATLAS(アトラス)」の理念とその展望を語った。最終回となる後編では、「自由」についての思索を足がかりに「自分たちの手で社会を変えられる」という「公共性の感覚」の意義を語った。

取材・文/佐藤 舜(編集部) 撮影/公家勇人

「自由とは何か」とは、簡単なようで難しい問い

みんなの介護 望月さんは大学院で「自由」をテーマに研究されていたそうですね。

望月 ミシェル・フーコーという思想家の研究を通じて「自由」という概念について考える日々を送っていました。自分は「自由」という価値観をとても大切にしてきたのですが、「自由」というのは考えれば考えるほどよくわからなくなってくる概念でとても奥が深いんです。

「自由」が問題になるひとつの理由は、誰しも1人で生きているわけではないというところにあると思います。親の介護をする、子どもを育てる、そうしたことに伴って個人としてできることの幅は制約されるでしょう。また、そもそも生活を成り立たせるために最低限の稼ぎは必要で、そういったことからも「自由」を論じることはできると思います。

みんなの介護 望月さんご自身が思う、「自由」な状態とはどのようなものでしょうか?

望月 「自由」はとても多義的な概念で、「これが自由だ」とひとつの定義に集約できるようなものではないのですが、「内発性」というのはキーワードになると思います。「自分はこれをやるべきだ」あるいは「これはやるべきではない」という個人的なモラルのようなものが明確であれば、その視点から現在の自分のあり方を捉えることができます。

雇用形態としての会社勤めかフリーランスかといったことで「自由」が語られることもありますが、あまり本質的ではないと思います。自分がこのように行動すべきであるという方向性を自ら見定められるかどうか。これもひとつの視点かなと思います。

みんなの介護 では、現に不自由な状況にある人が、自由をつかむためにはどうすればいいでしょうか?

望月 目の前にある不都合な状況を「自分の力で変えていける」と思えているかどうか。それがとても大事だと思います。お金がない、就職が決まらない、差別を受けている、介護をしなければいけないなど、不自由な状況というものは誰しも少なからず抱えていると思います。

多くの場合、それは社会的な制度が十分に整備されていないとか、経済の状況が良くないとか、いろんな理由が重なって起きている問題の現れですが、そんな中で「自分はちっぽけな存在だからなす術がない」「今の状況を変えるチャンスはない」と思い込んでしまったとしたら絶望してしまいますよね。

孤立している子供が「自分はそういう家の子どもだからしょうがないな」と夢や希望を失ってしまったり、そういう子どもたちを目の当たりにした私たちが「何もしてあげられないな」と諦めてしまったり。それはとても苦しいことだと思います。


まずは身近な環境から、小さくてもいいから変えていく

みんなの介護 今の境遇が不自由であるということ以上に、「その状況を変えることができないと感じてしまうこと」に不自由ということの本質があるということですね。

望月 ひとり親であることや養子であること、あるいはLGBTであることなど、自分の境遇について何の罪や責任もないのに世間に対して隠したいと思ってしまう人はたくさんいると思います。心のどこかで「こういう社会は嫌だな」と思っていても、それは仕方のないことであり、変えることは無理だ、と諦めてしまう。

そうした状況に置かれたときに、「自分ではない誰かが変えてくれたら」と思うか、あるいは「自分たち自身で変えていける」と思うか、これは大きな差だと思うんです。社会に存在する大小さまざまの問題を発見して解決していけるというポジティブな感覚。これを私は「公共性の感覚」と呼んでいて、そういう感覚が広まっていくにはどうすれば良いだろうということをいつも考えています。

みんなの介護 「空気を読む」「身の程をわきまえる」ことが重視される日本社会では、なかなか自ら何かを変えようとしていくことは難しそうです。

望月 公共性は、なにも議会など大きなものだけに関わることではありません。それは人が2人以上いれば生まれるものだと思うんですよ。夫婦でもいいし、会社でもいい。家庭なら家事を分担するようにパートナーに頼んでみたり、「嫌な会社だなあ」と思ったら「ここをこうすれば変わるかもしれない」と考えて行動してみる。そういう小さな変革からでいいので、「少しだけど行動できた」「小さいけれど変化を起こせた」という体験を持つことが大きなステップだと思います。

自分から関わっていかないということは、「こうなって欲しいな」と思っていることを誰か別の人が汲んでくれるまで何も変わらないということです。しかも思いを汲んでくれたその誰かだって、必ずしも良い方向に変えてくれるとは限らない。むしろひどい方に持っていかれるかもしれない。

だからこそ、「自分はこうなってほしい」という考えをきちんと表明した上で関与していくことは大切で。もちろん100%とはいかないまでも、自分が望む方向に変わる可能性が高くなるのではないでしょうか。少なくとも、「あのとき行動しておけば良かった」という後悔はしなくて済むようになりますよね。

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