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北朝鮮危機への一般人の対策とその限界

昭和44年生まれの筆者はむろん、戦争を知らない。

映画や本で知る戦争は大抵が20世紀の戦争で、そこでは前線と銃後が明確に分かたれている。
銃後が戦場になるのは前線が破られた後に限られ、そこには時間的なラグが必ずある。

ところが、21世紀の大規模戦争には前線も銃後もないようにみえる。大量殺害が可能なミサイルの射程距離は、特定の戦場のスケールをはるかに超える。破壊対象には民間人、軍人の別はないので、国防問題は国家の問題のみならず直接時間的に家庭の問題にもなる。

したがって、この問題の行先を考えておくことは、一般人にとっても必要なのではないかと思う。

家庭の防衛としては物理的には核シェルターが選択肢になるだろう。

スイスのように自宅への核シェルター設置を法的に義務付けている国は少ないものの、シェルターの普及率は北欧ほぼ100%、米露80%、イギリス70%とかなり普及している。(日本核シェルター協会HPより)
翻って、日本の普及率0.002%は極端に低いが、現下の北朝鮮情勢を踏まえると、何らかの対策が必要となる事態に至る確率は低くないように思える。
(まあ現状で、実際設置するのはお金もちだけでしょうけど。)

政治的な展開については先読みが難しいが、10日の小野寺防衛相の発言(以下)は一定の示唆を与えるものと考えられる。

「北朝鮮は脅威となる核兵器をもっていると考えざるを得ない。」
同じ記者会見で、
「北朝鮮を核保有国と認めるわけにはいかない。」

つまり、北朝鮮は核拡散防止条約には批准していないが、核保有国である、と認識している、というのが政府の正式見解であるらしい。

したがって、今後の外交の少なくとも片方の軸は、パキスタンのそれと同様に核兵器を拡散させない方向に向かうが、これは普通に考えて非常に難しい課題だと思う。

最も警戒されている北朝鮮とイランの核技術の提携に関しては度々噂にはなるが、確度の高い詳しいニュースはなかなか出てこない。
直近では、この8月に北朝鮮のナンバー2の金永南氏が多数の核技術者を引き連れて、テヘランを10日間訪問し、最高指導者のアリ・ハメネイ師らと会談をもった、との米NBCの報道があったが、詳しくはわかっていない。

民主党のシャーマン下院議員が昨年の公聴会で、「(北朝鮮の特別機が)領空を飛行している中国政府に、臨検を要請できないか」と国務省高官に問いただしているくらい、米政府も情報収集に苦労しているらしい。
(むしろイスラエルの情報機関のほうがそのあたりは詳しい。直近では主に核弾頭の小型化技術が北朝鮮からイランに、濃縮ウラン製造の遠心分離技術がイランから北朝鮮に提供されている、とのことだが。)

核兵器拡散のもう一つの懸念は韓国だが、ここは民生用の原子力技術を保有しているので、いざとなれば18カ月で核武装できるといわれている。(スウェーデン安全保障開発政策研究所 リーサンス 「選択」9月号)

韓国の核武装は国際関係上の難題を抱えることになるが、米国が追い詰められて米朝二国間協議(韓国はまあいっか的な)など始めようものなら、韓国はなりふり構っていられなくなるのが必定だとみられる。
(限られた時間内で単独で北に対応するためには、韓国に残っている選択肢は核武装しかない。)

米朝二国間協議→韓国核武装の懸念となると、日本の核武装論も現実味を帯びてくる。
(ここに至って、シェルターの需要はもう一段階上がる。)

これらのシナリオが進行する可能性の程度は予測不可能だが、政府には情報収集と対応策の複数プランくらいは想定しておいてほしいものだとは思う。

さて、今後の展開のもう片方の軸は、北朝鮮の核が米国を射程内に収めた時(or確度が高くなった時)の対応だが、これは時間の問題だとみられる。
米国はこのような事態に至らないように、あらゆる外交策を講じるだろうが、中ロイランなどの関係各国の動きを予測できる程度の情報収集すらうまくいっていない状態では、無理筋だと思われる。

あらゆる外交策が詰んでしまった場合、北朝鮮の核に首根っこをつかまれる事態はどうしても避けたいトランプ政権がどのような対応に出るのかは、誰もわからない。
極論は限定的な空爆か全面戦争かの選択肢になるが、結果的にはこの二つの選択肢に大した違いはない。

日本政府にはできれば、そこに至らないようにあらゆる事態を想定したプランを練っておいてほしいものだ。
(北朝鮮を核保有疑惑国としてうやむやに済ませられれば、上出来。)

まあ、事が至れば、北のミサイル、難民大量流入、工作員テロなど予測不可能な事態が頻発し、政府云々は関係なく自分と家族は自分で守ることになるんでしょうけど。

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