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消えた「有事のドル買い」

金融市場の動きは後付けの講釈がよくあります。歴史や過去の流れを踏まえたうえでのコメントがさも当然の如く並びます。その中で今回全く出てこない言葉が「有事のドル買い」であります。過去、国際間の危機が起きた時、買われるものはドルと円と金(ゴールド)という三点セットだったのですが、今回、アメリカから地政学的にはるかに遠い北朝鮮の問題にもかかわらず、「有事のドル買い」という言葉は何処を探しても一つも出てきません。

これは過去の流れを踏襲する人からすれば一大変化なのですがそれを取り上げる記事もありません。本来であれば金融緩和政策からいち早く脱却し、利上げもゆっくりとながら進みだし、世界の主要国の中では最も安定したパフォーマンスを誇ってきたアメリカの通貨、ドルが何故、輝きを失ったのか、ここにはAI(人工知能)では判断できないゲームチェンジがあるのかもしれません。

私がしばしば引き合いに出すドルインデックス。現在91.5ポイント程度で2015年1月初頭以来の水準となっています。以前申し上げたようにチャート的には節目を切ってきているため、当面は「ドルインデックス安」が続くとみて間違いないと思います。

それをサポートするのが昨日のカナダ中銀の利上げ決定でした。7月の会合に続き、9月の会合で2回続けて利上げをしたのはカナダの各種経済指標が良好であるからです。市場では年度内にもう一度利上げする可能性も5割程度とあるとされています。極めて強気の姿勢にあります。

また、注目されていた欧州中央銀行の政策会議。ドラギ総裁が金融緩和政策からの離脱をどう表明するのか視線が集まっておりましたが、来年以降の離脱方針を明白にするとともにどのようなプログラムでそれを進めるのか、10月以降の政策会議で決めていくとしました。

もともとユーロ高ドル安のトレンドだったところにドラギ総裁の金融緩和離脱方策の明示化でユーロはさらに買われ遂に1.20台をつけ、こちらも2014年12月以来のユーロ高となっています。

ではなぜ、ドルの魅力が失せているのでしょう。最大の理由は通貨のバランスがドル対他通貨という非常にアンバランスな構図になっている点があると思います。ドルが基軸通貨として君臨したのは概ね両大戦間に英国スターリングポンドからバトンを受けてからということになります。つまり大体100年たったということです。ドルがポンドからシフトされた理由は様々ありますが、国家規模、経済規模、影響力、統率力等が圧倒していたうえに国土が戦場にならなかったことで疲弊していなかったこともあるでしょう。

そのうえでユダヤ人が英国でなしえなかった世界をアメリカで具現化し、金融を支配するというネットワークがその勝利を引き出したわけです。

ところがドルは万全ではなく、途中何度も躓きかけましたが、多くの歴代大統領は「ドル高政策」を訴え、基軸通貨として何処でも通用する紙幣にしてしまったのです。それこそ、私が82年ごろにソ連や東欧にいた時でも高額のドル建ての入国手続き料(強制両替制度)を払い、モノは「ドルショップ」で購入させられました。その後、高インフレのブラジルに行けば自国通貨は紙切れでドルを求めて泥棒までドル以外はいらないという馬鹿げた状態にありました。イデオロギーで敵対していてもあの緑色の紙幣には世界中の人があこがれたとも言えます。

この4-5年、中国は自国通貨、元を国際化させるためにあらゆる画策を進めてきました。IMFの特別引き出し権に元を構成通貨としてさせてみたり、AIIBも元の国際化の一環だったとも言えます。これに対して中国元の国際化はない、とみる専門家が主流なのも事実です。興味深いのは本日のブルームバーグにアメリカのあるヘッジファンドが中国元安を賭けて7年間相場と戦ったものの中国元は安くなるどころか強くなってきて250億円を失い、「眠れなくなり、顧客を失い、正気も失いかけ」ついに白旗を上げたと報じています。

一方、中国人が中国政府と元を信じていないのも誰も言わない当たり前の話で仮想通貨に走ったのはご承知の通り。ところが一昨日のニュースで中国がICO(イニシャル コイン オファリング)を禁止しました。こうなると資金の逃避先は金しかなくなってきます。それもあってか、金の12月先物は本日、1350ドルを超える上昇ぶりとなっており、世界を駆け巡るマネーがどこにその落ち着きどころを求めるのか皆躍起になっていると言ってもよい状態にあります。

1ドル札には「全知全能の目」が描かれていますが、ドルを発行する連邦準備銀行を管理するFRB議長以下のプロ集団が全知全能者ではありません。地球儀ベースでのパワーバランスの中で生まれた圧倒性がドルをサポートし続けたわけです。

勿論、今回のドル安は単なる循環の一連である、と反論されればそれまでです。が、世界の環境、アメリカの環境はこれまでと大きく変わってきたのは事実です。マネーの達人たちがその長期的ビジョンについてさまよい始めたとすれば別次元の金融の不安定時代があってもおかしくないのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。

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