記事

企業が若者を使いこなせないから、「人手不足」になる

■人手不足の正体

企業の人手不足が話題になっている(中小企業の「人手不足倒産」が広がりつつある)。それは特に中小企業に深刻なのだそうだ。

こうしたニュースも頭に入れながら、僕は気づいたことがあった。それは昨日(9/9)、鳥取県倉吉市において、鳥取の「若者サポートステーション」主催の講演会で僕がしゃっべていたときのことだった。

講演のテーマはひきこもりやニートといった若者の就労問題だった。高齢ひきこもりや発達障害の問題なども頭に入れながら、若者にとっての「仕事」を久しぶりに真面目に考えた(前回の当欄児童虐待とカントにもあるように、この頃の僕は児童虐待の本質とか高校中退予防のための仕組みづくりのほうに頭をつかっている)。

あらためて考えると、団塊ジュニア40才前後を中心に元ひきこもり潜在的労働者層(発達凸凹含)は数十万人はいるはずだ(この層を現在のサポートステーションでは扱えないという大問題があるがそれは別稿で)。

この層は仕事は遅く強迫的で対人不安なのであるが、見方を変えると、仕事は丁寧で人の嫌がる(細かかったり多かったり時間的に不規則だったり)こともでき、時間をかければ着実に育つと僕は実感している。

当然その人がもつ個性(ルサンチマンだったり悲観主義だったり)は変わることはないものの、40才も越えると、そこにユーモアも含まれ余裕が出てくる。文句言いつつ、失敗しつつ、遅かったりしつつ、結構みんな働ける。

■現在の若者たちを使いこなせていない

この元ひきこもり労働者層(高度成長期の激烈サラリーマンでもなくバブル期の猛烈+抜かりのないサラリーマンでもない、遅くて傷つきやすくて失敗も多いが人の嫌がることをやり着実に事を進めつつも会社にはそれほど愛着はない新しい労働者層)を活かせないのは、実は企業側にスキルがないからだ。

特にトップと中間管理職の力量のなさ(あるいはブラックさ)が原因だと思う。それらは、70~90年代中頃にかけてカイシャ文化をのし上がってきたせいか、自分が巻き込まれていたカイシャ文化を新人や若者層に押し付ける。

そこには、ガンバリや忠誠心が底にある。その価値観と、元ひきこもり労働者層とは、まったく相容れない。元ひきこもり労働者層どころか、ずっと非正規雇用で自分の「幸福」もそれなりに愛する古市憲寿氏言うところの「絶望社会の幸福若者」たちも(絶望の国の若者は、幸福なのか「イージー」なのか 〈書評〉)、トップや中間管理層にはついていけないだろう。

絶望幸福若者は、元ひきこもり若者よりは仕事現場でうまく立ち回るだろうが、モウレツ管理職と高度成長ノリのカイシャにはとてもついていけない。そして、そういう要素を持つカイシャは、中小企業ほど多いように僕には思える。

つまり、人手不足というよりは、中小企業側が、現在の若者たちを使いこなせていないということだ。

■「オイル人材」が減ってしまった

人手不足とは、日本のマネジメント力不足(あるいは労働者層の変化に追いついていない)が露呈していることの言い換えだと僕は思う。

それは企業の自業自得であり、昭和的高度成長的「会社に尽くす」人材は日本から消滅寸前、またバブル的抜かりなくしたたかに生き抜く人材も激減しており、代わりに、育成に時間はかかるが真面目に組織を下支えもしてくれる層がじんわり広がっているように思える。

僕は自分の小さな法人で元ひきこもり若者現在42才を一人雇用しているが、彼も非常に不器用であり、何をするにも慎重になる。けれども雇用して3年もたってくると仕事の中身を把握し、実に堅実にさまざまなことをやってくれるので非常に助かっている。

それは、誰よりも早く来て鍵を開けることだったり、重い荷物を持つことだったり、100円単位の細々した領収書を入力することだったりする。これらを、文句言いながらも堅実にこなしてくれると、他のスタッフが非常に助かる。

こうした人物が一人でもいることで、組織は円滑にまわる。

まるでその人は車のオイルのようだ。ブラックがまかり通り高度成長やバブルノリを求める管理職がうじゃうじゃいる現在のカイシャ文化には、いつのまにかこうした「オイル人材」が減ってしまった。そのオイルに、現在なかなか働くことができなかったり転職を繰り返す層がなれる可能性をもっている。

そのためには、まずは会社側、特にトップと中間管理職が変わる必要がある。★

※Yahoo!ニュースからの転載

あわせて読みたい

「雇用・労働」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    定年後は蕎麦打ち職人になるな

    内藤忍

  2. 2

    今度こそ北朝鮮の崩壊は秒読みか

    自由人

  3. 3

    海老蔵と麻耶 歌舞伎界の非常識

    NEWSポストセブン

  4. 4

    豊田議員あと一歩で逃げ切り逃す

    文化通信特報版

  5. 5

    真逆に報じられた仏大統領発言

    西村博之/ひろゆき

  6. 6

    金正恩氏が米国への本音を吐露か

    高英起

  7. 7

    ミヤネ屋インチキ医療特集に称賛

    中村ゆきつぐ

  8. 8

    石破氏「解散の意義わからない」

    石破茂

  9. 9

    老後の同窓会は成功者しか来ない

    NEWSポストセブン

  10. 10

    北外相 太平洋での水爆実験示唆

    ロイター

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。