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なぜ経営者は「竜馬がゆく」が好きなのか

今年はなぜか重厚長大ドラマが流行っている。「官僚達の夏」「不毛地帯」がそうだが、やはりトリは今月末からNHKで始まる「坂の上の雲」だろう。
そういえば来年の大河は「龍馬伝」だし、プチ司馬ブームが再来するかもしれない。

と思っていたら、今週号の週刊SPA!で、文芸評論家の福田和也と坪内祐三が司馬作品について面白いことを語っている。詳細は書かないけど、要するに、「あれは大衆文学なんだから、政治家や企業トップが愛読書にあげるな」という話だ。

実際、知人の60代曰く、(学生時代に)「坂の上の雲」の新刊が発売されるのが待ち遠しくて仕方なかったのだそうだ。DVDやゲーム、ネットなんて無いわけだから、新刊のインパクトが今とは全然違うわけだ。

ところで、当時は学生運動の真っ盛り。左翼じゃないとバカ扱いされた時代だ。
左翼的にはああいうのはどうなんですかね?と聞いたところ、「いや、そういう本じゃないから皆楽しんでたよ」とのこと。
なるほど、確かに大衆文学である。
今で言うと、「派遣の品格」見て雇用問題を語るやつがいないのと同じだ。
逆にいえば、当時のエンタメとして受容した世代が経営者層になってるわけだから「トップがすすめる司馬作品」なんて特集がプレジデントあたりで成立してしまうわけだ。

ただ、それより下の世代による司馬作品の捉えかたは、団塊以上とはかなり異なっているはず。悪いけど今の時代、少なくとも2、30代にとっては、歴史小説なんて大衆文学にすらなりえないわけで、各自が各自のエンタメをこなしつつ、+αでそういったものも消化していると思われる。
その+αが何かというのは人によるけど、僕の場合は『生き方』だと考えている。

僕自身、何かの雑誌の特集で「好きな司馬作品は」と聞かれて答えたことがあるけど「時代の転換期において、生き方として知っておくべき」という観点から回答しておいた。
一世紀前の日本には、枠組みを壊すことで斜陽国から新興国へ脱皮した時代があったという事実は知っておくべきだし、その空気を嗅ぐには、小説というツールは実に具合がいい。

そう考えれば、「エピソードなり生き方なりに、それぞれの価値を見出す+α世代」は割と健全な一方、若い頃に読んだエンタメ小説を嬉々として語るノスタルジー世代というのは、実はむちゃくちゃ視野が狭い生き方をしてきたのではなかろうか。
定年退職後にボケたりアル中になったりする人の話は実際に聞くことがあるが、引き出しの少ない人生の裏返しなのかもしれない。

ついでに言うと、“大衆文学”という死語で区切っちゃってる福田、坪内の両氏も「竜馬がゆく」をあげて悦に入る(宮仕え一筋ウン十年の)サラリーマン社長とどっこいどっこいである。

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