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VALU問題に思う“Twitterフォロワー数が多い人だけが勝つ世の中”でいいのだろうか - 佐々木 俊尚

 評価経済って、有名人がフォロワー数を誇り、金に変えるシステムなんだろうか? もしそんな即物的なものでしかないとしたら、評価経済なんかに未来はない。

 そういうことを考えるきっかけになったのは、VALUの騒動だ。

 VALUとは何か、ということについてはフジテレビのホウドウキョクでくわしく解説した。『人気ユーチューバーのインサイダー騒動も…VALUはどうなるのか?』という記事にまとめてあるので、興味ある人は読んでみてほしい。


色々な意味で話題の「VALU」(公式サイトより)

 VALUの公式サイトには、こう書かれている。「毎日、みんなが価値をやりとりしています。これからブレイクしそうな人、ステキな優待がある人……。気になる人、応援したい人を見つけてください」

 この「これからブレイクしそうな人を応援したい」という言葉。これが未来の評価経済には大事な要素なんじゃないかと思う。資本市場だって、ヘッジファンドのような悪辣な人たちもいるが、その一方で何の力もないけど可能性だけを持っている若者に資金を調達してあげるエンジェル投資家のような人たちがいる。そういう夢や地道な実体の経済にちゃんとつながっている部分もあるから、資本市場は私たちに必要なものとして存在している。

 じゃあVALUはどうか。

 私は面白そうな新しいウェブのサービスが出てくると、とりあえずすぐにアカウントを取得することを習慣にしているので、VALUが話題になりはじめた時も、もちろんサイトを見に行った。Twitterのフォロワーなどに基づいたVALUの評価点数を計算してもらうところまで行って、さらに他のVALUアカウントの一覧を見に行った。でもそこにはスターたちの荒ぶる弱肉強食の世界が広がっていて、「これは違う」と思ってそっとブラウザの画面を閉じたのだった。

「評価経済」に期待したいこと

 これももちろん評価経済のひとつだろう。でも、私が期待している未来の評価経済は、Twitterのフォロワー数をカネに替えること「だけ」ではない。社会包摂のツールとしての期待を私は持っている。

 人々が善き人であることを少しずつ努力し、その努力がまわりの人々やさらには遠くにいる知らない人たちの間にも評価されて、困った時に友人や、さらにはどこかの誰かにも小さな援助をもらえるかもしれない。そういう輪が広がっていくといいと思っている。

 だから評価経済の未来は、コミュニティの未来にもつながっている。私たちは個人ひとりでは社会に立ち向かえない。だからコミュニティに属することでみんなで何とかしようとする社会的動物だ。でも21世紀に入るころから日本では共同体が希薄になり、生きづらくなっている。そこで評価経済という話がやってきて、「コミュ力を高め、セルフパワーでこの競争社会を生き残るのだ!」みたいな自己啓発的スローガンが叫ばれるようになった。

 でもそんなセルフパワーを持てるのはごく一部の強い人だけだ。そういう人だけが生き残る世界は、荒ぶる弱肉強食の魔界である。そこには社会的な包摂が欠如している。

「金のないキモいおっさん」も支えられてほしい

 そうじゃなく、地道で目立たない人でもコミュニティで支える。わかりやすいマイノリティだけじゃなく、普通の人や普通から落ちこぼれている人も、包摂される。「金のないキモいおっさん」もちゃんと支えられていく。そういう柔らかいコミュニティ意識が今の日本には必要だし、評価経済はそういう「支え」につながっていくものでもあってほしいと思うのだ。

 私はその意味で、社会貢献系のクラウドファンディングのReadyfor(レディフォー)を個人的にとても高く評価している。Readyforはこう掲げている。「夢ややりたいこと、そのアイディア、実行能力があっても実現するための資金がない人が、利用することで、資金を集めるられるのが第一のメリットです」

 ただ現状のクラウドファンディングには問題点があって、それはプロジェクト単位での投資でしかないこと。つまり単発の支援はできるけれども、継続的な支援は難しい。また対象がプロジェクトで個人ではないので、個人を支えるものにはならない。


©iStock.com

 実はVALUは、この問題点を乗り越えていける可能性を秘めている。個人を証券化することで、ひとりの個人を継続的に支援するしくみになる可能性を秘めているからだ。

VALU小川代表への質問

 VALUのYouTuber騒動が起きる直前、私はVALUの小川晃平代表を取材している。私が主宰しているLIFE MAKERSのインタビュー企画だった。

 この時に私は小川さんにこの点を質問している。

「今のVALUの動きを見ていると、結局は有名人が、自分が有名人であることを現金化してしまっているような印象がある。これに限らず最近よく言っているのは、弱肉強食の社会になって、口先三寸なやつだけが勝っちゃうのはよくないよねっていう。たとえばそうじゃなくて、コミュ力は低いんだけど黙々と仕事をしていて、周りの人間が『あいつはやっぱり凄いよね』と言うような人に、どうやってうまくお金を還流するか、っていうのが重要じゃないかと。その議論でいくとVALUはどうなんですか?」

 この質問に対して、小川さんはその問題を認識していることを率直に認めた上で、有名人がまだ名の売れてない人を支援するというのもあるんじゃないでしょうか、と付け加えた。

 「たとえば佐々木さんが僕のVAを買ってくれて、『僕は小川を応援してます』と言ったら、それって今のスタートアップと同じような関係性になるので、別に悪いことではないと個人的には思っています」

 こういう方向も見据えてVALUが進化していくのなら、私はとても期待したいと思う。加えて、もう少し落ち着いたら私個人が自分のVALUを公開するのではなく、どこかで出会った若者のVALUに投資してみたいなと思う。

(佐々木 俊尚)

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