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何清漣の中国経済分析概要 - 澁谷 司

国際通貨基金(IMF)は、中国政府の公表する数字に対し寛容である。例えば、北京の発表するGDPに関して、殆ど何の疑いも抱かずに、その数字を使用している。

 そのIMFが、今年(2017年)、中国的家庭・企業・政府の債務のGDPに占める割合が、去年(2016年)の242%から、2022年には300%に近づくとの予測を発表した。異例である。

 さて、現在、米国で活躍している何清漣の最新中国経済分析(コラム)をまとめて紹介したい。

 第1に、2008年の「リーマン・ショック」で、当時、胡錦濤政権は、少なくとも4兆元(約60兆円)の財政出動をした。そして、国内で主に建設業(特にマンション)へ投資し、30年分の住宅を供給した。その結果、巨大なバブルを産み出している。

 目下のところ、中国地方政府の財政は、過度に不動産に依拠している。これでは、当然、不動産バブルを助長するだけだろう。

 第2に、一部の国有企業は「ゾンビ企業」となっても、銀行からの“輸血”を受けている。そのため、銀行の不良債権が増大している。

 2013年5月、中信里昂證券有限公司(CITIC CLSA)が公表したレポートでは、中国の債務規模は107兆元(約1605兆円)で、その半分以上は、2009年以降に生じたという。その規模は、当時の中国GDPの110%に相当する。特に、シャドーバンキング(ノンバンク)の債務が増えている。

 第3に、2009年来、中国人民銀行(中央銀行)は、日本・米国・EUより多くの紙幣を印刷している。

 2012年、全世界で26兆人民元(約390兆円)が新貨幣として印刷されたが、その半分近くは中国で印刷・発行されている。

 今年6月、石小敏(中国経済体制改革研究会元副会長)は、インタビューの中で、2009年来、中国は人民元を増やす事で成長を遂げてきた。だが、米ドル換算では、ここ2年(2015年・2016年)の中国のGDPはゼロ成長に近いと証言している。

 第4に、米トランプ大統領は、(海外へ出て行った)「製造業を国内へ戻す」との選挙公約を実行に移している。

 他方、周知のように、中国では、かつての安価な土地・労働力、優遇税制等の優位が失われ、外資が中国へ投資するメリットが少なくなった。

 第5に、2001年、中国がWTOに加盟して以来、投資(2001年から2010年の10年間は外資が主力)、輸出、内需の3本柱が中国経済を牽引してきた。とりわけ、輸出の伸張が著しかった。ところが、近年、陰りが生じている。

 輸出に関して、現在、中国は、東南アジアや南アジア(ベトナム・バングラデシュ・スリランカ等)の国々に追い上げられている。

 第6に、習近平政権は、外需獲得のため「一帯一路」構想を打ち出した。そして、中国4大国有銀行は、最低でも100億米ドル(約1兆1000億円)以上の融資を開始しようとしている。

 中国だけの出資ならともかく、「一帯一路」に沿う国々も出資する必要が出てくる。果たして、途上国の場合、本当に出資できるのかどうか。これらが、プロジェクトのリスク要因となるだろう。中国国有銀行の不良債権増大が懸念される。

 第7に、中国はなるべく人民元で出資しようとする。だが、多くの国々は、近頃、元安傾向にあるので、人民元での投資を歓迎していない。従って、人民元のグローバル化には限界があるだろう。

 実際、2016年、主要国際金融センターにおける人民元使用量は前年比10.5%減少した。

 第8に、中国商務部(商務省)が公にした数字では、2017年1~6月、中国企業は「一帯一路」沿線47ヵ国に66.1億米ドル(約7271億円)、非金融類の直接投資を行った。だが、前年同期比で3.6%減っている。

 最後に、中国の当面の3大リスクとは、(1)バブル崩壊の危機、(2)人民元安で資本の海外流出の危機、(3)銀行の不良債権増加の危機――である。

 2016年2月、ヘイマン・キャピタル・マネッジメント(Hayman Capital Management)の創業者カイリー・バス(Kyle Bass)は、中国銀行業の損失は、3.5兆米ドル(約385兆円)に達すると指摘した。

 他方、今年8月、金融の分析に定評のある朱夏蓮(Charlene Chu)は、最新の報告書で、今年末には、中国の不良債権は、51兆人民元(約765兆円)にのぼると予測している。この数字は、貸付額全体の34%にも匹敵する。中国政府の公表している5.3%とは、6倍以上の開きがある。

 目下、習近平主席は、来月10月18日開催の中国共産党第19回全国代表大会(19大)開催に向けて、着々と準備を進めている。

 しかし、李克強首相が続けて首相を務めるにしても、他の政治局常務委員が李首相に代わって新首相に就任しようとも、中国経済の運営は困難と言わざるを得ない。

澁谷 司(しぶや つかさ)
1953年、東京生れ。東京外国語大学中国語学科卒。同大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学等で非常勤講師を歴任。2004~05年、台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011~2014年、拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、同大学海外事情研究所教授。
専門は、現代中国政治、中台関係論、東アジア国際関係論。主な著書に『戦略を持たない日本』『中国高官が祖国を捨てる日』『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)等多数。

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