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「前原新代表」誕生でさらに翳りゆく民進党の「明日」

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 民進党は9月1日の臨時党大会で、新しい党代表に前原誠司元外相を選出した。だが、前原氏はその3日後、早くも新しい党執行部の人事でつまずいた。予定していた山尾志桜里元政調会長の幹事長への起用をあきらめざるを得なくなったのだ。

失敗の原因がどこにあるのかと言えば、山尾氏が起こした問題以上に前原氏本人の軽さと脇の甘さにある。そして多くの人が、かつての「永田メール事件」での前原・旧民主党執行部の失態を思い出したことだろう。

「山尾スキャンダル」で

 今回の人事をめぐる混乱を振り返ってみよう。まず、山尾氏については、昨年、政党支部の収支報告書で不明朗なガソリン代支出が発覚するなど政治資金に関する複数の問題が指摘されており、メディアから追及を受けていた。幹事長に就任しても、その問題が尾を引き、与党やメディアから問題を蒸し返されるおそれがあった。

 前原氏もそのことを考慮しなかったわけがない。それでも「女性」「若さ」「歯切れの良さ」などで好感度が高い山尾氏のプラスのポイントがあり、過去のトラブルのマイナス分を補って余りあると判断していたのだろう。

 だが、山尾氏を幹事長に起用する方針が表面化すると、党内からは山尾氏の政治家としての経験不足を危ぶむ声が上がった。さらに、山尾氏の別のスキャンダルを週刊誌が報じるとの情報が流れ、質問された前原氏は「読んでいないので分からないが、(山尾氏が)そういうことをする方とは思えない」とかわしたものの、結局、前原氏もついに起用を断念した。山尾氏は9月7日に離党届を提出したが、党内ではそれだけでなく議員辞職を求める声もあがっている。

「永田メール問題」と通底

 問題は、スキャンダルや党内の反発よりも、前原氏の軽さと情報管理にある。

 まず、党内の反発に関して振り返れば、党内が反発した程度で撤回するような人事は初めからやってはいけないし、逆に、やると決めたのならば、党内の反発程度で撤回してはならない。これが前原氏のいかにも軽いところである。

 一方、スキャンダルを恐れて人事を撤回したのだとしたら、致命的だったのは、「山尾幹事長」情報がマスコミに流れてしまったことだ。

 そもそも、山尾氏の新たなスキャンダルが事実なのかどうか。これは当然、山尾氏本人には分かっていたはずだ。さらに、スキャンダルが事実だったとしても、それが幹事長としての職務に重大な支障をきたすものなのかどうか、これは前原氏が判断すべきことだ。そして、両氏の話し合いの中で、前原氏が、山尾氏は幹事長として不適格だと結論付けたならば、別の人物、たとえば今回幹事長に就任した大島敦元総務副大臣にこっそり差し替えればよかっただけだ。

 この時点で山尾氏を幹事長に起用しようという計画は当事者しか知らないわけだから、何の問題もなかった。誰も山尾氏が第1候補だったとも知らないし、大島氏が2番手だったことも分からない。当然、前原執行部の人事が混乱しているという印象をもたれずに済んだはずだ。

 事前に「山尾幹事長」という方針が漏れたために、前原氏の判断ミスが万人に明らかになってしまった。前原執行部の船出、いや船出よりも前の段階での前原氏の失態は、すでにして新執行部の求心力低下を招き、前原氏に対する党内の信頼感を弱めたに違いない。この先が思いやられると多くの民進党議員が感じただろう。

 この失敗は、2006年の「永田メール問題」の旧民主党の失敗に通底する。これは、ライブドアの元社長である堀江貴文氏が2005年8月の衆院選出馬にあたって、当時の武部勤・自民党幹事長の次男に選挙コンサルタント費用として3000万円を振り込むようライブドア社内に指示したとされた疑惑である。ところが、社内指示の証拠であるとされた電子メールがまったくの捏造であることが発覚。

国会でこの問題を質問して追及した永田寿康・民主党衆院議員は議員辞職に追い込まれ、民主党執行部も総退陣した。この時の民主党代表が前原氏である。この問題は前原氏だけの責任だとは言えないが、捏造と判明する直前まで「証拠があるので期待してほしい」と大見えを切っていた前原氏の、都合の良いものに安易に飛びつく甘さは感じられる。

珍しい勝利

 ところで、今回の代表選については、テレビや新聞は、「盛り上がりに欠けている」と報じ続けていた。たしかにそういう面はある。ただ、そうした中でも、民進党の今後を占う上で重大な論争が、前原氏と対立候補の枝野幸男氏の間であった。

 この論争の中で民進党の進む方向に大きな影響を与えそうなのが、路線問題としては共産党との共闘の是非、民進党離党者との連携の可否、そして政策的には憲法改正と消費税増税への対応だろう。

 まず政策的に考えてみると、今回の代表選は、消費税増税派が反対派に勝利した稀有な例だ。

「消費税率を2段階で上げ、教育や子育て、医療や年金などの恒久財源を担保していく。これについては私自身、責任を持ちたい。消費税を上げるべきだ」

 前原氏はこう明言して代表選に臨んだ。これに対して、枝野氏は「『べき論』からすれば、『上げるべき』というのは私も同感だ。(中略)だが、現状は、消費増税をお願いできる、そういう状況ではないと思っている」と増税反対論を展開した。

 振り返ってみれば、ここ10年ほどの国政選挙あるいは主な政党内選挙では、消費税増税の賛否で候補者の意見が分かれた場合、反対派あるいは増税について口を閉ざした者がほとんど勝利を収めてきた。

 2006年の自民党総裁選では、他に先駆けて消費税率10%への引き上げを提唱した谷垣禎一氏が消費税問題に沈黙した安倍晋三首相に惨敗した。その3年後の衆院選では、麻生太郎首相(自民党総裁)が「3年後に消費税増税をお願いしたい」と発言。これに対して、民主党の鳩山由紀夫代表は「4年間は消費税を引き上げない」と明言して勝利。民主党が政権を奪取した。

 ところがその1年後の参院選では、菅直人首相(民主党代表)がこれまでの民主党の方針を転換して、自民党が掲げていた消費税率10%方針に追随した。この結果、民主党は大敗した。

 2014年12月の衆院選では、選挙直前に安倍晋三首相が2015年10月に予定されていた10%への引き上げを1年半先送りして2017年4月まで延期すると決断した。この際、安倍首相は国民に再延期はしないことを約束し、2017年4月に「確実に上げる」と公約した。ところが、2016年7月の参院選が近づくと、安倍首相はさらに増税時期を2019年10月まで2年半先送りすると表明。

この結果、2014年の衆院選も2016年の参院選も、自民党は一定の勝利をおさめたのである。もちろん、それぞれの選挙は、消費税増税問題だけに左右されたわけではない。ただ、過去の例からみて、消費税増税派は反増税派に敗北し続けてきた。前原氏の勝利はそういう意味で、かなり珍しい出来事である。

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