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北朝鮮ミサイル問題、今後起こりうる3つの可能性とは?<アメリカ帝国衰亡論> - 中西 輝政

8月29日に日本上空を通過した弾道ミサイル発射実験、そして9月3日に行われた6度目の核実験を受け、北朝鮮をめぐる世界の状勢はかなりきな臭いものになってきています。

今年4月にも米朝開戦の噂がまことしやかに流れましたが、北朝鮮と日本、同盟国アメリカほか、世界は今後どうなっていくのでしょうか。

覇権国アメリカの変容から世界の行方を分析した『アメリカ帝国衰亡論・序説』(中西輝政・著)の中から、未来を冷静に読み解く鍵をお届けします。

*  *  *

北朝鮮問題・3つの可能性

 アメリカによる北朝鮮への先制攻撃が、まことしやかに噂されるようになった2017年3月下旬、私は東京で開かれた保守派の先生方の会合にゲストとして招かれました。そのとき、ある出席者から、「中西先生は、アメリカの対北攻撃はいつ始まるとお考えですか?」とたずねられました。

 それは、「Whether(攻撃があるかどうか)」ではなく、端的に「When(いつ攻撃があるのか)」といわば既定の話のような質問でした。

 そこで私は答えました。

「アメリカによる北朝鮮への先制攻撃は、あり得ない話ですよ。アメリカは、これまで核を持っている国に対して攻撃をしたことはありませんから」

 そう申し上げると、居並ぶ保守派の先生方は、一瞬にして白けてしまいました。中には、私が京都へ帰る新幹線の時間が気になって真面目に答えていない、と思われた方もいたかもしれません。

 北朝鮮にまつわる「4月危機」を見ていて、日本では左も右も、その政治的立場を問わず、ある種のセンセーショナリズムに振り回されました。国際関係の基本構造をしっかり踏まえた議論が大きな声にならず、広まりもしませんでした。

 私は、「4月危機」に限らず、そもそも北朝鮮問題の大局的な方向として、理論的には次の3つの可能性しかないだろうと考えてきました。

【可能性1】核戦争も含めた武力衝突

 核戦争に発展しかねない、あるいは、核戦争一歩手前の大規模な戦争になる可能性も含めてのあり得るシナリオです。

 これについては、今回日本では、あたかも「これしかない」かのように、盛んに論じられました。また、それよりも規模は小さくなりますが、「ピンポイント攻撃」や「斬首作戦」といわれる金正恩暗殺計画、38度線を挟んでの交戦なども、北の核問題シナリオの「仮想ではない現実」の可能性として盛んに語られました。

【可能性2】アメリカと北朝鮮の正式な直接交渉

 一応、米朝直接交渉の前には、北朝鮮の核放棄が「前提」にならなければなりませんが、じつはトランプ・金正恩首脳会談の実現につながる、正式な米朝直接交渉へ向けた水面下の動きが昨年末からずっとありました。

 さらに言えば、北朝鮮が核兵器を持ったままでの、米朝首脳会談が行われる可能性も、以前からアメリカの政府系識者の中には言及する人がいました。

 現に、北朝鮮を「核保有国」と認めたうえで、米朝の直接交渉を有力な選択肢の1つと考えるアメリカの元国防長官や元国務次官補が何人もいます。

 この2つのいずれかが北の核問題解決の理論的なシナリオなのですが、あえてもう1つ付け加えると、次の可能性もあるでしょう。

【可能性3】北朝鮮国内でクーデターが起き、金正恩政権が倒れる

 しかしこの場合、金政権が倒れたあとの体制がうまくできるか、核兵器をどうするかなどの問題があります。クーデターのシナリオは、現状ではかなり見通しが厳しいとされます。

 実際、【可能性1】のピンポイント攻撃や斬首作戦を実行しようとしても、攻撃対象の施設や金正恩がどこにいるのかを、予め正確に特定するのは極めて難しいでしょう。

 2011年、アメリカの海軍特殊部隊がウサマ・ビン・ラディンを仕留めることができたのは、潜伏していたパキスタンが、表面上はアメリカの友好国であり、アメリカのスパイが多数潜入している特殊部隊が町々に配置され、アメリカが実質的な制空権を握っていたからです。

 それを北朝鮮でやって、万一失敗すれば、北朝鮮はすぐさま反撃に出るでしょう。よく言われるように、北朝鮮は、休戦ライン(38度線)に沿って並べている何百門という長距離砲やロケット砲を、一斉にソウルに向けて撃ち込んでくるはずです。

 休戦ラインからソウルまでは最短距離で約四十数キロ。長距離砲の射程は30〜40キロメートル以上あると言われています。ソウルから仁川にかけては、韓国の人口5100万人のうち、約半数が住んでいます。

 そのエリアは北朝鮮の射程に入っているので、北朝鮮の反撃で韓国の数百万人の命が危険にさらされる恐れがあります。北朝鮮は「ソウルを火の海にする」としきりに威嚇しているので、少なく見ても何百万人もの死者が出るとされています。

 韓国が、そんな戦争のGOサインを出すわけがありません。おまけにこの地域には、在韓アメリカ軍やその家族もいるので、アメリカ人にも多数の犠牲が出る可能性があります。つねに「弾劾の危機」にさらされているトランプ政権が、そんな犠牲に耐えられるわけがありません。

 イラクでサダム・フセインを探し出せたのは、すでにアメリカがイラク全土を占領していたからですし、リビアの最高指導者カダフィが殺害されたのは、NATOの空爆によって国が完全に破壊されていたからです。

 アメリカ軍が、同じような作戦を北朝鮮で実行しようとしても、あいまいな情報しかないなか、中東のように容易に特殊部隊が潜入できる状況とは思えません。

中西輝政『アメリカ帝国衰亡論・序説』

移民排斥、孤立主義、日本企業批判、新たなる戦争……
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